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すぱ☆ろぼ!!  作者: 鴉野 兄貴
外伝。巨大ロボットを持ってしても恋には勝てない

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外伝・戦闘より恐ろしい戦い ~未来(あす)への咆哮~

「どうやら決着をつけるときが来たようだな。朝日よ」


 大地小父にいちゃんの目が本気だった。

 本気と書いてマジと読む。それくらいヤル気だった。

 つまり殺意である。

「ロボット乗って良いからな」「いあいあいあ?!」

 THBFは如何に破格の安価を誇るといえ軍事兵器扱いである。勝手に持ち出して良いわけでは。

「許可する」マジか。

 いや、年齢相応のしゃべり方をするようには外部では気を付けているが。

 だって明日香が恥をかくだろ。常識的に考えて。

「正直、THBFが『彼』にどの程度通用するのか貴重なデータを見てみたいしな」開発者陣の台詞に疑問を抱くより先ににいちゃんノリノリ。


「俺に勝てると思うな! 娘はやらん!」「いや、あなたの娘が一方的にッ?!」

「ポイントも女性票おきにいりも俺が上だ」「ちょッ?!」(※作者註訳:メタネタごめんなさい)


 刀を振りかざす彼は。って銃刀法違反だ?! どこから出してきた小父にいちゃん?!

 繰り返す。刀を振りかざした彼は容赦なく踏み込み、THBFの持つ零十五式突貫銃を軽々とバターのように切断して見せた。

 え。ちょっとまて。待った兄ちゃん。おかしいから。

 いま、今瞬間移動しなかったか?! したよね?! しましたよね?!

