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ピンチ!?

「どうしても教えないとダメですか?」


「はい! 教えて貰えるなら教えて欲しいです。

 私その人を超えて小野寺さんの恋人になるんです!」


 あ、これはもう自分の世界に入り込んでしまってる感じが……。

 やっぱり紅羽先輩の再襲だ。


「ちょっと1回落ち着こう? ね?」


「はい。落ち着きます」


「この学校に男子は沢山います。なんで僕を選んだんですか?」


「んー、直感ですね!」


 最近、直感という言葉が流行っているのだろうか?

 入学した頃にも紅羽先輩から直感や運命と聞いて……もしかしてこの人たち双子じゃないよね? 以心伝心とかしてないよね?


「直感で相手を選んじゃダメですよ。本当に好きでどうしようもなくて、この人ずっと一緒にいたいと思う人を好きにならないと」


「小野寺さんはいるんですか?」


「もちろんいます!! ……あ」


「へぇ、そんなに好きな人がいるんですか。やっぱり気になります! 誰か教えてください!」


「いや、教えることは出来ません! 今後のためにも」


「いいじゃないですか〜。減るものじゃないんですし」


「減る減らないの問題じゃないんです! 僕の安定した部活動や学園生活を壊さないでください!」


 竹下さんはどうしても僕の意中の人を知りたいのだろう?

 そんなに僕に対して気があるのだろうか?

 だとすると、しっかりと意中の人がいることを言って諦めさせたほうがいいだろう。


「優人君〜」


「あれ、紅羽先輩?」


「え!?」


 声がする方を向いてみると紅羽先輩が手を振りながら走ってきていた。

 なんでここに紅羽先輩が? さっきほかの先輩と一緒に帰ってたはずなのに……。

 というか、竹下さんと話している姿見られてるのはまずい気が。

 後で絶対尋問というか電話で質問攻めにあうことは確定だろう。


「あら竹下さんじゃない、優人君と一緒に帰ってるの?」


「はいそうなんです! 紅羽先輩も一緒に帰りますか?」


「二人の邪魔しちゃってない? 私も一緒に帰っていいの?」


「はい、大歓迎です! 弓道のこととかいろいろ教えてもらいたいですし。小野寺さん、紅羽先輩も一緒に帰って大丈夫ですよね?」


「は、はい! 大丈夫です」


 意気投合というか、無理やり合わせた感じで一緒に帰ることになった。

 両手に美女……まさに両手に花だろう。

 気のせいだとは思うけど、お互いにお互いを意識しあってる感じがして……胃に穴が開きそうだ。

 数分無言で歩いてこのまま分かれ道まで無言なのかな? と思ったら竹下さんが質問をした。


「紅羽先輩は高校入学した年に弓道部に入ったんですか?」


「そうだよ〜。ずっと弓道やりたいって思ってたから」


竹下さんは弓道の分からないことや知りたいことを事細かに紅羽先輩に質問していた。

もしかして、竹下さんのこと誤解してたのかな?

などと甘い考えを巡らせていると


「紅羽先輩は好きな人いるんですか?」


高校生なら普通かもしれない質問だ、だが僕にとっては絶体絶命的質問だ。

なんでよりによってそんな質問をしたのだろうか。

もしかして、紅羽先輩と僕の関係に気づいている……わけないよね?

紅羽先輩との関係は竹下さんに話してないし。


「好きな人いるよ〜」


「一体誰なんですか? 先輩の好きな人、気になります!!」


「え〜どうしても知りたいの?」


「どうしても知りたいんです!」


「じゃあ、竹下さんの好きな人先に教えてよ〜」


「好きな人というか一目惚れした人ならいます!」


「誰なの?」


紅羽先輩が問い詰めるように質問んすると、竹下さんは僕の肩を、ポン、と叩き


「私、小野寺さんに一目惚れしてしまったみたいなんです」


竹下さんに悪気はないのだろう。

だが、紅羽先輩にとって宣戦布告とも取れるだろう。

純粋な好意で悪意がないのが少しばかり面倒だ。


「へ、へぇ。そそ、そうなんだ」


紅羽先輩は明らかに動揺しちゃってるし。

色々とやばいかもしれない。


「やっぱり紅羽先輩……小野寺さんのこと好きなんですね」


「「え!!??」」


紅羽先輩と同じタイミングで驚いてしまったが……なんで? なんで、紅羽先輩の好きな人がわかった?

