H キレた俺
裏切られた期待は次の日……、怒りに変わっていた――。
こうして俺は、行く必要のない夏休み初日の補習にわざわざ出向き、こみ上げた怒りと、冷めた興奮と、奪われた時間をCDケースごと……、
教室に入ってきた木南に叩きつけてやった――!
「キャア!」
小さな悲鳴と、机の下にカシャンと落ちて滑るCDケース――。裏返しになったのをチラっと確認した俺は、怒りを露わにした――。
「――クソつまんねー自作ゲーム、俺にやらすんじゃねーよ!」
マジでキレていた。女子だからって容赦はしない!
翔がいなかったら……、マジで胸ぐらを掴んでいたかも知れない――。
「――お、おい! やめろよヒロ! なにがあったんだよ!」
「こいつのクソゲー、マジで超ムカつくんだよ!」
小さい身長で怯えながら見つめる瞳。俺に罪悪感はない。
――もっと怯えろ! ――謝罪しろ!
「最後まで……ちゃんとプレイしてくれたの?」
「ああ! ハナっからチートして、全部のシナリオ見てやったが、面白い要素まるでなしだ! クズだクズ!」
――堂々たる俺のやったクソゲーランキング一位獲得だ――!
「俺の無駄な時間と、今日の学校に来させた迷惑料を払いやがれ! 一分千円だ! ――千円!」
「――ひどい!」
「それはひどいぞ」
翔は……無駄に馬鹿力だ……。俺と木南の間に割って入り、俺の両手を掴むと、腕を動かすことすらできなかった。
白い開襟シャツを汗が伝う。ハアハアと上がった息を落ち着かせて平静をよそおい、ゆっくり口を開いた。
「ひどいだと……?
ああひどいぜ。感想を聞かせてって言ってたよな。言ってやるよ――」
――そのクソゲーの真髄を!