表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Donor  作者: 鈴呂
6/7

№ 誤算(ミスキャルキュレイション)

「時の流れに埋もれし偉大な汝において、我此処に闇に誓わん 光を灯し我封印を解き放て、目覚めよ! 魔王の申し子ルシファーよ!」

 その台詞とともに僕の掛け布団を豪快に引き払い、叩き起す。

「起きてですよ、お兄ちゃん」

 睡魔に負けた僕は、眠そうな声でお約束の”あと5分”を要求したが……すでに手遅れだったことに、僕は瞬時に気づかされることとなる。

「もうだって、8時なのですよ。 もうすぐ愛羽音さんが迎えにくるですよ」

「!? それを先に言ってくれよ! 栞」

 勿論、僕は全身全霊を込めて飛び起き一階へと向かう。 愛羽音ちゃんの迎えに来る時間は8時5分。 何故、5分? それは愛羽音ちゃんの優しさだということだった。 今その5分の大切さを噛みしめながら必死に制服に着替え、歯磨きに眼帯をつけたまま顔を洗い朝食の食パンを加える。 きっちり5分、うちの呼び鈴が鳴り響く、食パンを加えたまま僕は玄関の扉を開けた。

「おはよう、とりでくん」

「おはよう、愛羽音ちゃん。 鞄とってくるからちょっと待ってて」

 そういって、僕の部屋へと向かう、二階にあがり部屋へと行くその途中、栞にすれ違った。

「栞も一緒にいくか?」

「私はいいのですよ。 お邪魔だろうし」

「じゃあ、先に行ってるから遅刻すんなよ」

 そういって、僕は栞を後に先に家を出る。

 そして、それを二階の窓から栞は登校する塁と愛羽音を眺めながら、一冊の雑誌を机に置いく……。

 

「愛羽音」

 

 **********

 

 二人で一緒に登校する。 そんな些細な事がとても心地いい……夏の終わりに転校して来て、今日は初めての中間テスト発表。 嫌味にも聞こえるかもしれないけれど勉強には自信があった。

 ここの編入試験においてはノーミス(満点)で、それを言うのも私は世間でいういいとこのお嬢様。

 

 若草グループと言えば、国内でも名の知れた企業の一人娘だった。 故に、学業に関して申し分ない教育と作法を幼い頃から叩き込まれていた。

 そして、この私、若草愛羽音はどんなことに置いても決して手加減などしない主義。

 

 ――結果は見得ている。

 

「塁くん、今回の中間テストの出来はどうだった?」

 私は、しらじらしくも訊いてみた。

「あー 今回は、あまり自信ないかな、前回みたいに僕に学びの精霊が降りてこなかったから自力で頑張ったよ」

「普通に精霊が、降りてきた時点で、人間も終わってる気がするけど」

 そんな、話をしながら下駄箱で上履きに履き替え、結果の張り出されている校舎へ二人で向かう。

 結果と言えど、氏名が載っているのは上位10名のみ、以下の順位は答案と共に結果を報告される。

 

 1位 山田 塁

 2位 篠崎 白詠はくえい

 3位 若草 愛羽音

 4位 ―――

 5位 ――

 

 驚愕した――。

 

『あ、ありえない……一位どころか三位って……しかも、塁くんが一位って!?  誤算だった。 中二病ということだけで、勝手に思い込んでた……』

「と、塁くん!」

 私は、隣にいる塁くん方へと振り向くと、中間テストの結果を彼の横顔は少し曇った表情で眺めていた。 そして、彼はすかさず私の方を向く。 その表情は先程、一瞬見せた表情とは違う顔で……。

「あ……愛羽音ちゃん、もしかして怒ってる?」

 その台詞は、あまりにも不愉快だった。

「全然! 怒ってないです! 私、本気出してないですから!」

「いや、でも、かなり、邪神に取り憑かれたような顔してますけど……」

 悔しかった……本当に涙が出そうなほど悔しかった。 私は振り向いてその場を離れ、少し進んだところでもう一度、塁くんの方へ振り返り、少し愛くるしい表情でにこりと笑う。

 

「今日、お昼抜きです」

「って…………ええええええええええええええええええええええ!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