「どうした? 俺の間合いだぞ」大地の小父にいちゃんは素手のはずだ。

 年甲斐を全く考えない痛いコスプレみたいな恰好をしているが、素手に刀に腰につけたピストル程度しか武装はないはずだ。

 しかし、彼はヤクザキックの一撃でTHBFの足を払った。

 転倒を避けることができたのは昨今開発された新たな補助システムの成果である。


 予備の零十五式突貫銃を抜き、暴徒鎮圧用の弾を使わざるを。

「ふん」くるくる背後にバク転を繰り返した彼、無意味な後退だがそうではない。

 無造作に剣を振り回す。異変が起きたのはその直後。

 あれ? 弾が全然当たってないぞ。

 コンピュータは先ほどの画像を解析して結果を報告してくるがその結果に納得のいかない俺がいる。

 というか理解を超えている。

「お父様は『勇者』と呼んでくれ」「意味わかんねえぇっ?!」

 刀でTHBF用の突貫銃の攻撃をすべて切り落とす。

 ルパ〇三世のゴ〇モンじゃないんだぞ。にいちゃん。

 つまり、威嚇のためわざわざ俺に都合の良い間合いを取ってくれた。らしいのだ。

 その証拠に射出したボンバーネットも軽々とかわしてみせた。

 小型ビルを破砕するボンバーネット。直撃したら死ぬはずだがその影響すら微塵も感じさせない。

「ふん」彼が手を振ると魑魅魍魎としか思えない化け物が。

 俺が『咆哮』と戦った時の時点で周囲に立体映像を展開して戦うことができた。

 技術も進んだがにいちゃんのそれはちょっと違う。

『レーザーでも仕込んでいるのか?!』やすやすとTHBFに牙を突き立て爪を立てる化け物や天使たちに戦慄する。

 レーザーは現在実用化が進み、核ミサイルのほとんどが屑鉄となりつつあるがこんなファンタジーな使い方はできないはずだ。

「おい! この程度か! もっと気張れ! 俺を越えなければ娘はやらんぞ!」

 化け物や天使たちが掃除機で吸い込まれる塵のように彼の手元に吸い込まれ、元に戻っていく。

 剣を持った彼は俺にクイッと手を振って誘う。攻めて来いと。


 しかし、親戚の兄貴分が相手なので攻めあぐねる。

 そんな俺の耳元に。『大地さん強いね』『あいつ、いつの間にあんなに強くなったんだろうな』おにぎりを手に観戦している両親の声。

『母ちゃん。俺小父ちゃんに一万円』未来、オマエ自分の兄に賭けないのか。

『じゃ、俺は……うん。朝日に勝てる見込みないかも』親父。シネ。


 そうこうしているうちにパンパンとベレッタが火を吹く。

 威嚇射撃なのだろう。THBFに通じることはない。さすがに装甲が違う。

 しかし、弾痕部分が発光、魔法陣のような線が伸びていくのを外部装置が看破した。

『氷よ』『焔よ』

 簡単に砕けた外部装甲。理解が追いつかない俺に彼は笑う。

「おい。本気だせよ。本気と書いてマジな」


 逃げるなよ。

 逃げる奴じゃないだろ。お前は。

 彼は続ける。

「逃げたくても、逃げなかっただろう。女からは逃げるのか。

 そうじゃないだろう。幼い気持ちだったかもしれない。でも今の娘の思いは。

 未成年かもしれないけど。オトナの女の考えだぜ。

 大人なんだろ。だから、大人として接してやれよ。

 そうでなければ。子供は傷つく。愛する人と一緒に歩めない。子供のママだって」

 真剣な彼の言葉はなぜか機器を通さずして俺の心に。魂に響いてくる。

 手が震える。保護液が無ければ汗が噴き出ていたかもしれない。

 涙なんて枯れた。それは嘘だ。そうでなければ彼の言葉は俺に響かない。

「俺は」「そうさ。俺は女房を愛しているからな! 今日もヤッたあとパンツ洗ってねえッ?!」「この下種がぁああああああああ?!」

 あのおっぱいを自由にするとはなんとうらやましい下種であろうか。

 沙玖夜さんおっぱいは人類の至宝である。異論は認めない。

 いや、年齢を問われるといろいろ怖いものがあるけど?!

「俺もうらやましい。いてて?! 愛しているよ夢子っ?!」「この莫迦っ?!」両親の見ている間での公開処刑である。主に俺の理性が。


「行くぞ朝日! 夕日に向かって走れ!」「わけわかんねえ!!!!」


 俺とにいちゃんはTHBFから降りてひたすら殴りあった。

 夕日を背に受け、ひたすら殴りあった。

 ボコボコにされ、蹴られ、おきあがることを強要され、何度か殴り返した。

 彼は避けなかった。それどころかにやりと笑う。

「良いパンチだ。だが日本では二番目だ」そして自らを指さして笑う。なんというイケメンであろうか。

「なら、俺が今日から宇宙一だ!」「その意気だ!」大ぶりのパンチはやすやすと交わされる。

「俺に勝てなければ娘はやらん! 本気を出してこい!」「あっ?!」


 本気は。

 本気は。本気って。

 俺は痛んだ拳を握る。腫れた頬越しに彼の顔を見る。

 平凡で、オタだったにいちゃんだ。しかし誇りと自信に満ちたその表情はイケメンのそれだ。

「あんたは、二番目だ。今日から二番目だ」

「明日香を俺にくれ! とおちゃん!」「よく言った我が義息子よ?!」

 華麗なクロスカウンター。沙玖夜さんは後にこう語った。

『バカすぎる。いい加減にしろ。誰が治すと思っている。THBFもだ』

 整備班主任の浜野さんの後を引き継いだ彼の息子だが、今ではすっかりベテランになりつつある。会った当初は高専出たてのなんとも頼りない様子だったのに。

『まぁ、装甲と人工筋肉の類は沙玖夜さんがいますので』謎の台詞を吐いて彼は俺を許した。なぜだろう。


 沙玖夜さんと大地にいちゃんは国際的に有名な傭兵らしい。

 そんなゴ〇ゴみたいな最終兵器が身内なんて信じられない。

 たしかに謎の芸能プロダクションやってみたり、金鉱掘ってみたりと怪しいことをやってはいるがまさかそんないい年して。

『民間警備会社と銘打ってそういう仕事はあるんだぞ』農田はそういって笑う。

 昨今は需要が大きいらしい。株を明日香がもっていた。その額を聞いてビビったくらいだ。

『結婚資金はとっくにたまっているよ! あさひにいちゃん!』

 満面の笑顔でそう言う彼女に俺は苦笑いをするしかない。

 赤ちゃんとは言わないが、二歳で最初の小遣いをもらった時からコツコツためて資産運用して親の名義で株を買ったり投資信託したり時にはバイナリーオプションなどの博打めいたやり口も駆使して結婚資金を貯めていたという彼女。

