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~ある自戒の手記~

 私は軽率だった。つい色々と話していまった。運び屋は運び屋であって、それ以上でもそれ以下でもない。わかっていた筈なのに……。

 言葉の魔力は恐ろしい。私の心は運び屋から聞かされる都合のよい言葉にのせられ、甘い言葉に侵されて、心の在り所が変わってしまった。

 望んでいなかったわけではない。でも、こんな関係にならなくてもよかった。嫌われてしまわなければ、それで十分だった。勿論、彼の人と私の関係が変わったこと自体に、多少の不安はあっても後悔はない。2人の関係は良好だと言っていいだろう。いいや。「私が彼の人を好きである」そのことだけが重要事項。彼の人の行動はその次。別に私自身がどういう扱いを受けるかということは大した問題ではないのだ。それなのに……。

 私の心は変わってしまった。歪められ、元来心配性な私の心は関係が変わる前は気にも留めなかったことすら気にするようになっていた。



 その日、運び屋が零した言葉は、私の心を後悔という大きな闇に突き落とした。

「あぁ、言わなければよかった」と。

 運び屋は運び屋でしかない。しかも、ただ運ぶだけでなくもう一歩踏み込むことが出来るようになるかもしれない機会を何度も与えられているのにも関わらず、その全てを最終的に無かったことにしてしまっている。

 私は努力の人ではない。「もっと高位の存在になりたい」という願望は無いし、もしなりたいと願ったとしても誰かに導いてほしいとは思わない。そんな私とは違い、運び屋は師となりえる人物に何人も会っているというのに、その方々の言葉を無駄にする。

 そんな運び屋の発する言葉は聞くに価しない。運んでいる品の動きの話以外はたわいもない世間話同然なのだ。


 私は目が覚めた。しかし、運び屋とは今後も交流が続くのが何となくわかる。また甘言に唆かされ、話す必要のないことも話すように誘導されるかもしれない。そんな時の自分への戒めとして、この文は残しておこう。





 アイツはそんなだから、ただの運び屋なのだ。運んでいる品は本来、その物以外にももっと多くのモノを手渡す相手に渡すことが出来る筈なのに、それが出来ない。運び屋はそういう人間なのだ。それを心に深く刻んでおかなければいけない。

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