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Artificial Intelligence of the world 1

( 厂˙ω˙ )厂ただ書きたかったもの。

 だるい、ねむい、動きたくない。


 全身にかかる普通の人より少し重めの空気の重圧が、私の体をベッドから起き上がることを許さない。


 精神的な倦怠感が体に顕著に現れて、「もう動きたくない〜」と悲鳴をあげているようだ。てか、「学校行きたくない」という願いを体が体現してくれてるんだろう。


 そもそも週5で行かなくてはいけない学校という無駄に規則を重視する退屈な教育機関に、誰が好き好んで向かうというのだろうか。


 大抵のことがヴァーチャルで済むこのご時世、わざわざどこかに通わなくてはいけないというその考えが間違いだ。


 そんなふうに時代に取り残された考えをいつまでも持っている老いぼれ共がいるから私のような人間が不幸を被るのだ。


 ……まぁ、そんなこと言っていてもなんの意味なんてないか。


「はぁ、だるいったらありゃしないわ」


 いつも通りに一通り頭の中で問答をした後、私はいつものようにあの退屈な場所にわざわざ拘束をされに行くための支度を始める。


 カチューシャのような形をした端末を自身の頭に前髪をかきあげるようにして取り付け、櫛で自身のショートヘアをいなすように整える。美容院に通うのが面倒で切らなかった腰まで伸びた髪の毛が綺麗に並ぶよう、ブラッシングだけは時間をかける。キャラメイクは現実でも怠らない主義な私だ。


「……あちゃ、ちょっと髪の毛が茶色がかってきたか。日光浴のし過ぎかな」


 いつものようにブツブツと独り言を呟きながら身支度を終え、箱買いして玄関に置いておいたウィダインゼリーをグビっと飲み干して家事ロボットにゴミの片付けを頼む。


「さぁ、行ってくるか……」


 全身の倦怠感は依然として抜けきらないが、出席単位だけは取らなくてはならない。数十年以上も続く悪しき風習である「単位制度」に激しい嫌悪感を抱きながら、私は自宅マンションの階段を下っていくのだった。





⿴⿻⿸





 2082年、人類のほとんどの仕事が科学に頼り切りになった時代。


 働く必要のなくなった人類がこのまま堕落して崩壊してはいけないと、脱高性能AIのマシンを優先的に使うようになったことから、急に人間が機械を自身で制御しなくてはならない仕事が増加した。


 機会を操る人間達は技師と呼ばれ、人類の発展のためにと日々せっせと大事なお務めに勤しんでいる。


「と、言うのが現代の地球史であり、私たちの生まれた時代だ! 技師になるのは基本男だけだからな、お前達みたいなお嬢様方には一生縁のない話だろう」


 いつものように地球史を熱く語り出す岡松女史の言葉を軽く無視し、私はカチューシャのように髪にかけたARデバイスでインターネットのチャットルームへと入室する。


 そもそも、彼女がいつも熱く語りすぎるせいで何故か授業の内容は過去の話から今の時代の話にいつの間にやら変わってしまうので、しっかりと話を聞く必要性がない。居眠りしても目が覚めると同じ話だ。


『技師は素晴らしい』『機械の可能性は無限大だ』


 いい加減反吐が出る。大人達は皆、何もしないで済む世の中だったり、単調なことを繰り返すことに命を費やしていて、まるで馬鹿みたいだ。


「おい、御妻城(おつまぎ)、授業中にARボード以外のアプリケーションを開いてるんじゃない!」


「あいあいさー」


 私に向かって飛んできた岡松女史の言葉を適当にあしらいながら、大人達への不満の思考を一時的に別の場所に置いておいて、今日の放課後はどんな世界に冒険しようかと1人で空想にふけることにした。





⿴⿻⿸





 市立雪小原女学園。かつての男女共学制などというものの気配は微塵も感じられず、女子だけのために作られたこの学園。


 市立高校にも関わらず、とある大地主が頭おかしいんじゃないかという額のの金銭援助をしたことで出来ており、その地主はこの学園の理事長を務めるという大層なふんぞり返り具体だ。もう市立じゃなくて私立でいいんじゃないだろうか。


 校舎は全4棟で構成されていて、1棟は1年生の教室、2棟は2年生の教室、3棟は3年の教室、4棟は特別教室がそれぞれ入っており、グラウンドを中心にして四方を囲っている。金だけはかけました、と言わざるを得ないしっかりとした造りで、3年に1度、4日で校舎を建て替えるそうだ。長期連休の時に行われるので見ることなどないが。


