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Donor  作者: 鈴呂
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№ 宣戦布告(ア デクラレイション オブ ウォー)

 

「でも、若草さんが彼女じゃなくてよかったですよ。 私なんてまったく敵いませんから」

「暁さん……もし、彼女だったら?」

 私は、暁さんに軽く訊いてみた。 すると、彼女はまじめな顔になりこう言った。

「a declaration of war」

  宣戦布告するつもりだった。

 確かに、ここ数日間、山田塁くんを見ていても”友達はいない” それを考えるといくらなんでも不自然

 ようするに、これは軽い憶測だけれど、塁くんに近づいた人間を暁さんが排除……。

『いや、それは考えすぎかもしれない……これじゃ、私も中二入ってるな……』 

 

 ―――ラブウイン!

「誰が、らぶういんよぉ。 ルシファーとでも言ってもらいたいわけ?」

 すると、彼、山田塁くんは手のひらで顔を隠し、薬指と小指の隙間から覗くようなしぐさでこう言った。

「いや、その名は伏せておいてくれ。 何処に闇の召還獣が潜んでるかもわからないから、今は塁で。それより愛羽音ちゃんどうしたの? 溜息ついて」

「ねえ、暁さんって知ってる?」

「……な、何故、その名を?」

「昨日、山田くんが逃げたあと、私の所にきたの」

「いや、あれは本名じゃないよ、愛羽音ちゃん」

「え? えええええええええええ」

 本名、山田栞やまだしおりれっきとした塁くんの妹だった。 ならば8年間片思いと言ったのはなんだったんだろ? そう、それは彼女は再婚相手の娘で8年前にとりでくんとしおりちゃんの親同士が再婚し二人は兄妹となった。 そのあとの話しはたぶん本当だろう……。

 ただ、塁くんに思いを寄せていることはわからないけども。

「あいつは、結構、狂言癖があるからなぁ 昔もそれで少し虐められてたんだけど……」

『あながち嘘ではないんだ……』

「まぁ 僕からいうのはなんなんだけど仲良くしてやってよ。 悪いやつじゃないから」

 ”うん”っと答えた私、どこか心で安心したというか、もやもやが晴れたというべきだろうか、客観的に今の自分を見るとなんだか恥ずかしい。 そして、これはあとから訊いた話だけど”暁”という名前は塁くんに付けてもらったということだった。

「栞ちゃん、大切にしてるんだな……あの名前」


 放課後――。

 一応、彼女なので放課後正門の所で彼を待つ私。 まぁこういったシチュエーションは嫌いじゃない、多少は乙女チックなところも私にはあるのは否定しない。 が、しかし、塁くんよりも先に現れたのは山田栞ちゃんだった。 これはたぶん本当に偶然。 当然、目が合い栞ちゃんはにこりと微笑んだ。

「あ、若草さん 今お帰りですか? それとも誰かまってるとか?」

「ええ、”山田栞”さん」

 何故だかわからないが本名を言うと、彼女は眼鏡をはずし俯いた。

「もう、その名前に気付いてしまうとは思いませんでしたですよ」

「いや、普通に出席簿とか下駄箱見るとわかるし……『ってもしかして中二のスイッチ入ってる?』」

「乱世を越えて、遥か孤高の地。 もう、誰の為じゃなく自分の為に、そして輩の為に……

 深紅に広がる、曼珠沙華。揺れ動く、吹き抜ける風が、その花を揺らす。 知ってしまったものはしょうがないですね」

「う、うん、今の台詞はまったく必要ないね」

「え……結構、自信ある自作の詩なんですけど」

 基本、この場面で、披露することじゃないと思うのだけれど、それよりも、いくら塁くんに付けてもらった名前だとしても偽名を使ってたことに触れないでいるのはわざとだろう。 

そして――。

彼女、山田栞ちゃんは今まで以上に強ばった様子で下校中の生徒達がいるにもかかわらず、私に向かって指差した。

 

「栞は、決めましたですよ! a declaration of war若草愛羽音さん。 あなたに宣戦布告いたします」 

 

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