4月7日 「桜の舞う初登校」
初めての方は初めまして、しっている方はお久しぶりです。天叢雲です。
受験の息抜きに書いているものなので、更新はかなり遅い上に駄文です。
それでも楽しんでいただければ幸いです。
「次は~、星桜学園前~、星桜学園前~、お出口は左側です」
目を開けるとモノレールのアナウンスが聞こえ、自分がまどろみの中にいたことに気がついた。
手に持っていた小説を鞄に入れると同時にモノレールのドアが開き俺と同じ学生服の少年・少女達が出てくる。
俺はその大きな波が一段落ついたところでゆっくりと駅のホームに降り立った。
俺が降りた瞬間を見計らってかドアが閉まりモノレールは出発する。俺はそれを見送る訳でもないがぼんやりと見てから改札に向かおうとした。まさにそのときだった。
ひとりの少女が俺の前を通りかける。
何の変哲もないことなのだがなぜかその少女に俺は目を奪われていた。
夜を取り込んだような黒く長い髪に、処女雪のように白い肌。熟練の職人が長い年月をかけて作りかげたような精巧な美貌。そう、彼女を一言で表せばまさに「大和撫子」だった。
彼女も俺に気づいたらしく、「何かご用ですか?」と聞いてきたのだが俺は「ああ、いや。何でもない」訳の分からない答えをしていた。
彼女は「そうですか」と言い残して改札に向かっていった。俺はその後ろ姿を見つめたままだった。
気がついたらどれくらいの時間が経ったのかわからないが気がついたら次発のモノレールのアナウンスが流れてるのに気づいて俺は慌てて改札に向かった。
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「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」。これは川端康成の有名な作品である「雪国」の序章だ。
今の俺に当てはめてみるとこのように書くのであろう、「新しい駅構内を抜けると桜の園だった」と。
4月。
春うららとはよくいったもので暖かな陽気な日々が続いてきた季節。
俺――熊谷 蓮は駅から入学する学校への道を歩いていた。
俺が入学する『星桜学園』は今年から開校する新設校だ。
入学する前に行った学校見学では、広大な敷地に建設されたシミひとつない校舎や最新の設備が整っている学習環境と説明担当の先生が熱心に説明していた。
他にも、教師陣にも有名大学の教授や各エリート高校から抜粋された教師などと教育面に関しても万全の体制が整っているとのこと。それに関連して大学の指定校推薦枠や国指定の教育機関としても名が高まっているとのこと。
また、部活動や委員会の設備も新しいものばかりだった。なにせ、ドーム型のグラウンドが二つもあり、どこのスポーツ公園だよという規模でもあった。ちなみにこのドーム型グラウンドは生徒が使わないときは外部のクラブ等に貸し出すこともするらしい。図書室に至っては市と連携することで一般公開することになった図書館として運用されているので蔵書量も大学図書館並みの量を誇っている。
何よりも、星桜学園において異彩を放つのはその在学年数だ。
通常の高校では三年制を導入しているが、一部の技術的高校では四年制を導入している。
星桜学園も専門学科の数と学習内容ゆえに四年制を導入している。
このことで、大学には編入という形になるが大学の一年次は基本的には基礎教育がメインなのでたいした問題にはならなくそれよりも専門教育に力を注ぐのが良いとのこと。
さて、このように様々な特色を持つ星桜学園だが、全国各地から津々浦々と入学志望者が集まり新設校にして入試倍率がなんと10倍以上もあったのにはさすがに驚いた。
ちなみに、星桜学園の入学候補数は全学科合計で約千人。それが約十倍なのだから、入学志望者が一万人近くもいたことになる。
なにこれ、少子化とか嘘だったのか?と疑っちまうだろ。
ともあれ、その約十倍の志望者の中から入学許可が出たのは1080人。
あまりにも志望者が多いことに学校側も嬉しい悲鳴を上げていったのだろうがさすがに教師の数にも限界がある用で、増員は二クラス分に留めたらしい。
しかしそれでも1080人。星桜学園では一クラス40人なので26クラスということになる。
更に補足をすると、星桜学園には人文学科、理数学科、国際学科、経営学科、芸能学科、スポーツ科学科、芸術科の7つの学科が存在する。
各学科の内容をさらっと説明すると、人文学科は文系科目つまり、国語・社会・英語の教育に特化している。
理数学科では理数科目の数学・理科・英語の教育重視。
