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4.先生と理事長と地味子は、魔物ハンター

翌日の朝のHRに来た時に見た都築先生はボロボロだった。全身をくまなく包帯で覆っている。見たときには、声を聞くまでミイラ男と勘違いしてしまった。

連絡事項が終わった後、都築先生は

「橘ぁ。お前がもうちょっと早く止めてくれれば、こんなことにならなかったのになぁ」

と八つ当たり気味に絡んできた。

「なに言ってるんですか。放課後に生徒を呼び出し、校舎裏で私刑リンチすれば、当然だと思うんすけど」

「もう一つあるんだよ、もう一つ...」

「そうですか」


もう一つ?何かやったんだろうか、あの先生。昨日の暴走ブリを見ているとやった気がしなくもない。

一時限目の授業風景はおかしかった。ルーヴェンルージュに殺気を向ける都築先生、都築先生を威嚇するルーヴェンルージュ、そして都築先生を完全に見下してる地味子。地味子を見て顔色を無くし、怯える都築先生。地味子、お前まさか...


昨日のこともあり、どうしていいか分からず一人になりたくて、屋上に来た。

屋上の手すりを掴んで、景色を眺めていると

「ニャーハッハッハ!」

っと声が聞こえて昨日のネコが、上から来て手すりの上に乗ろうとした。うまく手すりに乗れなかったネコは、きれいなバクテンをして再度手すりに乗った。

「なにしてるんだニャ?」

「昨日のこと考えてたんだよ。昨日のことは夢じゃなかったんだな」

「ニャ?」

「魔物ハンターとかヴァンパイアとか地味子の妹の娘とか」

「ニャ」

「昨日の服は着てないんだな」

「それは聞かニャいお約束だニャ」

と哀愁を漂わせて、ネコが言った。興味はないが、聞ける雰囲気じゃなかった。

「そうニャ。キリエがお前を呼んでるニャ」

「キリエって誰?」

「キリエ、知らないニャ?」

「知らん」

「キリエは...これ以上はネタばれになるニャ。キリエはネタばれが好きじゃないニャ。ニャ、ニャ、放課後キリエがお前を呼び出すから逃げるでないニャ」

と言って、ネコは消えていった。

キリエって誰? ネコは答えてくれそうにない。


放課後、包帯を身体全体に巻きつけた都築先生に理事長室まで連れて行かれた。

そこには、地味子とルーヴェンルージュもいた。

「ニャーハッハッハ。よく来たニャ。キリエは、この学校の理事長だニャ」

ネコは、理事長の机に乗って言った。

「馬鹿息子が担任をするクラスの生徒の橘陸君。はじめまして。私がこの学校の理事長、都築霧絵です」

「じゃあそのネコは、理事長の」

「いいえ、このネコは如月さんの使い魔です」

「ごしゅじん~、昨日ちゃんとオレはごしゅじんの使い魔だって言ったニャ~」

「馬鹿息子のせいで、混乱したのでしょう」

「キリエ...」

「あのー、都築先生の怪我は」

「私がしました」

「へっ?」

「私が自作したネコの衣装を汚したので、私がお仕置きをしました」

「それは、先生のせいじゃ」

「橘、分かってくれるのか」

と都築先生はなぜか感動したように言った。

「それは違います。馬鹿息子の返り血で汚れたのなら、馬鹿息子が責任を取らなければなりません。そうでしょう? 如月さん」

「そうですね。都築先生が当然、悪いと思います」

「ほら」

ほらじゃないです。理事長、間違った人に訊いてますよ。地味子に訊いたら、当然悪いって言うに決まってるじゃないですか。違う人に訊かないと。などと心の中で叫びまくっているのだけど、ここには都築先生の味方がいないことを思い出し、納得しないまま口を噤んだ。

ネコは、「オレのお気に入りの服だったのニャー」と地味子の足にしがみつき泣いていた。滂沱の涙とはこういうのを言うんだな。ネコを見ているとなぜか都築先生が悪いような気がしてきた。


「話が逸れましたね。橘君に昨日のことを説明します」

「夢だって、言ってくれるわけじゃないですね」

「ごめんなさい。残念ながら、夢ではありません。すでに、あなたはこの件に関わってしまったので、身を守るためにも説明しなければなりません。馬鹿息子、如月さん、私は魔物ハンターです。魔物とは、人間や動物以外の生物いきものですね」

「ずいぶん、おおざっぱなんですね」

「ええ。初めて魔物ハンターのトップになった人物が、考えるのがめんどくさくて適当に決めたらしいのです。それが、も続いています」

「それで、俺も戦えと?」

「いいえ。当分、リーシャと行動してください」

地味子は、納得がいかないような表情をした。

「如月さん。これは決定事項です。彼が魔物に遭遇したら、自分で見を守れないでしょう」

「リーシャを傷つけたら、地獄に突き落としていいなら構いません」

「馬鹿息子をボコるので、我慢なさい」

「仕方ありませんね」

「それで、理事長。ルーヴェンルージュは昨日、都築先生相手に苦戦していたので、わざわざ俺と行動しなくても」

「リーシャのことをまだ教えてなかったですね。彼女は吸血姫ヴァンパイア。現在の吸血鬼ヴァンパイア族の長の孫娘です。潜在能力はあるのですが、まだ力を使いこなせていません。力を使いこなせれば、うちの馬鹿息子に負けることはありませんね。それでも、普通の人間よりは強いですよ」

「魔物ハンターってなんですか?」

「魔物ハンターとは魔物を狩るものと思われがちですが、要は人間と魔物のルールから逸脱したものを狩るのが仕事です。むやみやたらに、魔物を狩っていいわけではありません」

「それじゃあ、昨日都築先生がしたことって」

「盛大なルール違反ですね。リーシャは、あって人の住む世界で生活しています。もし、彼女がうちの馬鹿息子のような者たちに殺されれば、吸血鬼ヴァンパイア族との全面戦争になり、負けます。わが身が可愛いなら、この提案を受けて下さい」

「橘君、イヤかな?」

「そういうわけじゃ...如月さんが俺を守るっていうのは」

「イヤです。心の奥底から拒否します。私が守るのは、リーシャだけです。男を守る趣味はありません」

即答で、拒絶せんでも。

「ええっと、橘君?」

「わかった。あんまり無理しないようにな、ルーヴェンルージュ」

「まかせて。それでね、リーシャって呼んでほしいな」

上目づかいで見られて、照れてしまい思わず「はい」と言ってしまった。

「ありがと。じゃあ、帰ろっか? 失礼します、理事長。リア姉さまは?」

「古い友人に会うので、先に帰ってください」

「わかった」


理事長室を出た後、リーシャは学校が用意したマンションで地味子と住んでいると教えてくれた。リーシャがなぜ地味子のことをリア姉さまと呼ぶのかを訊くとはうまくはぐらかされてしまった。言いたくないことなら、別にいいか。

それにしてもさっきのリーシャの上目づかいは反則的に可愛い。今まで見た、どんなよりも可愛いし、優しい子だと分かったから、仲良くなれそうな気がした。

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