1日目・オモテ 「右手」
登場人物
赤井 邦麻 (18) ♂
1年前にTrap Highschoolに入学し、そして脱出した。
今回、デジャヴに感じた手紙の真相を確かめるべく
またも地獄に来てしまった。
雨川 瀬奈 (16) ♀
とにかくまわりについていきたがる女の子。
経験者ではあるが、運が良く生き残ったような人間なので
誰かと一緒にいないと気がすまない。
紫城 奏 (18) ♂
紫城 舜の兄。舜が死んでしまった学校というのがどんなものか、
また仇を討ってやりたいという気持ちからやってきた。
舜と同じく探偵的な考えに長けており、
俺は簡単には死ぬつもりはないと言っている。
曇野 沙月 (18) ♀
気高さを感じられる女の子。
頭がずば抜けて良いのだが、人を見下すような態度が特徴的。
委員長をつとめていたのもあり、みんなをまとめようとするが
祐太と対立することが多々見られる。
赤井:
雨川:
紫城:
曇野:
『』は心の声です
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曇野 「早く起きてしまったか……6時…20分…寝なおすわけにもいかないな」
赤井 「…! 早いな、曇野」
曇野 「…? あぁ、おはよう。赤井」
赤井 「曇野も早く起きちまったのか?」
曇野 「まぁ…そういうことだ。赤井、私は曇野という苗字をあまり気に入っていないんだ。下の名前で呼んでくれ」
赤井 「…あぁ。わかった、沙月か」
曇野 「そうしてくれ………。ここに来た8人は皆…卒業生みたいだな」
赤井 「…らしいな、だから2年生以上しかいない」
曇野 「いくら生き延びた人間だからとはいえ、またも………」
赤井 「沙月のとこでは、何人いたんだよ」
曇野 「私を含めて5人だった、1週間しかない期間、開始3日で4人が死んだ」
赤井 「そう……か。お前は生き延びたんだな」
曇野 「あぁ…。運が良かったのもあるだろう、だが……それ以上に私は共に入った者達よりウン倍冷静でいたつもりだったからな」
赤井 「冷静さが生き死にを決めるって言っても過言じゃないからな、ここは」
曇野 「言っておくが、私は自分の身の為ならたとえ仲間でも切る覚悟はできているからな」
赤井 「きっと、心配ねぇよ」
曇野 「何がだ?」
赤井 「もう、誰も死ぬとこなんて見たくないだろ」
紫城 「雨川」
雨川 「ふぁっ!? ゆ…紫城センパイ……どうしたんですか?」
紫城 「どうして赤井達の会話をこそこそ聞いてるんだ、出て行ってお前も混ざればいいだろう?」
雨川 「そ…その……私は…みなさんみたいに頭がキレるようなタイプじゃなくて……私が卒業できたのも……一緒にいたメンバーのおかげで…」
紫城 「だから、お荷物になる。って言いたいのか?」
雨川 「はい……。実際私は何もできません……」
紫城 「死にたく、ないんだろう?」
雨川 「もちろんです……私はまだ死にたくありません……」
紫城 「なら、なんとか頑張るしかない。お前は思い知ったんだろう? 最終生き残るのは頭が良い人間でも運動能力が高い人間でもない、生きたいと思う気持ちを保つことが必要だと」
雨川 「は…はい……」
紫城 「それに。腐っても一度は生き抜いた奴らだ、前回の様に次々と死ぬなんて事は考えにくい。もちろん、お前もだ」
曇野 「これで揃ったか」
紫城 「あぁ、全員だな」
赤井 「大丈夫か雨川? 顔色が悪いぞ」
雨川 「だ…大丈夫です……ちょっとまだここの空気に慣れてないだけで…」
曇野 「無理をするなよ、変に無理をするとかえって迷惑をかけることもある」
紫城 「……じき7時だ。みんな腕輪をつけろ」
赤井 「おい…本当に大丈夫か、雨川?」
雨川 「は…い…はぁっ…はぁっ……」(辛そうに)
曇野 「顔も赤い、熱もある。仮病というわけでもなさそうだ。雨川、お前は今日は休んでいろ」
雨川 「ご…ごめんなさい……迷惑をおかけ…して…」
紫城 「腕輪をつけるんだったな……っ……なんだ…?」(一瞬痛がるように)
赤井 「ツンと来たな…なんだ…?」
曇野 「静電気か何かだろう、行くぞ」
紫城 「ここが……校内か」
赤井 「みたい…だな…。前のとことはまた全然違うつくりになってやがる…」
曇野 「今回私たちにフロアマップなどは無い。普通以上に警戒せねばならない」
紫城 「……3つの道に分かれているな」
赤井 「……左から、行かないか?」
曇野 「何故?」
赤井 「俺が抜けた…前の学校は左にトラップの制御室があったから…って思っただけだ」
紫城 「…なるほどな、俺は前回が無いから何とも言えないが…」
