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「おせーよ」

「悪い悪い。ちょっと見つからなくって」

「見つからない?別に普通のアイス……って、トキリンだけ高いアイスじゃん!裏切り者ー!!」

「あはは。ちゃんと皆の分買ってるし、俺はこれ、自分の財布から出してるんだから、別にいいでしょ?」


 早くアイスが食べたくて苛立っているホタルンと、一人だけ高くて旨いアイスを買ったトキリンに不満を抱く俺の前に、トキリンから買ってきたアイスが差し出される。

 それを受け取って袋を破き、中のアイスを口に含むと、冷たさで不満が消えていった。

 まぁ、長い付き合いだから、俺のあしらい方をトキリンがわかってるっていうのもあるけど。

 そんなことを考えながら、校門の前でシーとクーを待つ。


「一番張り切ってたのに、2人共遅いわね」

「あの2人のことだ。楽しみ過ぎて何も準備してなくて、ごちゃごちゃやってんだろ」

「確かに。あの2人ならありそうね」

「……そのせいで待ってる間暑いからって、俺がアイスを買いに行かせられたんだけどね」

「それはじゃんけんに負けたお前が悪いだろ」


 ユキリンとホタルンがしゃべっているところに、トキリンの愚痴が入ってくる。

 その愚痴に真実を返すと、トキリンがうなだれ、笑いが広がる。

 そんな風に笑っていると、向こうから2人の姿が見えた。


「「ごめーん」」

「クーの着替えが遅くって」

「はぁ?シーだって、鍵どっかやったーとかいって騒いでたくせに」

「なんだよ。そっちだって……」

「お前らうっせーよ。ちょっと落ち着け」


 2人が互いに責任転嫁し始めたのを見て、面倒くさそうにホタルンが会話に割って入り、2人の口に、さっきトキリンが買ってきたアイスを突っ込んだ。

 言い争っていた2人は、口に入れられたアイスの冷たさに目を輝かせて、一心不乱に食べ始める。

 それを食べ終わる頃には、満足そうな顔をして、2人して笑っていた。


「よっし!じゃあ」

「七不思議探しに」

「「しゅっぱーっつ!!」」


 2人が出発を遅らせていたっていうのに、切り替えが早い奴らだななんて思いながら、皆で笑いながらあとをついていく。


「ま、待って!」


 突然、ゴッコが俺たちに静止の声をかけた。

 意気揚々と向かおうとしていた2人は、不満そうに、後ろの方にいたゴッコへと顔を向けた。


「「何?」」

「や、やっぱりやめようよ……。夜の学校なんて危険だし、それに……なんだか、嫌な予感がするんだ……」

「ここまで来てやめる?」

「そんなの、出来るわけないし、するはずもないじゃん」

「「ほら、行くよ!」」

「わ、ま、ま、待ってって……っ!!」


 ゴッコが、2人に両腕を掴まれて引きずられるように学校の方へ連れて行かれる。

 その姿を、用意していた懐中電灯で照らしながら追いかける。


 突然、懐中電灯の光が消えた。


 ……けれど、それも一瞬のことで、すぐに元に戻った。

 そして俺は、くるりと後ろを振り返って、先にいる3人以外の奴らに言った。


「やっぱ危険だ。あの3人は俺が連れて帰るから、3人は先に帰っててくれ」

「……急にどういう心変わりだ?さっきまでしょうがないなって感じだったくせに」

「そうは言っても、3人をホーリー1人に任せるわけにはいかないよ」

「ホタルンとトキリンの言うとおりよ。急にどうしちゃったの?」


 心配そうにいう3人に、俺はもう一度、帰るように言う。


「俺1人でも大丈夫だし、大人数の方が逆に……「うわぁぁあああああ!!」……っ!」


 突然聞こえた悲鳴に、俺たちは急いで先にいる3人がいる昇降口へと向かった。

 そこには、体育館の方へと走っていく背中と、面白そうに顔を見合わせて笑う双子がいた。


「ゴッコったら、ちょーっと後ろから脅かしただけなのに」

「うわぁぁあああああ!なんて悲鳴あげて」

「「ほんとに怖がりだよねー」」


 そう言ってクスクス笑う双子の後ろに、トキリンが立ち、2人に拳骨をした。

 痛そうに呻く双子に、トキリンが怒る。


「シー。クー。流石にやりすぎだよ。ゴッコが怖がりなのは知ってるでしょ?」

「……でも、シーが」

「……だって、クーが」

「でももだってもなし。それにこんな暗い場所で怖がらせて、びっくりしてゴッコが走りだしちゃったでしょ。今、ゴッコは危険な暗闇の中で1人なんだ。2人が無理に怖がらせなければ、1人になることなんかなかったのに。これでゴッコが怪我したら、どうするの?」

「「……ごめんなさい」」

「それはゴッコに言おうね」


 そういったシーとクーの言葉に満足げに頷いたトキリンは、クーの頭を撫でてから、俺の隣へと戻ってきた。

 隣に来たトキリンに、俺は思ったことを口に出した。


「……まるで、母親みたいだな」

「そうかな。まぁ、あの2人は、この中で一番やんちゃだからね。お前は、責任感が強いくて皆を引っ張ってくのが上手いけど、それもあって色々大変だし、これくらいは俺がやらなくちゃね。……クーに母親だって思われてたら、ちょっと悲しいけど」


 その言葉に、俺は目を丸くしてトキリンを見た。

 そんな風に思ってるようには全然見えなかったけど……もしかして。


「お前、クーが好きなのか?」

「あれ、言ってなかったっけ。というか、結構わかりやすいと思ってたんだけど、そんなことなかった?」

「いや……全然気がつかなかった」

「そうなんだ。……うん。あたりだよ。僕は彼女が好きだよ」


 そんなトキリンの言葉と同時に、何もしゃべることがなくなる。

 恋愛関連の話は聞かれたくないだろうからと、俺らは最後尾の少し離れたところで話していたから、周りには誰もいない。


「……まぁ、頑張れよ。応援してる」


 なんだか気恥ずかしくなって、俺は走り出す。

 まさかこんなところで、こんな気恥ずかしい思いをするだなんて思わなかった……。


「……うん。ありがとう」


 嬉しそうなあいつの声は、聞こえないふりをした。


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