 俺の嫁は思ったより、いや思った通りにやる。


 やると言えばそうだな。

 確かにうちの一族は『下の名前を呼び合うと婚約が成立する』という掟があるにはある。

 古い風習なので今更だけど、あるのは事実だ。

 明日香は俺の膝のあたりを駆けまわっていた時からそういった根回しをしていた。

「だって、幸せになるって、最高の復讐じゃない」にんまりと笑う彼女。

 とても、とてもきれいだった。こんなかわいかったっけ。

 いや、赤ちゃんの時は本当にかわいかったけど、これは別格だ。


「ねね」


 THBFの顔面装甲が剥がれ、かつての『彼女』がほほ笑んでいる。

 今の『彼女』が待っている。俺の一挙一動の結果を。

「プロポーズ。してください。あさひにいちゃん」「是非もないです」

「だめ。やりなおし。改めて」「『明日香』」「『朝日』」

 夕日は沈みかかっている。だが夜の来ない日はない。

 絶望の闇が空を覆っても天には星が煌めく。

 涙が大地を濡らし、海になり、津波となって荒れ狂っても堤となって守るべき人がいる。

 俺は人間だ。卑怯で卑劣。弱くて駄目で臆病で言い訳だらけでどうしようもない人間だ。

 ゆえに。俺は愛する。人間の弱さを愛する。

 だから。俺は認める。自分を。彼女を愛する俺を認める。

 俺は。俺は。俺から逃げている。逃げていた。


 今日から、俺は歩む。

 アナタとともに歩む。弱くてどうしようもないから、皆に見てもらう。

 明日陽が昇ることがあったら。輝く朝日を共に見たい。

 遥か朝日を共に浴びたい。明日の香りを噛みしめて。

 絶望から立ち直って。涙をぬぐって。笑顔を振り絞って。

「明日香。結婚してくれ」「もう一回。朝日」甘え、抱きしめるその手は柔らかく。

「結婚してください。明日香様」「だめ。朝日にいちゃんには威厳が無いもん」おどけて見せるその表情は愛らしく。

「だまって俺についてこい。明日香」「むしろ朝日兄ちゃんに任せたら不安なんですけど~」学生服を揺らして答える。おどけたその声は小憎たらしい。

「じゃ、どうしろって」「ん」

 頬を染めて肩を伸ばす。背が伸びたな。明日香。

 かたかたと震える肩をそっと抱きしめると甘い香りがする。

 細いうなじにかかる長い髪。改めて唇を俺に向ける少女の鼻を俺は力いっぱいつまんだ。

「ま、だ、貴様には、は や い ! ! !」「いけず~~~~~~~~~?!(※意地悪の意味)」

 というか、お互いの両親や未来のいる前でそんなこと出来るかぁ?!

「今の男女交際、これくらいは当たり前よ」「どこで覚えたそんな歌ッ?!」

「歌詞だったら規約違反」「それ、何処の小説サイトですかっ?! 台詞です台詞!」「仮面の騎士なら当たり前の知識だな」「ワケわかんねえッ?! にいちゃん?! もとい義父さん?!」「あら、大地も遂に義理の息子が。そろそろ義理の娘を大空がつれてこないかなあ」「今すぐに。沙玖夜さん。では早速俺とらんでぶー……いてててっ?! 夢子許せッ?! 冗談だッ?! 本気で蹴るなッ?! マジで許してッ?!」

 そういえば、大空と親父は同名だったっけ。てかおふくろがマジでキレている。

 あのチビっこいおふくろがガチで蹴りを連打しているのだからかなり腹に据えかねたのだろう。

「私はどうせ胸はないわよ! 何よ沙玖夜さん沙玖夜さん! もうゆるさん!」「誤解よ。夢子ちゃん」「だいたいどうしてこの歳でこんなに綺麗なのよ! 嫉妬!??!」「夢子ちゃんだって若くて可愛いし」「説得力ないッ?!」

 ちなみに、うちの両親の容姿は相変わらず高校生カップルのそれである。

 むしろ俺と未来のほうが親に見える。と、思う。

「朝日は頑張ってね」俺の肩に抱き着く明日香。ナニってナニを。

「私は若いわよ~。こんな若い娘の身体を毎晩毎晩汚して……いでででっ?! 鼻をつまむの反則だからッ!? 朝日にいちゃん!?」「あん? 今は婚約者しかお前の前にいない!」「あ、婚約者で良いんだ」


 なんか、バカップルなのはうちの両親や大地にいちゃんや沙玖夜さんだけではないらしい。

 未来も遅ればせながら結婚するとか言い出している。相手を聞いて驚愕したが両親は歓迎していた。

 この辺、寛容と言うよりいい加減なうちの一族が恨めしい。

「でも、うちの一族と言えば」「何とかなるって」両親みたいに育児放棄して『異世界に新婚旅行に行ってきた』とかいうアホがいる一族だ。何があっても不思議ではない。ましてや同じハルカナルの一族である。

 親戚の祝いも偉いことになりそうであるがその辺どうよ?!

「成せばなる。ヤレばできる」「長い間子供ができなかった我々が言うセリフではない」

「そうよ。お母さん大学在籍中に朝日ができて大変だったんだから」生々しい両親の性体験とかいらないからッ?! 母さん?!

 今の母さんはどうみても合法ロリなので危険な絵面である。

 180超えた父さんと並ぶと明らかに性犯罪者と小学生だ。

「いろいろ、頑張ります。まずは味噌汁の味から」「極めているじゃない」

 明日香は料理上手でうちの味を普通に再現できる。

 いつの間に。オマエ料理苦手じゃなかったのか。


「だって、当然ジャン」「へぇへぇ」


 抱き着く彼女は思いのほか非力で。

 抱き上げたその身体は思ったよりずっと軽かった。

「お前、ますます重くなったぞ」「おっぱいが大きくなったのよ! お母さんには負けるけど!」「嘘つけ!」

 きっと、きっとこれからの俺たちは。

 孤独じゃない。

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