放課後デートです
そのあとみんなが射る姿を見学して部活は終了した。
部活終了後部員全員でミーティングを行いその日は解散になった。
仲がいい部員同士話しながら帰宅する。
僕は紅羽先輩と一緒に帰ることになるのかな? と思い待っていると紅羽先輩は他の先輩と話しながら帰ってしまった。
あれ? 今日だよね? 今日約束してたよね?
一体どうすればいいのだろう……なんて考えているとスマホの通知音が鳴った。
通知内容を見てみると紅羽先輩からで《後ほど合流しよう》とのこと。
後ほど……後ほどね。一旦途中までは帰っていいのかな? 場所もどこで合流するのだろう……?
肝心なところが抜け落ちてるんだよな……。
まぁ、そこが天然で紅羽先輩のいいところでもあるんだけど。
《場所はどこで合流しますか?》っとメッセージを送って返信を待とう。
数分もしない間に《近くのコンビニにしよう》と返ってきた。
慌てて来たけど……いないな。
紅羽先輩の姿はコンビニになかった。まだ向かっている途中なのだろうか?
いくら外で待たせてもらってるとしても、何か買わないと失礼だよね。
飲み物を買っておこうと思うけど、紅羽先輩って炭酸飲めるのかな? なんか、めっちゃ失礼だけど水かお茶しか飲んでないイメージ。
コーラと麦茶を買っておけばどっちでも選ぶことができるからいい選択だよね。
飲み物を購入してコンビニの外に出ると紅羽先輩が待っていた。
「あ、もう来てたんだ。今LINE送るところだったよ」
紅羽先輩が小走りで駆け寄ってくる。
その姿はまるで飼い主を待っていた小型犬を彷彿とさせる。
「僕も少し前についたところなんですよ。ところで、紅は……瑞希ちゃんはコーラって飲めますか?」
「コーラ飲めるよ。むしろ好き! あれ? いいの? 『紅羽先輩』って呼ばなくて」
「今は僕達しか生徒いませんし大丈夫だと思います」
「じゃーうちも優人君って呼ぶ!! えへへ」
紅羽先輩はそう言いながら僕の手を握ってきた。
繋がれた手はそのままに先程買ったコーラを渡した。
「このまま……ずっと一緒いたいな」
紅羽先輩が小さな声で呟いたが僕はしっかりと聞き取れた。
本当に僕の事が好きなんだろうな。
対して、僕はどうだ? 紅羽先輩の事が好きなのだろうか?
いや、好きなのかもしれない……でも、幸せにしてあげることが出来るのか?
紅羽先輩は「結婚してよ!!」と最初から結婚のことを考えてくれているけど、僕は突き放すばかりで紅羽先輩との結婚を真剣に考えていない……。
結婚……結婚かあ。
紅羽先輩、綺麗で皆の前ではしっかりとしてる、乙女な姿を見せるのは知る限り僕の前だけだ。
僕は結婚することができたら幸せだろうけど……紅羽先輩は幸せなのかな?
僕ばかり幸せになって紅羽先輩は幸せじゃないかもしれない。
あーあ、こんな時相手の気持ちを知ることができたらいいのにな。
「おーい、考え事かい?」
難しい顔でもしていたのだろうか?