曇野 「よかろう、左から行こう」
赤井 「よし…決まりだな………。……………職員室……だとよ」
曇野 「……入ってみよう」
紫城 「……明かりは………ここか………? 扉が…閉まった…」
曇野 「閉じ込められたか………」
赤井 「電気を消せば……開くんじゃないか…? ん…? 何かドアに書いてるぞ……F6……C3…? まぁ…いい…くそっ、開かない!」
曇野 「どうやら…私たちの知識では足りないつくりの様だな…」
紫城 「しかし……あまりに……デスクが多すぎないか…? 職員室なのに異常な広さだ」
赤井 「そう簡単に出してくれない……てなると……!? おい…」
紫城 「どうした……っ!? これは……人間の腕…か…!?」
曇野 「っ…! み…見せるな……!」
赤井 「デスクの引き出しに挟まってやがる……うぇぇっ……」
紫城 「つまり……引き出しの中の何かを探しているという事か……?」
曇野 「だとしたら何を…探すというのだ……!」
赤井 「引き出しの中に……職員室を出るための何かがあるんだ……」
紫城 「あそこのホワイトボード……何か書いてあるぞ」
曇野 「………田荘H8…東條…B2……」
赤井 「なんだよ…それ…」
紫城 「俺にもわからん……どういう意味だ……」
曇野 「田荘に、東條。誰かの名字だろう…? ここの職員室の何かのヒントじゃないのか…?」
赤井 「おい……東條ってこれか…?」
紫城 「本当だな…デスク1つ1つに名札が立ててあるな……」
曇野 「引き出しの中に……何かがあるって事か……?」
紫城 「……これは……スイッチだ……」
赤井 「押したら……どう…なるんだ……?」
曇野 「わからん……」
赤井 「……俺が……押す………」
曇野 「おい…まて赤井…!」
紫城 「そうだ、まだ時間はある…!」
赤井 「いや………まだまだ探索しなきゃいけないってのに……こんなところで止まってなんかいられないだろ……! ……あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ熱い! 熱い゛! ぐぅぅうあ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
曇野 「赤井! どうした! しっかりしろ! …! これは……!」
赤井 「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! う゛ぅぅっぉぉっぁぁぁぁぁ…! あ゛あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
紫城 「早く手を離せ! ……皮膚が…離れない……!? 許せ、赤井! くっ」
赤井 「ぎゃあ゛ゥァァァァァァァァァァッ!」
雨川 「すこし…熱…マシになったかな………センパイ達…行っちゃったのか……私も…行かないとだよね……? 赤井センパイの声……?」
赤井 「ぅ…ゥ……ァ……ぐ……ァ…」
曇野 「お…おい…! 赤井…!」
紫城 「大丈夫…とは言えないが……失神してるだけだ……こんな言い方もなんだが…死んではいない……」
曇野 「一体何があったんだ…!」
紫城 「罠だ……。赤井がスイッチを押した瞬間引き出しに何かが流れ込んできた…。恐らく…硫酸、塩酸だとか…その類だ」
曇野 「何だ…と……・?」
紫城 「右の手のひらが溶けて…皮膚が張り付いてたのを……赤井には悪いが…無理やり引きちぎった……。あのままだったら、どこまでも溶けていただろう」
曇野 「……酷過ぎる……なんなんだ…これは……!」
紫城 「………あのホワイトボードに書かれたのが…罠なのかもしれないが……貴重な情報でもある……、赤井が目覚めるまでにはなんとかここを脱出する方法を見つけないとだ…」
曇野 「そう…だ…な……あ…れ………なんだ…か……頭が……」
紫城 「大丈夫か、どん…の……なんだ……俺も……くっ…ぅ…ぁっ……」
雨川 「もう21時……センパイ達…どうしてこんなに遅いんだろう……? まさか……私を置いて……脱出…なわけ…ないもんね…赤部屋の人たちはいるだろうし……うん………」
赤井 「……ぅ…っ…痛ェ…………体が…動か…ねぇ……」
曇野 「ぅ…っ…あ…」
紫城 「……ん……っ……」
雨川 「もうすぐ日付が変わっちゃうよ!? おかしいよ…! このまま帰ってこなかったら……処刑人とかいう……何かに…センパイ達が……! 23時56分!? どうしよう…! どうしようどうしようどうしよう…! はっ……赤部屋の………赤部屋のみんなに…知らせないと……!」
終
1日目・オモテ 「右手」