Q 幼馴染には惹かれない?
ゲームに登場する幼馴染が、渡利春佳に似ている件について尋ねてみると……。
筋肉痛の足をさすりながら、次の日も、うっふんクス森ピクピクの開発に着手していた――。
「一人目のキャラ、幼馴染の日比野純菜って……なんか、普通科の渡利って女子に似てないか? あの、ツインテールしている……」
高校に入学して、大きなツインテールをしている女子なんて、春佳くらいしか見た覚えがない。
――そりゃあ、全校生徒を確認したわけじゃねえけど、昔から俺は、ツインテールで春佳の姿を探す癖がついていた。独特のヘヤースタイルは見つけやすい。便利だ。
「えーそんなの意識して描いてないよ。画像は全部私の妄想。120%オリジナルよ。……似ていると思うのは、ヒロ君の思い違いだよ。きっと」
「そうかなあ……」
「渡利……さんって、もしかして、ヒロ君のコレ?」
そう言って……中指を立てるのはやめて欲しい~! 指が違うだろ。外国人が見たらド叱りされっぞ。
……せめて小指だろ? もう突っ込む気力もない。
しかし、その鋭い鵙美の質問に……慌てない慌てない。落ち着いて答える。
「んなわけねーだお」
「ねーだお?」
クククッと笑いやがる――!
クソ~! なんか意識しているのを悟られるみたいで、メッチャ歯がいい~――!
だが鵙美は妄想で絵を描いているのか……。だったらすげえ想像力だ。すげえ無駄な能力だぜ。
「幼馴染って、やっぱ惹かれる?」
ちょっと上目遣いで……悪戯心をチラつかせて聞いてくる……。
「はあ? ――いや、俺は……惹かれないな。あんなの……小説やマンガだけの話だろ。あと、恋愛シミュレーションゲームとか……」
「本当に~?」
「あー!」
なんで勘ぐるんだよ?
いや、まてよ? なんか……やばいところでも見られていたか?
それとも……ただの嫉妬?
なんか……まとわりつくような鵙美の視線が面倒臭い~!
その下から目線――やめろって言いたい~!
「男って生き物は確か……遠くの美人よりも、近くのブスが好きになったりするのさ。だから遠距離恋愛とかをして、近くの子と浮気するのも男の方が多いんだと思うぜ」
あえてブスって言葉を使い、幼馴染を否定しようと試みたのだが……。
「じゃあ、近くの美人なんて――無敵じゃん」
「え?」
俺、そういう意味で言ったっけ?
「近くのブスでも好きになって告白しちゃうんでしょ? じゃあ、幼馴染が可愛かったら、絶対揺るがないわよね?」
「んん……」
思わず春佳の夏祭りの最後に見せた笑顔が脳裏によぎった。
雨に濡れた白いTシャツ……。記憶中枢から消え去ることは一生ないのだろう。
まさに――無敵……なのかもしれない……。
「うーん。これは手強いなあ……」
……。
ハッ! 今、鵙美はなんか言ったか?