今が其の時だ。(地獄の窯。悪魔の水。改稿。)
「まぁこんなこったろうと思ったが」
核燃料の反応はいまだ沈静化しきっていない。それは知っていた。
「……あいつら、なんで死刑にならないんだ?」
交通事故で子供を殺した俺は当時の残業時間週150時間を超えており、早めに交通刑務所を出所している。
だが、交通事故なら人を何人殺しても、犯人一人が死刑になるだけだ。しかし、あいつらは。
「……糸子婆ちゃん。ごめん」
逃げてくれ。無理だ。THBFの中は特殊溶液で満たされている。涙がでてもわからない。
燃料プールの水は、いや、水棺の水は。底が完全に抜けていた。
つまり、地下水は過去五年近く、放射能に汚染されていた。
……。
……前後する。
俺達は外部から石棺を更に作成、沈静化を待つ工事に入るため東力の許可を得、福島第一原発に入った。
「……おい。トーフ。燃料の反応ってまだ続いているんだろ?」うん。福田が言うなら間違いない。
あと、東力の発表には不審点が多すぎた。放射能の量とか。除染の具合の割には放射能が減ってないとか。
「……で、問題解決の後回しな外部テントな石館の工事か」仕方ないだろ。おっちゃん。
肝心な部分には入らせてもらえないんだし、そうするしかない。うん。
流石におっちゃんたちも防護服を纏っている。防護服つきパワードスーツと無人重機大活躍である。
異変は。当たり前のように起きた。
作業員の一人に放射線の影響を察知した俺は彼を即座に機体に収容、
安全圏の病院に搬送した。東力は放射線の影響を否定したが。
あと、一人しか運べなかった。最終的に三人。
その一人でさえ、暗闇に対する恐怖でパニックに陥った。
拘束ではなく、もう少し快適さ追求すべきだと提言する羽目になった。
残りふたりは……マニュピレータで掴んで逃げた。
握り殺さないか終始不安だった。
あの三人のその後の容態だが、残り二人はかなり危ない。
もし、内部被爆していたら徐々に赤い血の達磨になって死ぬ。
そうなったら、皮膚移植も関係ない。ゆっくりと体中が焼かれていくのだ。
「おっちゃん。ちょっといい?」「うん?」飯の合間に何気ない会話をする俺達。
と、いってもサイズの差がでかいのでモニター越し、それも二人の作業場は別々だ。
会話自体に意味はない。
……見るやつが見たら俺達。おっちゃんの瞼と俺の指の動きがモールス信号になっていると見抜いた筈だが。
THBF。トーフには収容した避難民のパニックを少しでも減らすために音楽をDL可能だ。
他に、通信系の車両や本体の通信機能が優れており、外部の動画投稿サイトに実況中継を行う能力がある。
まぁ、今回、実況は東力の許可が下りなかったのだが。
俺達は雑談をしながら、モールス信号で会話する。
「炉心融解した挙句に、地面に抜けていたらしい」「な……?」
福田がノンビリと同じことを言いながら外部からデータを送ってくる。
俺の理解力が足りないだろうと丁寧な註訳がついている。
ちなみに、別ファイルに偽装されているし、福田との詳細な会話もモールス信号と自衛隊の暗号を使っている。
「東京はおろか、もっと遠くでも放射線被害が確認されている」「……そうか」
次々と表示されるのは福田の過去から現在までハッキングしたデータである。
「……水で封印って言ってなかったか?」「うん。底に穴が開いてるのにね」
その水は過去4年間にわたり、周囲の地下水を汚染しつくしていた。
「上をいくら除染しても無駄ってワケかッ!!!!!」「そうなるな。おっちゃん」
俺達工事に当たるチームは新たな石棺を上から作る作業中。だが、これは国民の目をそらすためのもの。
「そして、除染の代金は東力の関係各社を通して彼らにダッポリ♪」永遠にネ。とは福田の弁。
「……おい。人殺しの俺が言うことじゃねぇが、なんであいつら死刑にならねぇんだ?」と憤る俺に、
「それがこの世の七不思議。退職金はそうやって放射能をばら撒いて迷惑をかけたり殺した国民の皆さんの税金から5億円♪」と福田はホザいたが。
「……おい。トーフ。ちょっと耳を貸せ」おっちゃんはニコリと笑ったが、それは壮絶な笑みだった。
……。
………。
「……爆発だっ!!爆発だあああっ!!!!!!!!!!逃げろっ!退避だっ!!退避だっ!!」
放射能だっ!放射能がぁああああっ!!!!!!!!!!!と誰かが叫んでいる。
本当とは言いがたいが嘘ではない。爆発は俺の所為だし。何処も壊れてない。
物凄い勢いで逃げる連中と立ち向かう連中は明暗が分かれた。
「おそらく、封印内部で燃料が急速に反応したに違いないっ!!」東力の社員さんが叫んでいる。
「誰かが石館の封印から、内部に入り、燃料の反応を抑えなければっ!!」「俺が行きますっ!」「俺が行くっ!」「いや。俺が」
うん。実はこの東力の社員さんたち、おっちゃんの幼馴染。
「生活がある」「収入を絶たれるわけには」彼らは最初渋った。が。
「反省するって言わなかったか?」
「あれは。えらいさんの話だ」俺らには関係ねぇと彼ら。
「社長が嘘でもそういったら、社員だってそうだ」おっちゃんが言う。
「天皇陛下だって、被害者の皆様に膝をついて接したなぁ」お前らはどうだ?
