誰にも見せない泪(なみだ)。(弔いの鐘か 明日を告げる時の鐘か 改題)
巨大な「爆弾」が日本を救います。
その爆弾は空を飛んだりしません。戦おうともしません。
いえ、最初から爆弾としてつくられてすらいませんでした。
外国との関係はあまりよくありません。
資源を狙って世界中がにらみ合い、
肌の色と人種で優劣が決まり、金繰りで人を殺す世界です。
空気を汚すガスが空を覆い、天を鉄の翼が覆いだしました。
だけど。
未来には希望があります。
もう一度言います。未来には希望がありましたっ!
1934年。日本国の若き天才たちは原子核の謎に迫ろうとしていた。
「彦坂モデル」。
小額の財源。冷遇された立場から提唱された理論。
『原子核の父』ボーアすら「クレイジーボーイ」と呼んだ理想に。
人類は恐怖した。
~1930年代。仙台市~
「だから。アレはおかしい」
熱く、静かに語る青年と友人は仙台市の目抜き通りを歩いていく。
「ボーア、いや西洋の原子核理論に喧嘩売るのはお前くらいだよ」静かに。熱く語る青年に友人はため息をついた。
「別に喧嘩なんて売ってない」そういう青年は友人に苦笑した。
「つまり、だ。陽子と中性子とが渾然一体になっていて、液滴型の原子核を作っている。アレはウソだと」
「そうじゃないと説明できない」やっぱり喧嘩売ってるじゃないか。
「完全に分かれている。その上で互いに階層的に位置して太陽系の星々のような構造を描いている」
まぁ面白い話である。もっとも友人には理解できるが、周囲を通る他人にはまったくわからない話だ。
「その引き合う力は強力だ」ほう。
「だから、分子同士の結合と違って、火で焼けばほぼ簡単に壊れるってわけではないと?」
「うーん。どうだろうか。太陽の真ん中くらいの超高温や高圧があれば」「それ、壊せないって言うぞ?」
いやいや。
青年は続ける。
「……原子核内の引き合う力が比較的不安定な物質を探し出して、
その原子核内に超高速で小さな粒子を叩きつけたら……壊せるんじゃないか?」
友人は腕を組んで悩む。
「ちょっと。それはものすごく。困るな」
友人に青年は答える。
「ああ。一個二個なら問題ないが、連鎖して同時に壊せる場合は困る」
「「世界が吹き飛ぶ」」
冗談みたいなエネルギーが生まれる。
「我々はそれをどうやったら出来るか調べた上で、それを制御する方法を得なければならない」
なんらかの方法でその爆発を邪魔する技術が必要だと続ける青年。
できるのか?そんなこと。「出来なければ。僕らが滅ぶだけだ」
「ソレを止める方法を見出せればどうなる?」「もう戦争はしなくて良い」
「聞けっ!そのエネルギーは小さな太陽のようだっ!
資源の無いこの国すらっ!一生困らないエネルギーを得られるっ!何処とも戦争しなくていいっ!
特許権だけで!僕らはっ!日本はっ!生きていけるっ!」「おいおい。軍の莫迦共に聞かれたらつかまるぞ」
「僕らだけではない。世界中だ」
「……そんなにすごいのか」「もちろん!!!」
ギリシア神話の神を滅ぼす炎のようだ。
神を滅ぼす力を持つゆえ、人に与えられることは無かったが。
一人の神が無断で持ち出し人に与えたという。
その神は願った。「人が正しく炎を使う」ことを。
「世界中の人間が平和に暮らせるんだぞっ!」「……夢のような話だな」
鯨程度で大砲もってきて300年平和に暮らしてきた国を我が恫喝してきた連中がそう上手く平和を模索してくれるのか。
友人は一瞬そう思ったが。彼もその夢を追いたかった。
ろくな設備も予算も無く、鉛筆一本で研究してきた。
だが、二人の鉛筆の先には。誰も見たことの無い希望に満ちた未来があった。
1929年。アメリカ発の世界大恐慌の影響で東北の経済は壊滅状態になった。
続く1931年。満州事変。その翌年には5.15事件。世界中が金繰りのために狂っていく時代だった。
軍国主義に。
日本の行動に憤慨した諸国の研究機関は彼らとの情報交換を切った。
そんな時代だからこそ。彼らは信じていた。日本の未来を。人類の可能性を。
「貴方の論文を審査したが。本誌に掲載するには値しない」
彼らの乾坤一擲の論文はボツになった。
もっとも、彼らの提唱はまったく受け入れられなかったわけではなかった。
ただ、「すごい力を制御して、無力化し。平和利用する」が。
「すごい力で虐殺する」に変わった程度だった。
1941年。彼らの理想はひとつの結論に達した。
「原子核エネルギー利用の一方法について」
今日では原爆技術の応用として作られた希少なウラン235を利用する原子炉ではなく、
安定したウラン238をそのまま利用する当時としては夢のエネルギー源の物語だった。
「これで世界は平和になる」賢明なものは誰もがそう信じた。だが時代はそれを許さなかった。
たった一発の爆弾で吹き飛んだ町。
少女は閃光だけで蒸発し、神の教えを説く教会はその信徒の爆弾の目標にされて信者ごと焼かれた。
全身を溶かされた人間が幽鬼のようにさまよい、炎に包まれた川に沈んでいく。
黒い雨が大地を汚し、見えない光が人々を焼き、毒となって冒していく。
「これがっ!これがっ!!
文明の結論なのかッ!」
かつての青年達は慟哭した。
彼らの一生は。優遇だったとは言えないといわれる。
……だが。ご安心を。
彼らの夢も理想も。まだ消えていないから。
彼らの理想と夢は、今日でも日本の各大学に受け継がれている。
特殊放射能防御服(THBF)は。彼らの後輩たちが生み出した。
人を殺さないため。人の夢を護るため。微笑みを護るものを救うために。
そのロボットは人を殺さない。そのロボットはお米を食べる。
そのロボットは毒の水を綺麗にして、目に見えぬ悪魔の光から人を護る。
歩くことすらおぼつかず、走るなどもってのほか。ジャンプすらろくに出来ない。
それでも。
貴方を護ってくれる。
貴女の幸せを護るために剣を振るい。
何処の誰から頼まれたか。命を賭ける価値も無い汚れた人を護ってくれる。
THBFは。もっとも弱くて優しく。強い。
あなたを護ってくれる。そんな『スーパーロボット』である。
(註訳)
作中で1941年に発表されたことになっている論文の元ネタである、
彦坂博士の「原子核エネルギー利用の一新法に就いて」は戦後の1950年発表になります。
御話としてのフィクションとしてお願いします(2012/5/9追記)
(次回予告)
ウソついたらハリセンボンのますっ!
かつて少女を轢き殺した青年は、幼き命と約束を交わす。
きっとかえってくることを。命を護ることを。
次回。すぱ☆ろぼ!!
動乱編。巨大ロボよ。栄光の架け橋へ。
「だからもう迷わずに。」
ご期待下さい。




