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すぱ☆ろぼ!!  作者: 鴉野 兄貴
活躍編。巨大ロボ。羽ばたけ。

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30/54

神様。お答えください。私達が何をしたのですか。

 あれから何年経つのか。月日を数えるのが楽しかったのは子供の頃だけ。

 あとは後悔と。虚しさだけ。交通犯罪者って奴はそういうものだと思う。

 未成年ということで「居眠り運転」と称して人様の車を使って子供達を轢いて回り。

 ……改心してないクズからみてもクズってやつも。いるには。いる。


「今回、元内閣総理大臣のK様を招き……」

 ゲストとしてトーフ君こと俺もいる。記念式典だか鎮魂式だか知らんが、恒例の行事になった。


 震災からもう7年。THBFが導入されて二年が経つ。

 日本の震災復興はTHBFの導入を契機に震災復興と言うだけではすまないレベルにまで到達した。

 第二のバブルというものもいる。まぁバブルと違って諸悪の権現どもは社会主義国家よろしく粛清されてしまった。

 中国の識者が言うには「日本はもっとも理想的に成功した社会主義国家だが、最近はわが国の轍を踏みかねぬ」だそうだ。


 この国は何処に行くんだか。マジで怖い。

 THBF隊が総理直属権限を持つといっても農田の任期が延長されている限りだろうし、俺達も今後はわからん。

 そもそも、危険だからこそ女子供がいない部隊だしな。みな元交通犯罪者や元ニートばかりだ。


 こんな行事は無意味だな。と農田に語ったことがある。

「どうして?」農田は苦笑した。彼もあの地震で家族を喪ったらしい。

 同時に、神仏を信仰しなくなったらしい。特に仏罰の存在などは激しく否定する。


「だって。喪った人は還ってこないじゃないっすか」

 一人で生きている。そんな奴は俺みたいなクズだけだと思う。

 大切な人が喪われたら。その人が占めていた『心の部分』がごっそりと消える。無くなる。

 その喪失感、無力感は絶対に癒えない。癒せない。


「……そうだな」農田は苦笑いした。

 THBFことトーフをごり押ししたのでギャグで震災復興資金を運用したと評価されている農田だが。


莫迦ルーピーはあの性格だからさておき、Kは本当に一時期大変だったよ」

 お遍路参りしてたしな。それどころではないだろう。


「あの時は、本当に情報が無かった。

 ……莫迦があの行動力で頑張って、東力に情報を開示させたのが6ヵ月後だぞっ!」

 当時総理大臣だったK氏は致し方なく10万の自衛隊を動員。

 即座に自身も福島県に乗り込み、事態の収拾を図らざるを得なかった。

 結果的に、脚を引っ張ることとなったとしても。


「私は神仏を信じなくなった。彼は神仏に亡くなった方々の救いを求めた。

 本当に莫迦は羨ましい。家柄もある。金もある。行動力も決断力もある」

 ……農田。それ褒めていないから。


 莫迦で無能だが、人をまとめ、意見を調整する能力に秀でている。

 ……フリに徹して総理の座についてからの農田の活躍は俺も少しは知っている。


「なんの家柄も援助もない。それが我々。

 我々は外国のスパイからの支援金だろうが、なんだろうが使えるものはみな使う」

 そうやって二人は総理大臣になった。


「悪い奴だろう」農田は苦笑いしていた。

 市民のために総理大臣になって、いつしか特定の「市民」の援助なしでは行動が出来なくなる。

 国家のために総理大臣になり、いつしか国家が何なのかわからなくなっていく。

 ……。


 ……粛々と進む式典。

「神様。私達が何か悪いことをしたのですか」

「神様。友達をかえしてください」「神様。息子を、娘をかえしてください」

「神様。父さんや母さん。おじいちゃんおばあちゃんを返してください」

 そう思い、嘆きながら俺達は歩む。傷は消えない。癒えない。埋まらない。


「……!!!」投石。

 別に俺はなんとも無い。だが。

「危ない!!」

 ……K氏が俺をかばった。


「痛っ……」彼は頭を押さえる。血が出ている。

「だ、大丈夫ですかっ!Kさん!!なんでロボットなんてかばうんですかっ!

 俺は石なんて痛くも痒くもないっすよっ!早く怪我を診ないとっ!」


「何がトーフ君だっ!なにが元総理大臣だっ!

 かえしてっ!かえしてっ!わたしたちが何をしたのっ!みんながなにをしたのっ!」

 投石をした人が取り押さえられている。


「……問題ない。放してやれ」

 K氏は呟く。「しかし」SPたちや主だった者が異論を挟もうとするが。

「放せ。……そういっている。彼らが何をした?……何もしていない」

 そして多少の騒ぎはあったが式典は粛々と続いた。


「……なんで。なんで俺を。石なんて俺はなんとも無いです」

 後で、戸惑う俺にK氏は笑いかけた。

「身体は傷つかぬ。しかし心は確実に傷つく」

 ……。


「神様。私達が何か悪いことをしたのですか」

「神様。友達をかえしてください」「神様。息子をかえしてください」

「神様。父さんや母さん。おじいちゃんおばあちゃんを返してください」

 そう思い、嘆きながら俺達は歩む。喪った穴は埋まらない。

 心の傷は消えない。癒えない。埋まらない。


 でも。

 強くならなければいけない。

 誰かを喪った心の穴は埋まらない。

 だからこそその穴を。その穴を越えるほど大きく強くなる義務が俺達には。ある。

 残った大事なものを護るため。残されたものだからこそ。

 強く。やさしく。前に進むために。小さな器に無理をして。


 だから。見守っていてください。いつかあなたたちの御許に向かうとき、にっこり笑って逝けるように。

活躍編は之にてラストです。

次回から別展開になります。


コンビナート火災を扱う予定が、調べてみたら「???」連続。

いろいろ悩んだ末、いつぞやの盗撮事件を参考に莫迦な事由にせざるを得ませんでした。


(次回予告)

次章。新章突入。過去の悪魔が日本を包もうとしている。

THBFトーフよ。人々の未来を護れ!

次回。すぱ☆ろぼ!!

動乱編。巨大ロボよ。栄光の架け橋へ。

「誰にも見せないなみだ。(弔いの鐘か 明日を告げる時の鐘か 改題)」

ご期待ください。

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