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Donor  作者: 鈴呂
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№ 白詠(はくえい)

 僕は、何気に制裁を受けていた。 今、この状況をこと細かく説明すると、昼休みいつもの校内のベンチにて愛羽音ちゃんの作ってきたお弁当を愛羽音ちゃん一人で食べている。 そして、その隣で指を銜え、まるで”誰か拾ってあげてください”と書かれたダンボール箱に入れて放置され、ご主人様の現れるのを潤んだ瞳で子犬のように待っている僕。 上司や先生ではなく完全に愛羽音さまの逆鱗に触れていた。

「あの……僕のは?」

『何を言ってるのかしら、魔王の申し子ならこのお弁当を欲しかったら力ずくで奪ってみなさいよ。 ルシファー』 そういってお弁当を思ったまま背中から虹色の羽を広げ、空へと舞い上がるラブウイン。

 僕は下から見上げ、体内にエナジー(気力)を溜め背中に放出した。

 『ぐあああああ―――』

 その声と共に漆黒の煙を巻き上げながら螺旋状に渦を巻き、背中から蝙蝠の羽を広げる。

『俺を本気にさせたことを悔いいるんだな、ラブウイン』

 すると、ラブウインの手に持っていたお弁当は光に包まれて消えて去ってしまう。

「ありません」

「ですよね……うう……」

 そんな、僕に制裁を浴びせられている昼休み。 僕たち二人の前に現れたのは――。

 

山田塁やまだとりでくんですよね?」

 落ち込み、蹲っていた僕を呼ぶ。 僕と愛羽音ちゃんの座っているベンチの正しく僕たちの前に一人の生徒、その生徒が僕を呼んだ。

「初めまして、ぼくは生徒会執行部を務めています。 篠崎白詠しのざきはくえいと申します」

 今、一瞬”ぼく”といったこの生徒、決して男子ではない。 目の前で自己紹介をしたこの女子生徒は別に男装しているわけではないけれど自らをぼくと言った。 確かに見た目はイケメンと評される程のクール系女子、ちょっと前でいうとこのボーイッシュな感じの生徒。 

『この人、確か塁くんと私の間にいた2位の……女子だったのか』

「あの、その篠崎さんが僕に何か?」

「今回の中間テスト1位おめでとう。 ところで山田くんにこの度はどうして1位になれたのかお聞きしたいのですが」

 篠崎さんの表情は、決して祝福しているような顔ではなく、言うなれば逆光に晒され、疑いの眼差しといったところだった。 

「あ、ああ、あれはマグレだよ」

「マグレ? ……少しばかり調べされてもらって、気を悪くしないで頂きたいのだけど、あなたの点数、満点だそうよ。 マグレと言うけれど、このテストがマグレで正解する確立は1ユニット、約1000万分の1の宝くじの1等に当選するほどの確立をすべてマグレの一言でかたづけて納得できると思う?」

 それに――。

「前回のあなたの結果は149位。 それがどうして今回に限り1位が取れたのか。 それとその校則違反とも思われる眼帯。 訊けば”学校公認”だそうね。 それは中二病という心の病だから?」

 その台詞とともに、愛羽音は太ももに置いてあったお弁当を落とし手に箸を持ったまま立ち上がり篠崎を睨みつけた。

「篠崎さん、逆恨みは、いい加減にして」

「あら、あなたは確かぁ、転校生の若草愛羽音さん。 そういえば、あなたの名前が私の”下"にあったのは、正直、少し驚きました」

「…………」

「それに、あなたの左目も虹色とは変わった色してるのね。 もしかしてあなたも中二病の仲間なのかしら」

 その時、私の手首を塁くんが掴む。

「愛羽音ちゃんは、座ってて」

 私を座らせ、立ち上がった塁くんは、篠崎白詠さんの方へ顔を向けた。

「フッ……愛羽音ちゃんが中二? 笑わせるなよ凡人。 この俺が唯一認めた存在の人間、中二なんてレベルの領域なんてとっくに超えてるさ、それこそが若草愛羽音。 それにこんなテストリザルト(試験結果)で人間の価値観が決まるくらいなら、俺の邪眼からみたらあんたを含めて2位以下はどれも同じだ篠崎、痛い目みたくないなら、この俺たちの聖域から、今すぐに立ち去れ」

『塁くん……』

「くっ! ぼくのことを侮辱したのは、あなたが初めてよ。 覚えてなさいよ!」

 綺麗系のお顔で、篠崎白詠さんは顔を赤くしてこの場を立ち去った。 そんな彼女の後姿を目で追いながらも、私は内心胸騒ぎがする。 そして、それは数日経ってのこと、私の胸騒ぎは容赦なく見事に的中したのだった。

「それは、そうと塁くん。 ”2位以下はどれも同じだ”ってちょっと引っかかるんですけど……」

「え!? あ……いや、それは篠崎さんに対しての言葉のあやで……はは」

「お弁当抜き継続。 っと言いたいけど明日は作ってきてあげるよ」


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