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新入部員集合

 無言のまま落書きブースに移動して落書きを始めた。

 また無言だ、どうも無言の間は苦手だ。

 聞きたいこともあるし紅羽先輩に質問してみるか。


「なんでこのプリクラ最後にキスすることになってるんですか? それも男性からって」


「さ、さぁ……? な、ななんでだろうねー」


「あの……もしかして知ってました?」


「し、知ってるわけないじゃないかー」


「棒読みになってますよ。もう一度だけ聞きます……本当は?」


「……怒らない?」


「んー、わかりました。怒らないから正直に話してください」


「本当は知ってました。優人君からキスをして欲しくてこのプリ機を選びました……」


 質問の返答から動揺や棒読みだったからなんとなく察してはいたけどまさか知ってて選んだとは。

 けど、こんな機会がなかったら僕からキスをすることなんてなかったと思うし、良かったのかな。


「これからは僕も頑張ります。何を頑張るとは言えないですけど、とにかく頑張ります。なので瑞希ちゃんも遠慮せずなんでも言ってください」


「じゃ……早速。1ヶ月に1回はデートしよ!」


「え……」


 なんでもとは言ったけど、とんでもない提案というか要求をしてきたぞ?

 1ヶ月に1回……? 無理じゃないけどなかなか厳しいのでは?


「まさか、断らないよね? ね?」


「う……ぼ、僕も男です! 約束します!」


 紅羽先輩の脅迫もどきに押され約束をした。

 やっぱり僕は引っ張ってもらうのが性に合っているのかもしれないな。

 いざと言う時は自分で決断しないといけないけど、1人で決めなくていい時は相談して話し合った上で決めよう。

 その後、ショッピングモール内にある定食屋でご飯を食べ紅羽先輩は買い物があるらしくモール内での解散だった。

 次の部活からは新入部員を交えての部活だ。

 土日は家でのんびりと過ごした。

 若干残っていた筋肉痛も完全回復し月曜日からの部活に万全の状態で挑める。

 紅羽先輩とは引き続きLINEや電話でやり取りをした。

 《月曜日が心配です》とLINEをしたら《優人君なら大丈夫! それに、仲間が増えるんだから仲良くしないと。一応先輩になるんだから笑》と励まされてるのか喝を入れられてるのか分からないLINEが送られてきた。

 紅羽先輩らしいといえば紅羽先輩らしいな。

 とりあえず月曜日、あまり気負わず頑張ろうと思う。


 月曜日になり部活に向かう途中……ものすごく緊張している。

 これは……まずい。心臓が飛び出て来そうだ。

 なぜ緊張しているか、答えは簡単だ。

 今日から僕と同じ学年の新入部員が参加するのだ。

 無論どのクラスの誰が入るかは把握していないし人数もわからない。


「優〜人君っ!」


 緊張と不安に包み込まれている僕に元気な声をかける人はただ1人、紅羽先輩だ。


「あ、どうも……うっ」


「ちょ、ちょっと大丈夫!?」


「ただの極度の緊張なので心配ご無用です」


「極度の緊張って、しっかりしなさいよ……」


「うっ……頑張ります」


 情けないが今は頑張りますと言うしかできない。

 面接の時も緊張はしていたがよく意識を失わなかったものだ。

 まぁ、キスされた時意識を失ったのは別と考えて。

 あの時は耐性がない上、驚きで意識を失っただけだから。

 今は緊張だけだから大丈夫、大丈夫なはず。

 それに、いつかは新入部員の人たちと会わないといけなくなるし受け入れるしかない。

 時間は僕のわがままで止まることはない。

 時間が過ぎていけば全て解決してくれるはずだ。

 いつものように部活の準備を進め神拝と準備運動をした後、新入部員紹介で他の同学年の人と前に並んだ。

 新入部員は僕を含め5人。男子3名、女子2名だ。

 前と同じように皆の前で自己紹介とひとことを言って自己紹介の時間は終わった。

 そのあと紅羽先輩が以前と同じように新入部員も大会に出る、ということを部員全員に伝えた。

 いよいよ新入部員を交えて部活開始だ。

 やる内容は変わらずにゴム弓を引くことだったが、先輩の射型を見て学習することもあった。

 先輩達も僕を含めた新入部員に見られていることもあり緊張しているようだった。

 けれど、いつものように射型を崩すことなく、難なくこなす。先輩の姿を見せつけられた。

 僕にもいつかは新入部員にかっこいい姿を見せつけれる日が来るのだろうか?

 その日に備えて今はできること、射型を意識して練習に励むしかない!


 部活が終了し、新入部員も交えみんなで話しながら帰る。

 自己紹介や活動内容、大会の説明などあり動いたりする活動時間は少なかった。

 今は4月。大会は6月だからそれまでもっと練習を頑張らないといけない。

 紅羽先輩が部活を引退するのが次の次の大会。

 それまでに練習を重ねて実力をつけないと。

 色々考えながら歩いていると


「小野寺さん! 途中まで一緒に帰りましょ?」


 いきなり新入部員の女子——竹下愛たけしためぐみ——が声をかけてきた。


「えっと竹下さんでしたよね? 初めてお話するもので……」


「えぇ、初めてましてですね。普段は女子生徒ばかりとお話しているので」


「ん? えっとなんで男子生徒の僕に声をかけたんですか?」


「私、小野寺さんのことが気になってしまいまして」


「気になる……? えっとどういう――」


「一目惚れのようなものです! なのでお話をしたいんです」


 僕の質問する声を遮り言ってきた。

 これは……まずい。非常にまずい。

 僕には紅羽瑞希という決めた女性がいるのに……何故か竹下さんにドキドキしてしまっている。

 一応、敵意はなさそう……。

 仲良く……したら楽しくはなるんだろうけど、仲良くなりすぎるのは問題だな。

 とりあえず今日だけは一緒に帰っても問題はないだろう。


「わかりました。今日はお話して帰りましょうか」


「うふふっ、ありがとっ!」


「いえいえ、別にお礼を言われるほどのことはしてませんよ。ただ帰るだけですし」


「そういう謙虚な所好きだな〜。小野寺さんは土日暇なの?」


「土日ですか……」


 予定は無い。けど予定が入る可能性はある。

 それになんだろうこのガツガツ来る感じ、以前にも味わったような。

 なんだ? 紅羽先輩の再襲か?

 ……でも紅羽先輩とは違う謙虚さが新鮮だ。

 謙虚、それでいて芯はしっかりとしていてブレない。

 もしかしたら僕が目指した方がいい人物像だ。


「予定ありますか?」


「えっと、今のところは無いです! これからどうなるかわからないですけど」


「ふむふむ。ちなみに小野寺さんはその……彼女さんっていらっしゃるんですか?」


「ふぇ!?」


 不意な質問に驚き変な声を出してしまった。

 紅羽先輩の声や顔が思い浮かぶ。


「その反応……いらっしゃるんですね」


「いや、いません! いませんけど……」


「好きな人は……いると?」


「好きな人はいます」


「誰なんですか?」


 竹下さんは前のめりに質問をしてくる。

 恐らく本気で恋人の座を狙っているのだろう。

 美しく可愛い顔にある目の眼光が物語っている。

 ただ、紅羽先輩の名前を出して迷惑をかける訳にはいかない。

 仮に竹下さんが紅羽先輩をライバル視して敵対心を抱いたら部活中がお通夜状態の重い空気でとても部活が出来なくなってしまう。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

誤字脱字、変な表現などありましたらご指摘ください。



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☆の評価もよろしくお願い致します。

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