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すぱ☆ろぼ!!  作者: 鴉野 兄貴
座学編。巨大ロボに俺の知能が勝てない(読み飛ばし推奨)。
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巨大ロボ。発進!!……しない。

巨大ロボの運用は人類史上初である。

そもそも。コレって動くの?

 「……もう無理」俺は大量の教科書をブン投げた。

「座学くらいしっかりやれ」御厨みくりや兵曹が呆れている。


「THBFの操作感覚だが」

「はい。極めてラグがあるそうです」「よろしい」

 実際は視線やらなんやらの予測起動、コマンド操作で若干改善されている。

「基本はアームド・スレイブシステムだ。

 おまえ自身の動きをトレースするようになっている。


 感度を上げればもっと早く、鋭く動けるが。

 ……お前がコケて死ぬのはさておき、多額の税金を投入して作られたTHBFが破損するのは惜しい」

 言いたい放題だな。御厨兵曹。


「先日乗ってもらった某高専が開発した『偽パワードスーツ』を思い出してもらうとわかりやすいが、もっとラグが酷い」


 ちなみに、どこぞの高専学校が余興で開発した手足が長くなっただけでエンジンひとつついていない代物で、ニコ動にうpされていたのを発見した御厨兵曹が取り寄せたものだ。

 論より証拠。そして安価。御厨兵曹の小遣いと大工用具で簡単作成可能。

 意外と操作感覚を掴みやすいので採用とのこと。


「THBFには人間とほぼ同等の関節が設けられている。当然、THBFはここが弱点だ」

 人間の稼動関節は100を余裕で超える。指や背骨などを省いても45箇所は下らない。

 この時点で戦車などと比べると多大な弱点である。


 あと、パンチは禁止。キックも禁止だ。理由は人間と違って拳やつま先が『固く』ないからだ。

「殴っちゃダメなんでしたっけ」

「指の部分は極めて!高価だっ!」高度な義足や義手の値段を聞いてぶっ飛んだ。

 殴るくらいなら剣か重機群を使えということらしい。

「手にダイヤモンドカッターとかドリルとかつけたほうが」

「……指は精密機器だ。よって却下する。ヤマタノオロチシステムの重機群を使ってくれ」

 職人みたいに工具を扱うのも難しいらしい。


「それって」

「殴り合いをするというなら、ロボ……もといTHBFから降りてパイロット同士で殴りあうべきだ」

 うはぁ!夢なさすぎっ?!!


「ああ。THBF同士の戦いを想定するならば、関節技が有効だぞ」

「スンゲーかっこ悪いっすよ!!ロボの寝技勝負とかっ!!」

 想像したくもないわっ!


「そもそも!二足歩行という時点でアホかと言いたいのだが」何度目だ。御厨兵曹。


「男なら!戦車だっ!」「同意ですっ!」

「キャタピラの踏破力!抜群の安定度っ!その速度っ!どれをとっても最高だっ!」

 ロボの専門家の癖に戦車大好きな御厨と俺はあっという間に意気投合した。


「百歩譲って潜水艦だなっ!気取った海自は好かんがっ!」俺も嫌いじゃない話題だ。

「その通りっ!男なら戦車、もしくは潜水艦だっ!」御厨兵曹は勢い良く首を縦に振った。


 オタがい。もといお互いガッチリと手を組む。

 座学の教官である御厨兵曹は元々ロボット工学を志す学者だったらしい。異色の隊員だ。


「何故二足歩行兵器が危険かは解説したな」

「人間はフラフラフラフラと倒れそうな動きを三半規管の平衡感覚で制御しているからでありますっ!」


「そうだ。人間の『直立』は厳密には『常に倒れそう』な状態を反対側に倒れ続けることで維持している。

 歩行、走行も同じだ。倒れながら反対側に倒れて移動していると考えて欲しい。

 加えてTHBFは5m。通常の動きと同等に歩くとしても、当然、前後左右上下と強烈に揺れ」

「歩くだけで車酔いで死ぬ」「その通りだ」


「よって。日本古来のナンバ歩きを提唱する」「剣道の歩き方ですか?」

「……まあそれでもいい。理想的だぞ。熟練者は5mの距離を一瞬で詰めるし、上下運動は少ない」

 わからない人は少し腰を落として右手と右足、左と左足を同時に動かしてくれ。それがナンバ歩きだ。


 す ん げ ー 。 か っ こ 悪 い 。

「なんで普通の歩き方はダメなんすか」「揺れが大きいのもそうだが」


「人間の身体でたとえると。左に傾ける。そのまま左足に重心を乗せる。

 これで右足の支えを失っても右に転ばない。

 続いて両手を逆に振って前後のバランスをとり、

 右足が前に出るので骨盤は左に向くので放っておくと上半身も一緒に動く。

 これを防ぐため腕を逆に振るわけだが……」

 はいはい。眠い!眠いっ!やめます!この話やめやめっ!!!


「あと、走る事とスキップはお勧めしかねる。

 機体を傷めるだけではなく、命の危険がある。ジャンプはもってのほかだ」

 1m70センチの身体がいきなり5メートルになる。当然頭は強烈に揺らされる。

 170の俺が歩けば通常が5センチずつ上下に揺れるところ、17センチ。


「だから5mなんすか」マジンガーみたいにデカイほうがカッコいいのに。

「機体が疲弊する関係もあるが不可能ではない。……秒間50センチで脳を揺らされたいならな」

 うげええええええええっ!!!

「あと、通常の十倍コケるが、果たして生きていられるか?」はい。辞めておきます。


「勿論、THBFのコクピットは搭乗者を護る特殊溶液が満たされているが、脳の揺れは防ぎきれない」

 はい。わかってます。耳に蛸ができます。


「THBFは被災地立ち入り禁止区域の瓦礫除去を主な任務とするが」

「瓦礫を踏むとコケる」「お前の熟練度にもよるが、概ね合っている」

 動きが拡大されまくっているんだから、その可能性は跳ね上がる。全力で走れば尚更。

「どこでもこけるドジっ娘ですか?」

「人間なら泣くだけで済む。THBFは『車両』に属する。安全運転を遵守だ」

 なんでも道路交通法を護る必要があるらしい。めんどくさッ!


「で、こけると死ぬ?」

「……一応、コクピット『だけは』戦車の主砲に耐えるのだが」

 ため息をつく俺達。

 いくら保護液があっても5メートルの高さから横転など、

 脳味噌がマックシェイクになりかねん。脳だけは護りようがないらしい。


「あんよが上手って三歳児ですか?」「三歳児は走れる」

 二人ともため息。


「何故遠隔や自立にしなかったんです。ア◎モとかいるじゃないですか」

 一番の疑問はそこだ。ア◎モは人間サイズ。作業員の代行ならアシモしかありえん。

「兵器利用は本◎技研から苦情がくる」なるほど。

「せめてタチコマみたく蜘蛛型に」「著作権違反だ」いや、なんか違う。

「まじめに答えると、蜘蛛型は安定度において理想的だが、細い足の部分が素材疲労する」ふむ。


「悪いことは言わん。なるにしても戦車兵になれ」

「俺、自衛隊と違いますから」二人ともため息をついた。

……巨大ロボ。

それは。科学的に。難しい。


(次回予告)

御厨千鶴兵曹の講義は続く。

時には熱く。時には冷静に。そして実践をもって。

次回。すぱ☆ろぼ!!

座学編。巨大ロボに俺の知能が勝てない(読み飛ばし推奨)。

「いきなり格闘訓練。」

ご期待ください。

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