X リアリティーを求めたがため……
うっふんクス森ピクピクは恋愛シミュレーションゲームなどではなかった……。
教室に入ると、みんながざわついていた。いったいなにがあったのかは分からないが、フラれた直後の俺にしてみれば、もう、なにもかもがどうでも良かった……。
先生が……九条佑里香の突然の入院を告げるまで……。
「えー、知ってる人もいるかも知れないが、九条が入院した。二学期になっても、学校にはしばらく登校できない……かも知れない」
「ええー」
男子の残念がる声と、女子の不思議がる声が教室を占拠する。
「まあまあ、大した事じゃない。心配しなくていいからな。さあ、じゃあ今日も張り切って補習すっぞ~!」
俺の顔色は……真っ青になった――。
――これでは、ゲームと同じじゃないか――!
うっふんクス森ピクピクじゃないか――! もう、このタイトルにも笑っていられない――!
咄嗟に鵙美の方を向くが、驚きを隠しえない様子で、俺の視線に気付くと、目を逸らした――。
「先生! 九条さんの病気って、なんですか~?」
クラスの野次馬がそう聞くのだが、
「いやー、先生もよく知らないんだよお。九条のお母さんから病名は聞かされていないんだ。まあ、「心配しないでください……」って言ってたから、大した病気ではないさ。夏の牡蠣に当たったんじゃないか? 夏期だけに……なんちゃって~」
「「ハハハ!」」
「「先生マジクソウケる~!」」
「ワハハ、死ね!」
「コラコラー、先生に向かって「死ね」なって言っちゃいけないぞ~! いや、他の誰に向かっても「死ね」なんて言葉、使っちゃいけないぞ~!」
「「ハッハッハ―」」
「「ハッハッハ―……」」
全然面白くない――笑えないって――! みんなは知らないだけなんだ!
「――白血病ですか? 先生!」
思わずそう言って立ち上がってしまい、自分の問い掛けがおおよそ正しかったことを知ってしまった――。
「な、な? 違うに決まっているだろ! 急に何を言いだすんだ佐倉――! じゃあ、授業を始めるぞ」
急に焦る先生――。
最初は病名を知らないって言っていたのに! 先生だけは……やはり聞いて知っているんだ――。もしかすると……知っていたんだ――!
九条が白血病になって、二学期からは学校に来れなくなることを――!
――なんでこんなことになるんだ――。
昨日までの楽しかった夏休みが――、急に終わりを告げる――。
まさか、俺のせいなのか? 俺が、「高嶺の花」とか、「なんとか付き合いたい」とか、「野球部なんて無くなってしまえ~」なんて、本気で思ったその罰なのか――?
――いや、罰ならば……九条が受けるべきじゃない……。俺が受けるべきだなんだ……。
そして、そんな不幸を呼ぶような……、リアルなバッドエンドの恋愛シミュレーションゲームを作った、
鵙美だって裁かれるはずじゃないか――!
唇の下がピリピリとヤバさを感じ震え出す……。
現実のヤバさのリアリティーが、震えを感じさせる……。
うっふんクス森ピクピク――!
タイトルからは想像すらできない、呪いのゲームじゃないか――