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レイライン~失われた迷宮の扉~というゲームがある。
乙女ゲーとRPGが混ざったようなそれは、魔王を倒すため聖女を現代の日本から召喚するところから始まる。
召喚された聖女でゲームをスタートさせれば乙女ゲールートになり、魔王を倒しながら殿下との恋を発展させる。召喚した側のキャラを選択すればRPGをメインにゲームを進められ殿下との恋愛関係のエピソードは殆どなくなるというゲームだった。
ただし乙女ゲールートの場合、殿下との恋愛イベをクリアしないと魔王を倒せない。
レベルをカンストしようが、貴重なアイテムを駆使して闘おうが魔王に負けてバッドエンドになるし、イベを全部クリアし高感度MAXにした場合レベル上げを殆どしていなくても魔王を一撃で倒せてしまうとう無茶苦茶なゲームだったけれど、RPGルートを選択した場合は普通に楽しめるゲームだった。
ちなみにRPGの場合聖女と殿下はいつのまにか上手くいっていてゲームのエンドロールで二人の結婚式のシーンが流れる。乙女ゲーにはなぜかこのシーンが無いのがネットで話題になっていた。良くわからないゲームだ。
「あの儀式の間はゲームそのまんまだったな。違うのは私が召喚される側だったって事だけだわ」
私が選んだのは女魔法戦士オリビアだった。
オリビアは殿下の部下の幼馴染という設定で一緒に魔王討伐に向かう事になっている。
その為召喚の儀式にも立ち会い聖女を殿下と共に出迎えるのだ。
だけど、オリビアはあの間に姿がなく代わりに私がオリビアの恰好で召喚された。
理由は分からないけれど、聖女の実羽菜が召喚される時一緒にいたのが悪かったのかもしれない。
「それにしても、オリビア。よりによってオリビア」
基本が乙女ゲーなので女性キャラが聖女とこの女魔法戦士ともう一人しかいなく、RPGを女性キャラでやろうとするとオリビアかもう一人の女性キャラ、魔法使いのニコラを選ぶしかなかったから仕方なくオリビアを選んでいたのだけど、実際に自分がこの世界に来ることが分かっていたら見た目が好みじゃなくてもニコラを選べばよかった。
「オリビアの戦い方……こっちの世界でも同じだよねえ」
アイテムウィンドウに出ていた炎の舞扇、氷の扇子がオリビアの武器だった。
元踊り子の設定のオリビアは扇を武器に戦うのだ。
炎の舞とか秘儀氷上の円舞とか、リアルでみたら恥ずかしい技がある。
ゲーム設定通り儀式の間から現代に戻る為には十年待たなきゃいけないとしたらその間私はオリビアの様に魔獣と戦って暮らさないといけないのに。これはかなり辛い。
ゲームでは技の名前を叫んでいたけど、まさかここでそれは無いよねえ? と信じたい。
「……考えながら歩いていたけど、こっちで方向あってるんだよねえ」
儀式の間がある神殿の裏庭からの抜け穴ルートを、ゲームで使うのは中盤の一回だけ。
カーソンの部下の裏切りで神殿の奥に閉じ込められた聖女を救う為、この抜け道を使うのだ。
「ええと、出口近くには階段があるはず」
出口は街の外れの使われていない教会の中にあったから、人目は気にしなくていいし寝床にも利用できると思う。
少し危険だけど、殿下達はこの抜け穴を知らない筈だから何日か泊まる位はしても問題ないかもしれない。
かなり怖いけど。知らない街で使えるかどうか分からないお金を持って夜に移動なんてリスキーすぎる。