7 うそつき
ゴッコの手を握って、視聴覚準備室から廊下へと飛び出し、勢いよく走る。
「ねぇ!ホタルンは!ユキリンは!!」
「ここは4階だ!しかも、あの真下はコンクリートで、助かる余地はない!!」
叫ぶように話しながら、急いで階段を駆け下りる。
早くしないと、殺される。
早くしないと、七不思議に、殺される。
突然、握っていた手の感触がなくなった。
振り返ると、ゴッコが俺の手を振り払っていた。
「……なんだよ突然。早く逃げないと、殺され「おかしいよ」……は?」
「今日のホーリー、おかしいよ。……思えば、最初っから、おかしかった。だ、だって、ホーリーの“裏切り者”っていう発言でトキリンが死んだのに、それを悔やむ言葉も出てこない。……責任感の強い君なら、絶対に言うはずなのに」
「……思ってたさ。でも、口に出したら皆が不安がるだろ。俺は、皆のリーダー的存在なんだから」
そういうと、ゴッコは睨みつけるような目で俺を見てきた。
「それもそうだ。ホーリーは、自分をリーダーだって言わない。……君は、誰なの?」
「…………」
そんなことを言われたって、俺に言えることなんて、何もない。
証明なんて、できるのか。
「……じゃあさ。皆の名前、言ってみてよ。君が本当にホーリーなら、言えるでしょ……?」
「…………」
そう言われて、俺は、小さな声で、言い始めた。
……こんなことをしなくても、結果なんて、俺が一番知ってる。
だって、俺は。
「……要。良介。三樹。一樹。花音。和子。そして……」
「……」
「…………」
だって俺は。
偽物だ。
「……常磐 要。通称トキリン。後光 良介。通称ゴッコ。黒島 三樹。通称クー。黒島 一樹。通称シー。蛍原 花音。通称ホタルン。雪野 和子。通称ユキリン。そして……堀内 祥太。通称、ホーリーだよ」
そういってゴッコは、俺を、敵として見つめた。
「……僕さ、生まれつき霊感があって、だからこんなに怖がりなんだ。……今日、ここに来た時から、ずっとホーリーから変な感じがしてた。……最初から、入れ替わってたんだよね?あの、七不思議みたいに」
「……そうだ。俺が、七不思議の1つだ」
そういって、俺は1歩近づく。
それと同時に、良介が1歩下がる。
「俺は、今までも、ここに入り込もうとするやつらを止めようと、誰かと入れ替わって警告してきた。……けど、結局皆聞いてくれなくて、今まで、救えたやつは1人もいない。……お前、だけなんだ。ここまで生き残ったのは」
そういって俺が外を見ると、空がゆっくりと明るくなってきていた。
「ここに、俺とゴッコが音楽室に行った時に拾った鍵がある。これで、昇降口を開けて、ここから逃げ出してくれ。ここの奴らは、学校からは出られないし、朝日が昇れば、もう手出しができなくなる。……頼む。お前だけでも、生き残ってくれ」
「……どうして君は、そんなに僕を助けようとするの?」
「……恩返し、かな」
そういったところで、死体愛好家の少年の足音が聞こえてきた。
その音を聞いて、俺は鍵を無理やり良介に押し付け、昇降口の方へと、背中を押した。
こちらを振り返って見つめる良介に、早くいけと手で示すと、階段をおりていった。




