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6 一緒に


 廊下に出ると、廊下の窓から向こう側の校舎の上の階が、明るくなっているのが見えた。

 どうしてあんなところにと思いながら、俺とゴッコは急ぎ足で渡り廊下を渡っていく。

 明るくなっている部屋のところまでくると、そこは、視聴覚室だった。


 そのまま中へ入ろうとするゴッコを止め、隣の視聴覚準備室へと入る。

 ホタルンを助けたいのはやまやまだが、ここは七不思議の場所だ。

 もう、どっちかが七不思議の現象にあっている可能性も高いから、様子を見てから入ったほうがいい。


 ……けど、この七不思議は、心を強く持っていれば、死ぬことはないはずだ。

 だから、隙を見て助けよう。

 そうゴッコに伝えると、ゴッコも納得したように頷いてくれたため、俺は、視聴覚室へ通じる扉の上部分にある小さな小窓から、視聴覚室を覗いた。


「ねぇ、花音ちゃんはさぁ……いいよね。皆に愛されて。好かれて」

「急になんだよ。あたしの携帯勝手に奪って……ずっと黙り込んでたと思ったら、よくわかんないことを……」

「よくわかんないことじゃないわ。だって、あなたが一番理解しているはずだもの」


 そう言うと同時に、真っ暗な部屋の中、スクリーンに映されていた砂嵐が変わり、どこかの映像が映し出される。

 そこには、ホタルンに似た子供がいた。

 その子供は、見るからに両親に、友達に、好かれていた。


「可愛くて、成績も良くて、性格も明るくて、両親からは愛されて、友達には好かれて……。地味で根暗だって言われてた私とは、大違い」


 その言葉と同時に映像が切り替わり、今度は、意地悪そうな顔をした少女が、こちらに向けて蹴ったり殴ったり、水をかけたりしてきた。

 ……これはもしかして、ユキリンの記憶なのだろうか。


「他の子達から、近寄るななんて言われた。でも、花音ちゃんは私の憧れで、少しでも近づきたくて……だから私は、三つ編みだった髪の毛も下ろして、眼鏡もコンタクトにして、頑張って明るくしゃべるようにした」

「……確かに、ユキリンは、和子は変わった。可愛くなった。……でも、そんな和子にならなくたって、和子を好きだったやつはちゃんと……!」

「ううん。いないの」


 そういってユキリンは、2人の男女の姿を映し出した。

 その男女は、言い争いをしていた。


「私、間違って出来た子なの。本当は、生まれる予定もなかった。……けど、お父さんとお母さんが言い争っている途中で、生まれた。予定日よりも大分早かったみたい。……望んで、生まれた子じゃないの」

「でも、和子の両親はあんなに……!」

「仲がいいって言うつもり?……そんなの、ただの仮初。私が中学を卒業した頃から、2人とも家に殆どいなくなったし、2人とも、別の家族を外に作ってる。どれだけ私を見て欲しいって思っても、2人は私を見てくれない。自分しか、見えてない」


 映像がまた変わり、再びホタルンが、今度は成長した姿で出てきた。


「……花音ちゃんは、いいよね。こんなに可愛い名前を貰って。きっと、大切に考えられた名前。私の名前は、適当に付けられた名前。……それに、花音ちゃんが不良になっても、花音ちゃんを悪く言う人はいなかった。お父さんとお母さんも、見捨てなかった。……私は、どれだけ頑張っても、認められないのに」

「……あたしらは。じゃあ、あたしらは一体、和子にとってなんだったんだよ!!」

「とっても、大切な仲間で、お友達。……でも、私たちの関係は“好き”なんてものじゃなかった。……私には、重すぎた。確かに、大切。でも、私が本当に望むものじゃ、なかったの」


 その言葉と同時に、映像が途切れる。

 真っ暗闇が、あたりを包む。


「……あたしは、和子が言うほど、立派な存在じゃない。和子は優しいけど、あたしは短気で。和子は努力家だけど、あたしは飽き性で。……あたしは、元々あっただけ。でも、それ以外のものを手に入れる方法が、わからなかった。けど、和子は、自分にないものをどんどん探して、手に入れてって……。あたしは、和子が、わこが、羨ましかった」

「……私も。私も、花音ちゃんが、のんちゃんが、羨ましかった」


 そういって2人は、抱きしめあった。

 それと同時に飛び出そうとするゴッコを、必死に抑えた。





「だから、一緒に死の?」





 胸の真ん中を、2人は貫かれた。

 後ろからやってきた、七不思議の1人によって。


「え……?」


 2人を貫いたものが引き抜かれ、それと同時に、和子が花音を窓の方へと突き飛ばす。

 よろめきながら窓枠にもたれかかった花音は、口から血を吐いた。

 そのあとを追うように、和子も窓へとゆっくり近寄っていく。


 そんな2人に手を伸ばした七不思議の1人……真っ黒焦げの人の姿をした、実験室の死体愛好家であろう少年。

 窓枠にもたれかかった花音のもとまでたどり着いた和子は、少年の方へと向き、そして、口から血を吐きながらも、まるで、お前なんかにやるものかとでもいうかのように舌を出してから。


 窓から、2人とも落ちていった。


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