脳出血後のリハビリ習作・400字詰め原稿用紙1枚で何が書けるか(44)
脳出血後の失語症状リハビリとして、400字詰め原稿用紙(+α)に手書きしていたものです。
恥ずかしいミスがあってもそのままテキスト化しているので、誤字脱字やオチ不明等はご容赦を。
なお、リハビリは現在も継続中です。
一月六日
※三題:ネズミ、幼稚園、十五夜
『王様はロバ』
寒い日も寒い日も、晴れの日も雨の日も微笑んでいた。そんなネズミの像が公園にあった。像を見に来る人が殆どいなくても、ネズミの像は微笑んでいた。
そんな像がなくなったのは、寒くも暑くもない、秋の十五夜のことだった。微笑んだネズミの像は、いつの間にか泣いた馬の像に変わっていた。
「コレは、困ったな」
いつ頃までネズミの像があって、いつ頃から馬の像に変わっていたのか。そもそも馬の像に取り換えたのは誰か。自治会長は首を傾げた。それを知っていたのは、近所に住む幼稚園児たちだけだった。
「ネズミのおばあちゃん、おまつりからずっとこないね」
「まつりのあとにね、ネズミさんといっしょに、かえったって」
子供たちの話を聞いて、自治会長はその近所に住んでいた老婆のことを思い出した。
老夫婦が陶芸家あったことも、公園の像を造ってくれたことも、お金を払わなったことを思い出した。
「引っ越す際に新しい像をくれるなんて、ありがたいな」
だが自治会長は、秋祭りで泥酔したあげくネズミの像を潰したのが自分だと忘れていた。
粘土で作られた馬がロバのように変わったころ、高価な請求書と慰謝料の書類が送られてくることも、想像出来るはずがなかった。
(終わり)