 部活動は地下に設けられた広大な空間に全100室の部屋が用意されており、同好会から大型の部活まで多くの団体がひしめき合っているが、1つの部室が2階構造で冷暖房完備。インターネット回線もその他ライフラインも完璧となれば、だらけきった現代人たちの部室の使い方といえば完全に趣味に走るわけで。


 部室スペースの南端に居を構える『VRゲーム同好会』に所属している私は、もちろん誰よりも趣味に走っている。


 すべての授業が終わり部室へと訪れると、既に私以外の3人は、それぞれの定位置に着いて仮想空間にログインをしているようだった。


 目の前に寝転がる少女がつけているゴーグル型のデバイスの画面が赤く光ったので、これはいつもの私に電話をかけてくるやつだね、と思っていると、案の定私のデバイスに電話がかかってきた。もはやこの光景はルーティンのようなものに近い。


『あー、おっつー、魔銃ゲット出来ないんだけどさ、入手方法知らない? エリア72のボスモンスターからドロップするって話はNPCから聞いたんだけど』


 同好会の一員であり、今私の目の前でコタツに寝転んでいる東雲しののめ 菜乃花(なのか)は、VRゲームのセンスこそ素晴らしいものの、3歩歩いたら忘れる鳥頭なので私がいつもゲームの攻略方法を教えるのだ。


「【アガルタオンライン】の? それだったら拳闘士のジョブか楽士のジョブでボス倒さないとドロップしないねー。その後で銃士職に派生するための弓闘士ジョブも1回なっておかないと使えないよー」


『おー!! さんくすさんくす!

 僕が銃士ジョブ手に入れたらちょっとエリア89の攻略手伝ってよー、あそこ1人じゃできなくて』


「あー、了解。手に入れたらまた電話かけてー」


 電話をかけてきた友人にささやかなアドバイスを送りつつ、自分がプレイしているVRアプリケーションのログインを進める私。なんかプロっぽくない? と、ちょっと笑ってしまった。プロってなにさ。


 司会の左上端っこに表示されているステータス表示に目をやると、自身の【御妻城(おつまぎ) 海夏(うみか)】という名前の上に、アカウントの名前である【シアン】という名前が表示された。


 今回選んだのは、まだ始まったばかりのVRMMORPG【リザイン・エヴォルテスタ】という、厨二心全開な名前のオンラインゲームだ。


 ほかのVRゲームと同じように脳から体への運動信号を一時的に遮断して、電子体というヴァーチャルの体にその信号を送ることで体を動かす感覚で遊ぶことが出来る在り来りなゲームだが、サンドボックスゲームのように1から何かを生成することも出来るという、今の時代のRPGでは他に見られない特殊な使用が追加されている。


 まだリリースされたばかりなのでサブアカウントを作るだけやり込めてはいないが、プレイヤーのなかでは能力値がトップクラスであると自負をしている。


 なにせ、開発段階からプレイの参考データを提供し続けているのだ。1番勝手がわかっているのだからトップでなくては困る。


 過去にほんの気の迷いで、馬鹿みたいにたくさんのオンラインゲームの大会に参加して優勝してしまったことから、このようにプレイの参考データが欲しいだとか、アルファ版のテスターをして欲しいだとかの依頼が直接に来るようになった。


 さらに報酬もいい値で貰えるのであの時の気の迷いは現在にいい影響をもたらしていると言える。過去の私、グッジョブ!


 まさにこれが好きなことをして暮らすということだろう。学校なんてものも本来行く必要は無いのだが、実家からせめて高校は出なさいという面倒くさいお達しが来ているので従わざるを得ない。


 ゲーム制作会社の大人共には上から目線で話をさせてもらっているが、何故か両親には頭が上がらないので不思議なものだ。


「さぁ、今日もソロで最前線押し上げますかね!」


 くだらないリアルから離れられる時間。電子体の操作感度を確認しながらワールドの中心にある塔【バベル】の最速攻略を目指して、私は仮想世界に完全にログインをするためにコードを口から大きく放つ。


「『ヴァーチャルダイブ!!』」


 一瞬ふわりと体が浮く感覚がして、次の瞬間、視界にはいつもと変わらないゲーム内の自室が広がっている。


「んぁー、今日も張り切っていきますか!」


 こうして、私はいつも通り仮想空間での冒険を始めるのだった。

読んでくれてありがとうございます(*´ω`*)


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