F 熱い血は……流れている
ゲーム好きな俺だって……。女子が嫌いなわけじゃ……ないんだ。
終業式が半日で終わると俺は、部活で残っている奴らを横目に早々に学校を去った――。
帰りの熱い日差しと潮風を頬に受け、勾配のキツイ坂を、必死に自転車をこいで進む。制服のシャツが張り付き、襟までベトベトだが、頭の中は先ほど受け取ったCDのことで一杯だった。
木南は……なぜ俺なんかに自作ゲームを渡したのだろうか……。
俺がゲーム好きだからか? でも、エロゲー好きの男子と知っていて近付いてくる女子なんて……いないだろう。
つぶらな瞳が脳裏に浮かぶのだが……俺のタイプとは程遠い。
俺は、背が高くて上品で大人しい、綺麗なお姉さん系が好きなんだ。クラスでいえば……あの子だ。
九条佑里香――。
あの子しかいない。あの子なら……、付き合ってやってもいい――。
木南ほどではないのだが、入学して以来あまり話したことはない。話すチャンスがないからだ。
九条佑里香は、他の女子と比べると、群を抜いている――。
スタイル、性格、アイドルのような顔。そして、テストではクラスで二位。つまり俺がいなければ一位だった。吹奏楽部でフルートを吹く姿は、まさにお嬢様。そのくせ、体育での運動神経は抜群。実際にいるんだよなあ、そんな学園生活のマドンナ的存在……。友達もたくさんいる。性格もいい。
是非一緒に学生生活をエンジョイしたいが……。俺には高嶺の花――なのかもしれない……。
九条に吹かれるフルートになってしまいたいと……他のクラスのバカな男子が呟いていたのも……頷けてしまう……。いやいや! 俺はフルートなんかなりたくはないっ!
どうにか……付き合える方法はないものだろうか……。弱みを握るとか、一服盛るとか、そんなチート作戦はないものだろうか。
……冗談だぜ。くれぐれも本気にするなよ……。
まあ、今の俺は、そんな恋話になんか興味がない。俺が好きな女子の事なんて、誰にも言わない……。言うようなバカなことはしない……。
しかし……。
そんな俺が、一生に一度の不覚。あの馬鹿の谷山翔にだけ、そのことを知られてしまったのだ。
入学してすぐくらいに、可愛い女子ランキングをしたときだった――。
俺は一位を真面目に答えたのに! 翔のやろう――よりによって一番のヘビーウエイト女子の名前を言いやがった。……その女子は「ヘビーウエイト」と男女からいつも呼ばれ……悲しむどころか自虐ネタのように笑っている。……痛い。本当は傷ついているはずだぜ。……俺の知ったことではないが。
しかし、九条の名前を言った俺にしてみれば、とんだ失態だった。やられた! ――あいつは最初から自分の好みを言おうとしてなかったんだ。完全に弱みを握られてしまった。
自分より成績の悪いやつに出し抜かれた歯がゆさは……どうにかなりそうだ!
……まあ、……だからと言って……それでどうにかなったわけでもなかったし……、翔は、馬鹿だが悪い奴でもなかったから、なにもなかったかのように今でも友達関係を続けられている……。
でも、親友じゃねーぞ。あんなバカ。
家に着くころには、制服のズボンは太ももや尻にまで汗染みが出来ていた……。
いつもの倍以上の速さで家に辿り着いていた……。