国際学科では英語を専攻とし、フランス語・ドイツ語・中国語・ロシア語のどれか一つを選択して学ぶ。
経営学科では、経営学や経済学の学習の他にコンピュータを使った実践的な教育が行われる。
芸能学科では未来のアイドル・声優・俳優などを育成するための本格的な教育を受けることができる。
スポーツ学科ではプロのスポーツ選手やそのサポーターなどを育成するための教育を受けることができる。
最後の芸能学科では未来の芸術科を育成するための本格的な芸術教育を受けることができる。などと各学科共に様々な分野のスペシャリストを輩出するためのカリキュラムが組み込まれている。
そのためか、スポーツ科学科や芸能学科、芸術科などといった専門学科の影響もありさっきのような大人数の志望者が集まったらしい。
実際に俺の前の方を歩いている女子なんか、ファッション誌に掲載されていてもおかしくない容姿の生徒がチラホラといる。
ちなみに、入試形式だが、さっき言ったスポーツ・芸術・芸能の専門三学科に対しては推薦入試が行われその道の優秀な生徒が入学したらしい。
他の学科は、大学のセンター入試みたいに各地域に設置された試験会場による筆記テストだった。
一万人もの志願者がいるのだからマークシートだと思っていたのだが、ところがどっこい全て記述形式だった。しかも半分以上が論述問題や証明問題。
そのために、一科目が終わるたびにほとんどの受験者が机に突っ伏していた。
まあ、無理もないな。英語に至っては二十行近くもある英作文を欠かされる羽目になったのだから。あれ、満点のやついるのか?いないだろうな。いたらそいつはバケモノだ。
かくいう俺は、得点開示の結果、国語 92点、数学 79点、理科 86点、社会 90点、英語 81点の五教科合計428点、三科目合計252点だった。これ見ると倍率の割には低いと思うだろ?聞いて驚くなよ。これでもトップ10に入っていたんだぜ?合格発表の時には点数の高い順から名前が書いてあったのだがそこで俺は9位だった。びっくりしたね、まさかあんな点数で9位とは。ちなみにこの入試でトップの点数は449点みたいだった。難しすぎるだろ。いくら倍率が10倍だからって……。
というか、推薦もあったとはいえ、一万人ほどの記述問題の採点なんかよくできたな。進研ゼミの赤ペン先生もビックリだよ。
閑話休題。
一通り、星桜学園の説明(誰に対してやっているのだろうか?)がし終わった頃には星桜学園の校舎がみえてきた。
星桜学園はもともと近くを流れる荒川の洪水対策用に作られたが県の財政策の一環として売り払われたスーパー堤防の上にあるので校門までは坂道がある。その坂道の横には桜が植えてあり、花びらを舞わしてあたかも俺たちの入学を歓迎しているようだ。
そんなことを考えながら坂をのぼっていくと校門の横にかけられた、「星桜学園入学式」と墨で書かれた大きな看板がみえてきた。
俺は学生証でもある、PDA(携帯情報端末)を取り出し、あらかじめインストールされている学生証のアプリを起動。画面には俺の顔写真と名前、生徒ID・QRコードが表示される。このPDAは学生証の他に学習アプリやスケジュール帳などがインストールされているほかにも、任意のアプリをインストールできる。まあ、学園仕様のXperia Ultra見たいなものだな。
校門では、認証機にPDAをかざして入学の認証をしている。俺の番もすぐに来たので認証機にPDAをかざして本体情報を読みとらせる。そうすると画面には、桜が舞うエフェクトとともに「ようこそ、星桜学園へ」というロゴが映し出された。そして、認証が終わり進んだ先のテントでは校章と生徒手帳が配られた。校章は桜と星のマークと、みての通りに星桜である。ちなみにPDAには生徒手帳と同じ内容が内臓されている。え?何で生徒手帳をわざわざ配るのかだって?そんなことは知らん。
受付が終わった俺は入学式が行われる第一体育館へとほかの学生と共に三々五々と流れに身を任せた。
熊谷 蓮
所属クラス 1-A(文学科)
得意科目 国語、日本史、物理、家庭科、保健
苦手科目 数学、英語、化学、世界史
好きなもの・こと 甘いもの全般(甘すぎるのは却下)、コーヒー、緑茶、黒髪ロング、巫女、二次元、料理、読書
嫌いなもの・こと 苦いもの、粘りけのあるもの、うるさい人
特技 読書(速読)、料理、雑学
本作の主人公。前世では生徒会長をしていた。元ぼっちだったので性格がひねくれてるところがある。地味に料理が上手い。モットーは「悠々自適」。普段からは見られないが地味に努力家。朝の習慣としてランニングとコーヒーを入れること(豆から挽くタイプ)がある。