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眩しい光に包まれたと思った瞬間、美羽菜と私は知らない場所に飛ばされていた。
知らない場所、ううん私はこの場所を知っている。
見覚えのある景色。
白い柱が何本もあって、それには見事な彫刻が彫られていて篝火の様な明かりでその場所は照らされている。
そして見覚えのある人達。
違うのは視点だ。
私は見られる側じゃなかった、私も見ている側だった。
見られるのは一人。
この場所に召喚された一人の少女。
その筈だったのに。
「ここは」
冷静に、落ち着いているつもりで周囲を観察していた私の後ろで美羽菜が怯えた様な声を出した。
「美羽菜落ち着いて。ここは」
「梢ちゃん、その恰好。あれ? 私も」
指を指され自分の姿に気が付いた。
白いワンピースを着て、右手に金杖を持っている美羽菜。
赤い皮のミニスカートに、おへそがぎりぎり隠れるかどうかというミニ丈の皮の上着を着た私。左の手首には金の腕輪、右の親指と人差し指にはそれぞれ宝石がついた指輪をしている。
さっきまでは学校の制服を着ていた筈なのにこの恰好、この衣装。そしてこの場所。
「ねえ、梢ちゃん。私達なんでここにいるの」
「それは……」
状況から考えだせる答えなんて、気が狂ったのかと言われてもおかしくない言葉だけど、でも夢を見てるんじゃなければこれは現実の筈だ。
「あのね、驚かないで。ここは」
「私達があなたを召喚したのです。聖女様」
そうこれがオープニングの台詞。
「聖女? 梢ちゃんの事?」
「違うよ。私じゃなく、多分美羽菜だよ」
美羽菜の姿を見て即答する。私は聖女じゃない。
「そうです。私達が招いたのはあなたです。聖女様」
男にどんと体を押されてぐらりとよろめいた。
「聖女様」
「ちょっと、いくら私が予定外だからって扱いが酷いんじゃないの」
なんとか踏ん張って転ばずにすんだ私は、美羽菜を自分の背後に隠して叫んだ。
むかつく男は私の抗議の声を無視し、自分の後ろに立つ金髪の男に何かを確認する様に一瞬振り返った後私を指さして叫んだ。
「お前なんだ。お前など呼んでいないぞ」
「なんだとはなんなのよ。あんたたちの召喚の儀式に巻き込まれた一般人よ」
美羽菜が聖女だというのなら、私はタダの巻き込まれたモブだ。
「一般人がなぜここにいる。ここは神聖なる儀式の間。お前ごときがいていい場所ではない」
むかつく男は余計な事しか言えないらしい。
「だから、私はあんたたちの儀式に巻き込まれたの。言わば被害者分かる?」
「被害者? どういう事だ」
男の後ろに立っていた金髪の男が口を開いた、金髪の男……殿下だ。