World quantized 3
おひさです(コメかぶり)
「ほうほうふむふむぅ? 私たちはそんな設定してないけどね……この際だから言うけどバベルの最上階には無駄に強いラスボス設置して、その最中にザコ敵として旧階のボスモンスターが湧くっていう設定になってるはずなのよ」
「なにそれ、意味のわからないナレーションよりもそっちの方がプレイしたかったんですけど」
詳しい話が始まってから約1時間後、録音されていたデータを聞かせたり、個人サーバーの件の話し合いをしたりしてある程度話はまとまり、ここの会社にあるテストサーバーを借りれることになった。
「まあ、ウチとしては強いプレイヤーが増えてくれると嬉しいからね、ウィン・ウィンの関係ってやつだよ」
と、祐さんが言ってくれたのが最後のひと押しだった。
というか、先程から社員の人達の反応をちょこちょこ見てるんだが、常識人がほんとに祐さんしかいない。いつも思うが、この会社はどうかしているなー、と、半ば投げ出し気味に傍観することにする。
それにしても色々と話が合わない。開発段階と変わったなと思ってたところは変わってないらしく、流石にそんな大きな改変があったら気づくはずだとエレンは真面目な顔で答えた。のだが、
「もしかしたら運営に見つけられるか見つけられないかぎりぎりの範囲で、私たちに焦らしプレイを試みてるのかもしれないけど♡」
と付け加えたために全てが台無しに。恐ろしや変態。どんなことでもプレイに変換できる強靭な思考をお持ちのようだ。
「ははは、その通りだよ……」
祐さんは苦笑いして私の言葉に納得していた。おい、エレンさんやぃ、旦那さん引いとるよ!
「さぁ、話もある程度片が付いたし、うちのテストサーバーに君たちの自宅からでも部室からでもつなげるように色々設定をさせてもらうよ、そこのICパネルに君たちのデバイスを乗せて」
祐さんがそう言ったので、私はみんなのデバイスを回収してそこに置いた。
「ああんっ、この地味の機会の駆動音さえ、もどかしい! もっと大音量で鳴って! 焦らしはもういいかりゃあああんっ!」
「……」
「……へ?」
「はぁ……」
「……この人亀甲縛りに猿轡しておけば大人しくなるんじゃないかな」
「……ごめんね、ほんとごめんね……」
まるで自分のことのように謝る祐さんをみて申し訳なくなり彼女に対することは何も言わないことにしたが、その後も私たちが帰宅するまで変態の変態度合いは収まるどころかヒートアップしていた。
「女子高生に見られて恥ずかしいっ、羞恥ぷれいっ!」
もう呆れてものも言えないわ……。何事もやりすぎ注意といつも教員に言われていたが、初めてそれに納得できた気がした。
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そのまま駅前までみんなで徒歩で移動し、各自解散して自宅へと別れる。
しばらくはあの女に要件はないと告げ、祐さんにサーバーの管理をしっかりと頼んでおいたので、流石に事故は起きないだろう。事件はありそうだけど……
「ふぅ……」
のんびりと自宅へと変える道中、エリアメールで磁場異常が時々起こるので気をつけろと流れてきた。
幸い私の家は自宅に帰ると宅内全域が、無線でも扱いは有線だ。磁場異常は完全無線域でしか怒らない現象だから自宅に帰ればなんら問題はない。
そのまま歩いて数十分、見慣れた建物の見慣れた一室にやっと帰ってきた。
「……はぁ、長かった……」
みんなに迫られなければ絶対あんなところ行かない。むしろ今まで女子一人で行ってよく襲われなかったなと少し感心した。
ドスッ、と音を立ててソファに座り込むと、リモコンを手繰り寄せてテレビの電源をつける。
ちょうどニュースをやっていて、話題は「謎の人物の声」「ゲーム内の音声ではない」など、どこの局も私と同じ証言をする人物達の話でいっぱいだった。
高野で刀を振り回すゲーム、水中で敵を狩りまくるゲーム、土地を得て街を経営するゲームなど、実にまとまりのない、様々なジャンルで私と同じ声が聞こえたという人がいた。
皆の共通点は、そのゲームのトッププレイヤーでソロプレイヤーであるということ。
全くなんの意図があるのかわからないし、『ゲーチス』の修復にも時間がかかっている中、それを知るすべは私たちにはなかった。
「とりあえずゲーム……」
VRプレイモードを起動して、ソファに横たわる。【リザイン・エヴォルテスタ】を起動し、サーバーIPを事前に打ち込んであったので、アカウント移行でログインをした。
「っと、ふぅ……」
横になっていたはずなのにいきなり自分が立っているのだから感覚としてはビビる。本の数時間やらないだけでわすれる、未だになれないもののうちの一つだ。
「あー、おっつー!」
「……おそい」
「あらあら、やっと来ましたね」
ログインすると、たまたま広場に菜乃花のアバターがこちらに向かってきて、それであとの2人も私の存在に気づいた。
「ほーらほら、これが現実の海夏より1000倍可愛いシアンちゃんだぞ〜!!」
「黙らっしゃい!」
パチンと思い切り頭を叩くがセーフティーが働いたため決めの一打にはならず、菜乃花にかゆいと言わせることしか出来なかった。
「はいはい、早くレベリングしましょう」
彩奈のその言葉に、私たちは照れながら賛同し、私が戦闘を切って初期のレベリングのための地点へと彼女らを案内することにした。
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