今がある。だから。
「ここまでだ。ジャップども」
……なに言ってるんだかわかんねぇよ。
……石川町の山奥に隠された旧陸軍の地下大迷宮での争奪戦は最終局面を迎えていた。
がら空きのトーフ(THBF)周りを警戒していた『敵』の部隊は何故か全員気絶していた。
「斬られた!!斬られた!!」「弾が!弾がっ!空中に止まりやがった!!化け物だっ!悪魔だっ!」
……ナニ言ってるんだ?こいつら……英語か?判らん。
とりあえず傷ひとつついてないのだけは判る。あと、彼らの装備がバターのように切断されているのも。
……意味わからん。
「よくわからんが今のうちだっ!早く乗れっ!」特殊作戦陣の隊長が叫ぶ。
「判ったっ!!!」俺はトーフに乗り込み、内部の専用スペースに『マルニ』を収納。
そのまま逃亡を図る俺と自衛隊特殊作戦陣のみんな。
ちなみに、『敵』は『敵』だ。上の喧嘩や暗闘、『国家間の代理戦争とか』は俺達には『関係ない』。
そして、前述の状況に戻る。
……。
「死ねっ!ジャップども!!」いっせいに銃を構える連中。
俺はTHBFの両手を広げ、迎え撃つ。
「ここは旧軍の火薬の塊の施設だっ!!『マルニ』が爆発してもいいのかっ!!テメエラも死ぬぞっ!!」
「かまわん。地球のためだ」な??!
恐ろしい勢いで放たれた銃弾が、トーフを襲った。
「トーフ??!」くんなっ??!
「死ね。鯨を殺す薄汚い罪人どもよ」さっきから?英語でしゃべってんじゃねぇ??!!
「データリンク。終了。射撃許可を」……。
「みんな。やっちゃってくれ」「了解」
THBFの「ヤマタノオロチ」の支援を受けた特殊作戦陣の『銃』は恐ろしい精度で『敵』を迎え撃った。
各銃頭についた照準器からのデータリンクで、同一目標を確実に打ち抜く。その威力、精密性は。
……吐き気がするほどだ。
「……実弾でなくて良かったな。テメエラ」
俺は吐き捨てた。まぁ全身の骨が粉々になっているとは思うが、死ぬよりマシだろ。
「なぜ実弾ではないのですか」と俺は彼らに聞くと「総理の指示だ」と返ってきた。
なんでも『マルニ』は60年以上起爆せず保管できていたが(震災にも耐えた)、今後はわからんらしい。
「万が一、旧軍の火薬か何かに着弾して、連鎖爆発を起こしたら。
そして『マルニ』が起爆せずとも放射能を撒き散らしたら」
……恐ろしい。なんていうのを作ったんだ。旧軍は。
「……もともと、平和利用のための技術だったのだよ」
「おいおい。特殊作戦陣の奴がベラベラしゃべっていいのか?」
俺は隊長にため息代わりのジェスチャを見せる。
「この莫迦どもに聞かせたいし、コレは俺の独り言だ」隊長も笑う。
「おい。タバコすわね?」俺は器用にトーフのマニュピレータを動かして『敵』の一人にタバコを渡した。
もちろん、動けるわけが無いので、特殊作戦陣の誰かが火をつけてやる。
「火なんかつけていいのか?」と連中は英語で突っ込んだようだが、俺達は無視した。
「……死ねっ!死ねっ!神によって決められた定めだっ!鯨を殺す人間は地球の寄生虫だっ!」
「うるさいだまれ。一瞬の油断が命取り」カカッとバックステッポで意味不明の罵倒をかわす隊長。
「……かつての戦局は、わが国に不利だった」
次々と炎が町を焼き、子供を、女を、赤子を焼いていった。
そして。
「まさか、……奴らが虐殺にしか使おうとしか考えなかった『炎』を平和利用なんてな」
逆に連中を激怒させてしまったと苦笑する隊長。
まぁ、向こうが使うというなら、事前にその基地を砕くしかないと。
しかし、反対された。「そんなことをすれば人類が滅ぶ」と偉大な方の反対を受けて。
「実は、人を殺さないで済んで。喜んだよ。その研究者は。……だが、彼も人間だ。
……仇を討てなかったと。悩んでいたよ。そんな、人を殺したいと思った自分に、悩んでいたよ」
……。
「その研究者は。俺の先祖さ」……そっか。
「タバコ、もう少しくれよ」動けない『敵』たちは不満の声を上げてニヤリと笑った。
「おいおい、肺ガンになるぜ?『地球のため』だろ?」隊長や隊員たちは苦笑する。
殺し合いを仕事にする彼ら也の笑えないジョークだ。
「いいんだ。一服。吸わせてくれ」
金色の髪の青年はバツが悪そうに笑った。
「俺達は実弾を使ってたんだぞ」
「誰も死んでいない。問題ない」
「くそったれのポンコツロボットめ!!!
まさか射撃の精度をここまで高めて、こっちの攻撃を3D映像でごまかすなどっ!!」
いいじゃないか。
「お前、人殺しにならずに済んだ感想を聞かせてくれよ」
……俺は、結構いい気分だぜ?
後書きにかえて。三人称。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あ~あ。たいくつ~」
幼女はコロコロと転がり、彼女の『兄』である赤ん坊に笑いかけた。
「『父さん』も『母さん』も『綾音』ももうちょっとしたら帰ってくるからね」
赤ん坊はにっこり微笑む。
「しぬのっていたいよね~。『お兄ちゃん』。ぶっとんで、うけみとれなくてさ」
幼女が謎の言葉を続ける。赤ん坊は愉しそうに笑っている。
「ねぇねぇ。『お兄ちゃん』。みんなもうすぐで帰ってくるんだよ?」
幼女は年齢に似合わぬ笑みを浮かべた。
「あさひにいちゃんと、わたしでけっこんしてね。
みんなうんでさ。もどってきてさ。たのしみだねぇ」
「ちゃんと、いきてかえってきてね。あさひにいちゃん。
『わたしを轢いたせきにんとってください』。あさひにいちゃん」
そういって、彼女はまたアンパンマンのDVDの再生ボタンを押した。
生まれ変わり。その存在は。今日でもオカルトの類とされる。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(次回予告)
無事、『マルニ』を確保したTHBF。
だが、彼らTHBF隊には祝福も賞賛も与えられない。
失脚した農田の直属部隊、THBF隊に下された新たな命令とは?
次回。すぱ☆ろぼ!!
動乱編。巨大ロボよ。栄光の架け橋へ。
「栄光の架け橋へと。」
ご期待ください。




