幕間。誰も笑ってはいけない。
人を殺しても笑い続ける者。
人を傷つけて生き続ける者。
復讐を誓って人を傷つける者。
贖罪を誓って忘れる者。
人は等しく罪深く。美しい。
「……どうでした?『彼は』」
内閣官房長が問いかける。農田は苦笑した。
「すばらしい『屑』だな」「ええ」
「トラウマ?大嘘だ。あの男は心も体もまったくもって打たれ強い」
「いい乗り手になりそうですか?」
勿論だ。農田は苦笑すると窓に目をやる。
不謹慎。農田退任しろ。その他色々書いてある幕。
「まぁ私も人のことは言えぬ。各国から頂いたお金や国民の血税からなる復興予算をあんな豆腐につぎ込んだのだからな」
「それは」
「不謹慎。人殺し。税金泥棒か」人殺しは当てはまる。彼は総理大臣だ。
彼自身は手を汚さなくても、知らないうちに彼の仲間や手下が手を汚しているかもしれぬ。
「死んだ、被害を受けた同胞のために国民が必死で集めた多額の募金と税金を横領し、
毎年多数の自殺者を出して国民が築き上げた。そう、血と汗で出来た技術を他国に売り渡す。
国土を放射能で犯して責任を取らず、足元を見て搾取して。彼らは何の報いを受けた?」
「連中のほうが、はるかに不謹慎だ」「……」
「それに怒らぬ我ら国民もだ」「我々もですか」
ああ。農田は苦笑いした。総理大臣とて独裁者ではない。
特にこの国には象徴に過ぎないが絶対的な存在がいる。総理大臣などいくらでも首に出来る。
農田は一時期公明党に身を寄せていたことがある。袂を分かったのは理由があった。
「仏罰など。この世にない」あの津波が彼の信心も親族も洗い流してしまった。
権力を得るためなら何でもやった。とにかく日和見の中立派。
対立候補たちの中間。祭り上げられる偶像候補を演じきった。
総理大臣についた後の行動は早かった。反対派は素早く粛清し、与党を掌握した。
「あの豆腐は。復興の柱になる。人を護り、救う。確実にな」
貴重な募金や復興支援金を搾取する愚か者たちを許すつもりは無かった。
危険を承知で除染を担当してくれた。いや、除染をしなければいけない立場に追い込んだ連中は。
……今すぐ首をしめてやりたいと思っている。
「で。生体ロボットですか」「あいつらの私腹を肥やすよりはマシだ」
「で、『彼ら』は」「私直属となる」
「上手くいくでしょうか」「行く。確実に」
ところで、この鳥取名産、『トウフ君チクワ』はいけるぞと農田は呟いた。
官房長官は恐縮しながらそれを受け取った。
「まずは内閣不信任案を乗り切らないとな」
「それについては」官房長官は資料を沢山出してきた。勿論人に見せられぬ『資料』もある。
「あの豆腐君は確実に我が国の経済力、技術力を高めています」
クスクスと官房長官は笑う。「すばらしい使い道ですな。どう見ても不謹慎ですが」
「観光も関連グッズも好調だ」「酷いですね」
人間は強い。そして弱いからな。農田は窓から目を離した。
「見た目で判断する。それが人間だ。
敵を外部に求めるのも人間だ。
人間の真の敵は常に一つ。
自分を見抜けぬ自らの心の中だ」
「そういえば台湾は?」「『流石だ。良くやった!』と国民も政府も」
日本はあの豆腐ロボのおかげで今後復興に向かうのをいち早く察知したのだろう。
小国、もとい地域で本当に良かった。
「中国は?」「技術を盗もうと必死ですがこちらの趣旨を理解してくれており、概ね受け入れています」
「韓国と北朝鮮ですが」「わかった。適当に理由をつけて無心しておいてやろう」
農田は内容も聞かなかった。苦笑いする官房長官。
「うまいな」「ええ」
「名前が変わっただけの商品なのだがな」「そういうものですよ」
二人は豆腐入りの竹輪を食べながら今後の指針を話すのだった。
当作品は内容的にギャグにしか思えないように書かれていますが、
登場人物たちはあくまで真剣に行動しています。
むしろ、真剣で怒って泣いて笑っているからこそ滑稽になっています。
第一期イメージソング。スターライト・セレナーデ/山瀬まみ
(次回予告)
巨大ロボの運用は人類史上初である。
そもそも。コレって動くの?
次回。すぱ☆ろぼ!!新章。
座学編。巨大ロボに俺の知能が勝てない(読み飛ばし推奨)。
「巨大ロボ。発進!!……しない。」
ご期待ください。