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四限が終わり、皆好きな場所で昼食をとる。
私はいつも適当なグループに入るか、1人席で持参の弁当を食べていた。別に寂しいと思った事は無かったが、購買に走り外とかでワイワイ食べる人達を見ると少し羨ましい気もした。
「航、購買行こうぜ!」
「あ、わるい俺pass」
「OKOK、パスの発音良過ぎだっての!」
だけどいいのだ、笑い声と共に彼が来てくれるのだから。
「机くっつけてもいい?」
「いいよ」
返事をして机を彼の方へ向けると、航くんはとても嬉しそうに私と向き合うように机をくっつけて座った。
「結ちゃんいつも弁当だよね、毎日作ってるの?」
私の冷凍食品だらけの弁当を覗き込んで言うので、私は少し恥ずかしくなった。手抜きのおかずだからというよりも、それは母が持たせてくれている物だったから。
「本当はそうしないと駄目なんだろうけど、お母さんが作ってくれるんだ、高校生なのにダメだよね」
「そんな事ない!」
急に大声を発した航くんを私は目を丸くして見つめていた。航くんは直ぐに顔を赤くして下を向いて頭をかいていた。
「その、お母さんが作ってくれるってとても幸せな事だと思う。だから甘えてもいいんじゃないかな?」
コンビニのパンを齧りながら呟く言葉に、何故か心が温まる。
「良かったら卵焼き食べる?」
そう聞くと彼の目が見開かれ、瞳がキラリと輝いた。いいの?と聞くので1切れ箸で摘んで手のひらに乗せてあげた。
すると驚いた、卵焼きを1口齧ると彼は大粒の涙をこぼし始めたのだ。
「大丈夫!?不味かった!?いいよもう食べなくて」
一体何を入れたのお母さん!?
しかし慌てる私をおいて、ゆっくりと1切れを食べた彼は、絞り出すように言葉を紡いだ。
「おいし・・・すぎて、びっくり・・・して」
その瞬間私はへたり込むように座り込んだ。
その日から、私は毎朝お弁当を作る事となった。勿論、航くんの分のお弁当もだ。
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不知火美月