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すぱ☆ろぼ!!  作者: 鴉野 兄貴
動乱編。巨大ロボよ。栄光の架け橋へ。

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34/54

悲しみや苦しみの先に

 「父さん。また避難なの?」

 少女はいつしか大人になっていた。

「今度は、大丈夫さ。もう逃げなくてもいいさ」彼女の父は力なく笑ったが。


「旧陸軍の爆弾が発見されました。避難区域の皆様は速やかに最寄の学校、市役所に集合してください!!」

 役所の職員が大声で一戸一戸の家々を叩いて回る。

「早く逃げてください!!!警察、消防の皆さんの指示に従い、周辺住民は速やかに逃げてくださいっ!」


 古老たちは何故か大昔に何故か爆弾ひとつ落とさずに地面スレスレを飛んで機銃だけ撃っていった変なB29のことを思い出したが、彼らの記憶は避難のドサクサで掻き消えた。


「あれ?トーフちゃんだ。珍しいね」いまさらTHBFの出番は無い。

 放射能関係の案件は各都道府県が警察や消防など配属先は異なるものの、

 一機は保持している汎用機『チハ』とその無人重機群にとって代わられている。


 かつての少女は少し不安を感じていた。

 曾おばあさんが不思議なことを言っていたのを思い出した。

「米軍は東京よりこの町に来るのが早かったねぇ」

 曾おじいさんが「変な石掘っていた」ということも。


「早く!早く皆さんバスに乗ってください!!」

 町役場の職員達が絶叫する。バス?もうほとんど除染は済んでいるのに??


 警察、消防のみならず、自衛隊の車両が次々とやってくる。

「自衛隊の車を使って下さいっ!わたし達は現場に向かいますっ!」

 ……残されたあの自衛隊の隊員たちは何処に向かうというのだ??


 異常どころではない。たかが爆弾ひとつに?


「早くのって!!」知り合いの役場の人が彼女に乗車を促す。

 トーフと彼女が呼ぶロボットがおどけたようなポーズをとってよろめくと彼女は微笑んだ。

「うん。わたし達の町。任せたよ。トーフちゃん」


「また、体育館暮らしなのね」そうなる。慣れたけど。やっぱり良い思い出が無い。

「ふふ。大丈夫。トーフちゃんが頑張ってるから」隣の女性芸人が優しく微笑む。

 慰問と称して彼女達と暮らす芸人さん(『響子』と彼女は名乗った)には何故か手足が無い。

 でも、彼女の雰囲気と優しい言葉、愉しい話題は彼女たちを轢きつけてはなさない。

 和泉いずみと名乗る『響子さん』の妹さんとはすぐに仲良くなった。

 利発なマネージャーでもあり、姉の世話をしっかりこなす良い子だ。

 酪農の藪也やぶなりさんが彼女の背を優しく叩く。「大丈夫だよ!」

「どなたか具合の悪い方はいますか?」金田さんと名乗る政府の官僚さんが優しく皆をいたわってくれる。



 数日後、銃痕のような凹みが多数ついたトーフ(THBF)の機体が運ばれていくのを、彼女は映像でみた。

 何があったのかはわからない。山の奥にあった爆弾はなんとか撤去できたらしいが。


 彼女は久しぶりに家のドアを開いた。

 ホコリの匂いと、甘い太陽の香りがした。

(補足説明。東力編での放射能漏れ隠蔽事件での避難区域は大きく設定されています)


(次回予告)

石川町の山奥に隠された旧陸軍が遺した地下大迷宮にて。

主人公たちと謎の『敵』との『マルニ』争奪戦が開始された。

語られざるその行方は。

次回。すぱ☆ろぼ!!

動乱編。巨大ロボよ。栄光の架け橋へ。

「今がある。だから。」

ご期待ください。

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