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 ゲームのキャラなのに現実に会えるかもしれないと考えただけで、なんだかドキドキしてしまった。 

 ランドンは一番好きなキャラだった。

 性格が好みだったし見た目も好み。

 聖女と殿下以外の組み合わせで恋愛ルートは発生しない事は分かっていたけれど、色んなところに隠しエピソードがあるゲームだったから、もしかしたら……の期待を捨てきれずゲームを何度もクリアした。

 だけどゲームをクリアしてもクリアしても恋愛ルートは見つからない、それでもあきらめきれずに何度もゲームを読み込んだ。

 私のレベルも持っているアイテムも、すべて動くランドンを見たいというそれだけの理由で溜まっていた様なものだったのだ。


「そのうち会えるかもしれないけど、殿下から逃げるならランドンにも会わない方がいいんじゃないかしら」

「そうだね」

 

 折角生きているランドンと話が出来るかもしれないのに、私は聖女じゃないからランドンに近寄る理由がないんだ。

 それを自覚した途端、疲れを急に感じた。


「もう寝ようか。明日活動始める為に」

「そうだね。あ、でも」

「寝袋もあるよ。たしか、毛布とか布団とかベッドとか」


 フィールドで夜を越す為のテントや毛布がアイテムで存在しているから、当然その手の道具も沢山持っている。

 テントだけだとステータス全部は回復はしないけど、テントと一緒に毛布や布団を使うと状態異常やMPも回復するのだ。


「さすがだね。梢ちゃん」

「任せて。伊達にレベルカンストしてないし」


 空しい自慢をしながら、ほこりっぽい床の上にテントを出して布団を敷いた。

 リアルで見ると変な感じだ。

 教会の建物の中にテント。間抜けだ。


「取りあえず寝て、明日頑張ろう」

「そうだね。梢ちゃん。こんな時だけど梢ちゃんが一緒で良かった」

「……私も、美羽菜が一緒で良かった」


 召喚されて元の世界に帰れる保証はゼロに近いけど。それでも一人じゃないから、泣かずに済んでいる。

 美羽菜の存在は心底有難かった。


「おやすみ」

「おやすみなさい」


 瞼を閉じると眠りはすぐに訪れた。

 目が覚めたら、向こうの世界に戻ってるといいな。かすかな望みを胸に私たちは眠りについたのだった。




「街だね、梢ちゃん」

「本当だ。街だ」


 次の日の朝、おのぼりさんよろしく私と美羽菜は教会から一番近い街に出掛けてみた。

 教会から近いということは儀式の間のあったあの場所からもそう遠くないという事だけど、儀式の間のあったあの建物と教会の間のある街の隣には大きな森があり、森の真ん中にはなぜか大きな川流れていて渡る事が出来ない。

 だからゲームではこの街に来られるのは抜け穴を見つけてからになるのだ。

 抜け穴と隠し通路の存在を知らない殿下達が探すなら小さな街と森だろう。森を抜けるには魔獣を倒しながら進まなければいけないし、今の段階では殿下が自由に動かせる人間も限られている筈だから大掛かりな捜索は出来ない筈だ。

なんて甘い考えを持ちながら、街に立ち寄る理由はもう一つあった。

 自由都市ナサニエル。それがこの街の名前だ。

 ナサニエルから東側に森(儀式の間がある方角はこっち)があり、西側に行くと砂漠がある。北側は山と考えると交通の便が悪いように思うけど南側は海で港があるから様々な人が行き交っていて私達の様なもろ日本人の顔でもそんなには目立たない筈と考えたのだ。

 念の為、私はフードをかぶり、美羽菜は髪を束ねて頭をスカーフで覆っている。美羽菜の装備は砂漠の向こうにある街、エレミヤの道具屋で買った装備に変えた。

 聖女の装備ではなくエレミヤ風の旅人の服だから防御力はかなり低い、落ちてしまった防御力は上級マントを羽織ることでカバーした。

 聖女の恰好は目立ちすぎるから、街の様子を把握するまでは擬態していた方がいい。

 ちなみに私の方は昨日と同じ。魔術を操る冒険者は大抵こんな恰好なので目立たない筈だった。



「取りあえずお金は使えたね」

「うん。よかった」


 この世界の通貨はどの国も共通で使える。そのあたりはさすがゲーム仕様といったところだ。

 銅貨一枚でパンが10個買えたから、向こうの千円ぐらいの価値があるんだろうか?

 そのあたりはゲームと少し違うようだった。


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