心配そうに紅羽先輩が声をかけてくれる。
「あ、いや特には——」
「こらっ! 隠し事や悩み事は一人で抱え込んじゃダメ。
……もしかしてうちに相談できないこと?」
うっ、相談はできない……よね。
出来ないというかしちゃダメだし。
仮に相談したとしよう。
……うん、即入籍レベルで結婚を推されるに決まってる。
「ちょっと……相談は出来ないことですね。ごめんなさい」
「もしかして……うちのこと嫌いになったとか……?」
涙目になって紅羽先輩が訴えてくる
「いやいやいや、嫌いじゃないですから! 瑞希ちゃんのことは寧ろ好きというか、なんというか」
「嫌いじゃないなら良かった。うちはずっと優人君のこと好きだからね」
「とりあえず、弓具屋さん向かいましょ? このまま立ち話してるよりご飯食べながら話してた方が楽しいですし」
握った手を更に強く握ると紅羽先輩も握り返してくれた。
繋いだ手を離すことなく弓具屋さんに向かった。
弓具屋さんに着いて矢を受け取りに行くかと思ったら矢を入れる筒を見に行った。
そういえば、矢を持って帰るのに筒を持ってきていなかったような……。
この前の部活中に矢筒は教えてもらっている。
矢を大会や道場に持っていく時に矢を破損させないようにする道具だ。
でも、紅羽先輩自分の矢筒持っていたような気がするんだけど。
「ねぇねぇ、優人君だったらどの矢筒にする?」
「え? な、なんで僕に聞くんですか?」
「えっと……その、ほら! うちにはうちの好み、優人君には優人君の好みがあるじゃん? 知っておきたくて」
そんなものなのかな? なんてことを思いつつ僕はスカイブルーの矢筒を選んだ。
全部がスカイブルーになっているわけではなく所々に白が散りばめられていてまるで青空を表現しているようだった。
「綺麗……青空を写したような矢筒だね」
紅羽先輩も同じことを思っていたらしく声が漏れていた。
その後矢筒をレジに持って行き会計を進めた。
注文した矢を矢筒に入れてお店を後にした。
弓具屋さんを出たら紅羽先輩が僕の手を握ってきた。
僕は優しく手を握り返しファミレスにゆっくり雑談しながら向かった。
「優人君」
「ん? どうしました?」
「この矢筒優人君にあげるよ!」
え? 今矢筒あげるって言った? あれ、紅羽先輩が使ってた古いのを貰えるってことだよね?
きっとそうだ。買ったばかりのものを貰うことなんてできないからね。
「ありがとうございます! 大切に使わせてもらいますね」
紅羽先輩に感謝を込めて精一杯のお礼をした。
少し歩くとファミレスが見えてきた。
もう少し歩けば他のファミレスもあるかもしれないけど色々と話したいことがあるしここでいいかな?
「ここのファミレスでもいいですか?」
「うん! うちは大丈夫だよ!」
紅羽先輩の確認を取ってファミレスを決定した。
中に入ると店員さんが「いらっしゃいませ。何名様ですか?」と決まったセリフで出迎えてくれた。
2人と店員さんに伝えると笑顔で席に案内して貰えた。
「ご注意お決まりになりましたらベルでお呼びください」
そう言い残し店員さんは去っていった。
丁寧な接客で美しかった……店員さんに見惚れていると紅羽先輩の顔が目の前に現れた。
「ちょっと……何見惚れてんの?」
「い、いやだな〜見惚れてなんてないですよー。あはは」
な、なんだ? 今日の紅羽先輩鋭いぞ……怖いくらいに鋭い。
いつもと違うトーンの声にドキッとしてしまう僕も僕だけど。
「あっそ。別に疑ったりしないけど、うちと優人君は今デート中って事忘れないでね?」
「え……? あ!!」
そういえば前にデートのことについて詳しく説明されてたな……。
傍から見たら紅羽先輩と付き合っているように見えるだろうし、周りの目を気にする訳じゃないけど紅羽先輩に集中しないと。
さて、ファミレスに来たからにはご飯を食べるわけで注文をしないといけない。
何にしようかなとメニュー表を見て選んでいると視線を感じる。
一人しかいない……紅羽先輩だ。
もうメニューを決めたのか? いや、決まったにしては早すぎるぞ。
「えっと、もう決まったんですか?」と聞いてみると「決まったよ。優人君はまだ決まらないの?」とにやにやしながら見てくる。
早く決めなければ……。
んー、なんでこうもメニュー表の料理は美味しそうに見えてしまうんだろう。
ステーキ、ハンバーグ、和風定食、魚、唐揚げ、麺類の定番メニューに加え期間限定メニューなんてものまである。
「ドリンクバー付けますか?」
紅羽先輩に問いかけると「うんっ」と笑顔で返答してくれた。
値段は気にしない、食べたいものを選ぼう。
「よし決めた!!」店員さんを呼ぶためにベルを押した。
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