外伝 猛火(HOMH)
THBFちゃんの次世代機として生み出されたこの機体には小さなドラマがあった。
拙作『すぱ☆ろぼ!!』外伝。
私は目が見えない。
私は声が聞こえない。
私は言葉を話すことが出来ない。
私には手足がない。でも。仕事はある。
それだけが私の生きがいで、私の支えだ。
自分の糞尿の世話すら出来ない私だが、誰かを支えて守ることが。
で き る の だ 。
私の意識がクリアになっていく。
私の失われた瞳の代わりは光学センサー。
私は必死で舌を動かす。舌の動きが細かい作業を示す。
潰れた喉の痛みに耐え、ないはずの腕や足の痛みに苦しみつつ、私は手を動かし、脚ならぬ無限軌道を動かす。
この無限軌道の動かし方が少々感覚がつかみ難い。
私の生命維持装置に繋がった各種センサーが周囲の状況をリアルタイムに送信してくれるが多少のタイムラグがあるのは否めない。
それを補填する人口知能の勝手な動きに辟易しつつ、私は歩を進める。
世間様では『トーフちゃん』と呼ばれる第一世代機。
その後継機種として生み出された猛火(HOMH)は外部コントロールを基本として同じシステムを用いた無人機体に統括されて運用される代物だが、私のようにVR技術の披見体となった患者が操作していることもある。
家族を含めて全てを失ったあの日から、私の戦いは始まった。
膨大な借金だけが残り、親戚も私の元から去り、何も見えない聞こえない中から必死で光を求めて幻の腕を振るって声なき暴言を放っていた私に。
『仕事』が来た。
『新型機を操り、放射能汚染区域を浄化する』
仇討ちといっていい仕事内容。
何より生命維持に必要な費用は一切免除される。らしい。
この身体では給料を貰っても嬉しくはない。だから、私は仕事をする。
無骨な放射能汚染地域無人歩兵(HOMH)の中身が、かつて美少女と呼ばれた私だなんてだれも知らないだろうし、知ってほしくはない。
今の私は花の美しさもわからず、その香りもわからない。
もし嗅覚が生きていれば、病院の独特の臭いがしたかもしれない。
だけど、今の私には関係がない。
レーザー除染装置などを駆使して、除染を行い、あるときは人の入らない、入れない場所に挑む。
冷たい棺桶のような病室で私は微笑む。きょうも改心の仕事をしたよと。
第一世代機が廃棄されることが決まった。
どうも猛火の実験に使われるらしいが。辞めてほしい。
彼らは罪びと。罪を償うために命を懸ける。
私はなんだろう。
ダレガワタシヲコウシタ。ワタシガナニヲシタ。
答えは出ない。神さまのご意思なら、どうしてこうされたのだろう。
答えは出ない。
それでも。
私は誰かを幸せにするために猛火を操る。
私が幸せになれなかったからと誰かを不幸にしたいとは思わない。
恨みがないとは言わない。憎しみがないとは言えない。
これが私の復讐で、これが私の生きる道だから。
私は目が見えない。
私は声が聞こえない。
私は言葉を話すことが出来ない。
私には手足がない。でも。仕事はある。