少なくとも紅羽先輩は僕のことを好きとは言ってないはず。


「なんで私が小野寺君を好きだと思ったの?」


「だってさっき小野寺さんのことを『優人君』って呼んでましたよね?」


「あ……」


「苗字ではなく名前で呼ぶ仲と考えると関係はかなり良好。

仮にいきなり名前を呼ばれたとしたら小野寺さんは動揺するでしょうし、動揺しなかったことを考えるとそうなのかなと。

それに、私が小野寺さんに一目惚れしたと言ったら紅羽先輩が動揺してましたから」


「んんっ! そうよ、うちは優人君のことが好きなの! あわよくば結婚したいの!」


紅羽先輩は完全に吹っ切れたのか暴走モードに突入し、僕とどうなりたいかを竹下さんに話している。

改めて聞いたけど……なんか、恥ずかしいな。

でも、紅羽先輩は僕のことをそんなに好きに思ってくれているということがわかって嬉しい。


「紅羽先輩。結婚って……私たちまだ未成年なんですよ? 分かります?」


「それくらい知ってる、それでもうちは優人君と結婚したいの!」


「へぇ……。そうですか。でも、お二人はまだ付き合っていませんよね?」


「優人君は今は弓道に専念するの! 恋愛はその次!」


「恋愛は二の次ですか。なら……私にもチャンスありますね」


「え……ちょっと、待って」


「小野寺さん! 私と」


「優人君! うちと」


「「どっちを選ぶの?」」


 全く同じタイミングで聞いてきた。

 どっちを選ぶって……えぇ。

 なんで人を選ぶ側に立っちゃってるの?

 片方を選択したらもう片方が悲しむ。

 かといって一夫多妻制が認められるわけじゃないし、二人も同時に愛することなんて不可能だ。

 今、この瞬間、絶対に選択しないといけないなら僕は紅羽先輩を選ぶ。

 けど、今後……いや次の次にある大会で紅羽先輩は卒業して部活を、学校を去ってしまう。

 竹下さんとは最長で2年間以上部活動をともにやっていかないといけない。


「あの……」


「「どっちにするの?」」


「二人とも、落ち着いてください! 僕は選ぶことなんてできません!」


「うちも竹下さんも好きっていうこと?」


 紅羽先輩が声色を変え怒りを含みながら話す。

 完全に怒らせてしまっているのは事実だ。

 すぐに決断することが出来ないのが僕の悪い癖なのに。


「僕が一人を選んだらもう一人が悲しむじゃないですか! それに僕の中では決めている人がいるんです。でも今は恋愛より弓道をしっかりやりたいんです! だから両方とも断らせてください。本当にごめんなさい!」


 二人に向けて90度上体を倒して謝罪をした。

 怒られるのは覚悟している。

 僕の不甲斐なさが招いた結果だ。

 頬を引っ叩かれたりするのも覚悟の上だ。


「ふーん、うちは振られたってことだ」


「そっかー。私も振られちゃったってことだね」


 あれ、怒られ……ない!?

 それに振ったって扱いになっちゃうの?

 何か……とても申し訳ないことをしてしまったような感じが。


「あの……」


「「何!?」」


「息ぴったりじゃないですか」


 僕が言うと二人はお互いに向かい合って笑った。


「ごめんね竹下さん。改めて自己紹介させてもらうね。

 うち……私は紅羽瑞希、弓道部部長をやってます」


「あ、私は竹下愛です。いきなり紅羽先輩に喧嘩を売るような行為をしてしまって申し訳ないです。

 気軽に愛と呼び捨てしてもらって大丈夫なので、これからも色々と弓道のことを教えてください」


「じゃあ、愛ちゃんって呼ぶようにするね! うち……ああ、もう! めんどくさい! 愛ちゃんと優人君の前はうちって言う! 

 うちのことも瑞希って名前で呼んでいいからね」


「瑞希先輩ですね。わかりました!」


 良かった良かった、無事に丸く収まって。

 ん? なんで二人とも僕のほうを見てるんだろう?


「優人君?」


「小野寺さん?」


「「自己紹介してください!」」


「えっと、小野寺優人です」


「え? ほかには?」


「それだけ? どんな呼び方してほしいとかないんですか?」


「あ、えっと気軽に優人って名前で呼んでください! あ、やっぱり優人君って呼んでください。お願いします」


「自分で君付けって」


「あはははっ。小野寺さん面白い。あ……優人君か」


 皆で向き合い大声で笑った。

 一件落着なのかな?

 そのあと一緒に途中まで話しながらみんなで帰った。

 僕と紅羽先輩は竹下さんとLINEを交換してその日は解散した。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、変な表現などありましたらご指摘ください。



ご意見ご感想なども大歓迎です。

☆の評価もよろしくお願い致します。

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