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 やっとグラタンとパンを食べ終えて、美羽菜はご馳走様と言いながら手を合わせる。


「魔王を倒しても、十年は戻れない。その間向こうの世界はどうなってるんだろうね」

「ゲームではどうなの? 魔王を倒した後知ってる?」

「聖女ルートも他キャラも魔王を倒すと聖女は殿下と結婚するから元の世界には帰らない。元の世界がどうなってるとかの説明もない」

「そうなんだ。むこうの世界に未練はないけど、このままここで暮らすのも微妙な気がするなあ」

「未練ないの」


 以外だ。美羽菜は帰れないと知ったら泣くんじゃないかと思ってた。

 あれ、私美羽菜の事知ってる様で知らなかったのかな。


「全くないとは言えないけど、今すぐ帰れなくてもいいと思ってる。梢ちゃんは今すぐ帰りたい?」

「私は……どうだろ。行方不明になってたら嫌だな。帰りたいかどうかは今はまだ分からない。この世界でちゃんと生きていけるかどうか自信ないし」

「ゲームの設定のままなら私は生きていけそうな気がするわ。魔獣を倒して冒険者として生きるの。殿下と結婚しなくていいなら魔王退治に協力してもいいし」


 呑気な事を言う美羽菜に私はため息をつきながら返事を返す。


「美羽菜はそれでいいだろうけど、私は殺されちゃうよ」

「あ、そうか。じゃあ逃げちゃおう。殿下に見つからない様に、遠くの街に行きましょう。エルフの森とかどう?」

「エルフの森はまずエルフと仲良くなる必要があるよ。難しいんじゃないの」

「そうか。取りあえずここから一番近い冒険者ギルドに登録して身分証を作らないとね」


 地図を取り出しテーブルに広げる。

 文字は読めるみたいだ。

 地図に書いてある言葉は日本語じゃないけど、意味が分かる。良かった。


「うん。登録できるかなあ。美羽菜の職業どうするの?」

「うーん。神官見習いじゃ登録難しいかな。私が使えるのって光魔法と治癒魔法位だよ」

「でも私が攻撃魔法使えるから大丈夫よ。美羽菜の武器も強いの持ってるから、そっち使えば美羽菜の通常攻撃でも結構いけると思うし」


 武器ならまかせろ、売るほどあるぞとアイテムウィンドウを見せたら美羽菜は心底羨ましそうな顔をした。

 この顔を見ただけで美羽菜がゲームでどれだけ苦労していたか分かる。

 聖女ルートはお金使う必要もあんまりないから、基本溜まらない様に出来てるんだよねえ。恋愛イベクリアすれば必要な武器は手に入るんだけど、フラグをことごとくへし折ってきたらしい美羽菜にはそのチャンスも無かったんだろう。自業自得とはいえ気の毒な話だ。


「そう言えばさあ。美羽菜はランドンに会った?」

「あ、会ったよ。殿下に魔王の話を聞いた後部屋を出たらランドンさんがいたの」

「そう……なんだ」


 オリビアの幼馴染で殿下の部下といっても騎士ではなく、オリビアと一緒に冒険者をやりつつ殿下の部下もやっているという設定のランドンは儀式の間に居なかった。

 ゲームでは所用で遅れ、殿下が聖女に魔王について説明した後部屋の外に居るオリビアに声を掛けてきて合流するという設定だった。

 オリビアである私はそのころカーソンと一緒にいたから、オリビアなしでゲームが進行したのかもしれない。


「ランドンさん、ゲームでは殆ど出てこなかったけどいい人だねえ」

「そうなの?」

「うん。友達をないがしろにするような人と一緒に行動出来ないって言ったら、友達を大事にする気持ちは無視できないって私が逃げるの見逃してくれたの」

「へえ」


 ゲームでは無骨なキャラだった。

 オリビアは幼馴染という設定上ランドンと一緒のエピソードが多かったし、正直なところ私好みのキャラだった。好みというか好きだった。

 ランドンとオリビアの恋愛なんてものは無く、ただの幼馴染だったけど私はもしかしたら隠しエピソードがあるんじゃないかとネットの攻略サイトを探しまくった事もあった。


「ランドン。会えないかな」

「え、どうして?」

「え、あの。うん。興味? ほら、殿下は姿を見たからランドンにも会ってみたいなぁ、なんてね」


 誤魔化せたかどうか分からないけど、適当な言い訳を口にする。

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