~壊れたオルゴール~
私は檻の中の檻に住んでいる。
私の檻の外には猛獣が3頭、それぞれ暮らしている。
どこかに出かける時には、猛獣の側を通らなくてはならない。
でも、吠えられたり噛まれたりするのが怖くて、なかなかその一歩が踏み出せない。本当の外に出たい、出なきゃいけない用事があるのに「さぁ、行くぞ」と思ったのに、身体が動いてくれない。
今も私はこれを書きながら猛獣の動向を耳で探っている。
帰る時も大変。
私の檻に帰るには、猛獣のすみかを抜けなくてはならない。
昨日は、私には理解できない理由で噛みつかれた。
モヤモヤ、ぐるぐる……。眠れなくて今日は寝不足だ。
機嫌のいい時は、大丈夫なんだ。そういう時はきちんと話が出来るから。
ただ、それを探りながら暮らすのは疲れたんだ。
私の考えを話すと「お金がかかるから」と止める者がいる。
わかっているよ。檻を出た先の次に住む場所も、心安まる家ではなく、檻かもしれない。それでも、それでも夢を見るくらい、いいだろう?
疲れたんだ。少し彼らと距離を置きたいんだ……。
彼らを猛獣と呼ぶのは間違えだと言う者がいるだろう。むしろ、そんなことを言う私の方が病んでいるという者もいるだろう。
そうさ、私は狂っている。これからも狂い続けて、壊れてゆくのだ。
そして、それすらも普通のことだと思う日が来るのだろう。




