D 同級生ショッピング
俺達のクラスで流行っているフリーソフト。その名も……。
俺の苛立ちの原因……。あれは昨日、終業式後の教室での出来事だった――。
「――ヒロ! お、お前、もう『同級生ショッピング』クリアしたのかよ!」
翔のバカは……声まででかいのが……痛い……。哀しい……。切実だ……。
クラスのおおよそ全員に聞かれていただろう……。
「でっけー声、出すな。このバカ!」
――小さい声で怒鳴ることの、なんと難しきこと――。
俺が小さな声で怒鳴ったその理由は超簡単だ。そのゲーム、『同級生ショッピング』がネット上の十八禁フリーソフトで、クラスで知らない男子はいないほどのエロゲーだったからだ……。
女子はそんなアダルトなゲーム、知らないとは思うが……ゲームのタイトルでおおよそ想像がつくだろう!
「同級生ショッピング」だぜ……? 同級生と仲良く買い物……ショッピングに行くようなマッタリ恋愛ゲーム? 違うわな――!
完全なるエロゲーだ。
同級生の女子達が、たくさん通う謎めいたマンションの一室の噂を知り、主人公がその謎に迫る――。最終的には悪の組織を暴き、同級生全員を助け出す壮大な感動ストーリーなのだが……。感動以上にエロい……。
――どんなに感動ストーリーを準備していても、露出の多い画像が出てきた時点で、エロゲーと総称され、誰もストーリーなど読まずに画像だけを楽しみにプレイしてしまうのだ。――思い出すだけでやばい!
――なんでそんなエロゲーのタイトルを、恥ずかしみもなく女子の前で声を大にして翔のバカは言えるのか――! なぜそれにより、この俺の方が顔を赤くしなくてはならんのか~!
マジでウゼーぜ!
でも、これだけは自慢したかった……。
「チートして全クリしてやった」
小さくガッツポーズを見せてやった……。
俺にかかれば、大抵のゲームはチートできるのさ。ニヤリ――。
「ま、ま、マジでか!」
机に顔を埋めるように、小声で話し合っていた。ヒソヒソ話ってやつだ。高校にもなって、男子二人がヒソヒソ話をしている姿は、周りの奴らにどう見られていたのかが、少し気になる……。
「ああ、なんなら全クリした画像データーかセーブデーターをメールに添付して送ってやろうか?」
「ええ! い、いや……、ああ、い、い……、ああ……」
おい翔! 変な声を出すな!
悶えているようにしか聞こえないだろうが~!
どうせ自分でクリアして、少しずつご褒美画像を見ていきたい欲望と……、
労せずに全ての褒美をかっさらいたい欲望とが戦っているのだろう……。
「欲しいのか、欲しくないのか!」
「ほ、ほ、欲しいっス!」
そう言うと思った。絶対に。単純なバカめ……。
「よーし。五百円な」
翔は……なんの躊躇もなく財布からお金を出して渡そうとする。……そこも痛い……。
「バーカ、冗談に決まってるだろ。金なんか取るかよ!」
「さ、さすが……親友!」
やれやれ。……ん? 親友って、もしかして俺の事を言ってるのか?
……このバカには……親友だとか、友達だとかって……あまり言わないで欲しい。
しかし……まさかとは思ったが、俺と翔の話を聞いていて……女子のくせにそのエロゲー、「同級生ショッピング」を知っていた奴がいたなんて……。