「知ってるか。何人も殺した死刑囚だって、ソイツしか死刑にならない。家族ごと皆殺しとかにはならん」
俺の言葉にそりゃそうだろと彼ら。
「お前らの仕出かした事は、人一人の命どころか、人類に永劫に等しい呪いをばら撒いたようなもんだぞ」
黙る彼ら。
「口だけの反省ならいつでも出来る。
贖罪とは。死んだ人たちの命のために、彼らが死んだ意味を見出せる物語を作ることだ」
農田がそういってた。「変えたい。そう思ったら。……今が。其のときだ」
「俺……ぼくなら、THBFなら封印内部で活動できる」
「しかしっ!!封印は破れませんっ!!」知ってる。
「しっかり封印してあるね……ここらでいいかな?」でかい刀を抜く。
せいやっ!!!!!!!!!!!!!!
一瞬で俺と作業ロボットたちが入るための穴が開く「すぐ塞いでっ?!」
「逝って来るッ!」「気をつけてッ!!」
……そして。冒頭に戻る。
封印内は、俺達日本人が目をそむけていた現実は過酷であった。
「……地下水が汚染されていたのを知っていただろ」「……ええ」
「クソどもめ」「私達に何が出来るって言うのですっ!!!」
ちがう。ちがうんだ。
「今、すべきことを。俺達がやるんだっ!!!!!!!!!」
おっちゃんが、東力の社員さんたちが叫んだ。
「トーフ!東力が溜め込んで放置している反応制御剤、全部使えっ!!まずはそっちだっ!」
「……私達は、全部を二葉町の皆様や福島県知事、マスコミに」
「情報は、僕がすばやく送信します。日本国民の皆様……」ヤマタノオロチの本領発揮だ。
ネットに飛び交う不確定情報、確定情報、デマをすばやく分類。各地、個人の安否情報をアップ。
外では警察、消防、役場のみなが己が危険を顧みずに一般人を誘導している。自衛隊の出動は県知事の要請が必要なのだ。
……お、おい。福田。今チラッとやばそうなデータ見えたぞ。
「……これくらいの金が動いていればねぇ。そりゃ誰もつっこまないね♪」
「……こんなもん見せられたら俺まで消されるんだが……糸子婆ちゃんの野菜をさ。今度くいに行くんだが?」
「全力で辞めておいたほうがいいよ。君はまだ若いしね。
何度も言うけど、放射線被害については政府発表は大嘘だから」
「たとえ、核燃料の反応がなくなっても」「ああ。もう地下水は汚染されているね♪」福田。お前の笑顔、ちょっと怖い。
「これ、『なぜか』ネットにながれちゃった♪」「おーい!」いや、いいけど。
……なあ。トラックで偉い連中をチェーンしたら爽快じゃね?「無理。どうやって集めるの?」
「じゃ、偉い連中の家を爆破する」「クズの警備は厳重♪民草は野に放置♪ゴミをダイヤ扱い♪」
不穏な会話をしながらも作業はやめない俺達。
「それに、君の操る車が転生トラックだったら異世界で勇者として復活しちゃうんじゃない?」
どこぞのWeb小説じゃねぇんだぞ。でもそれある意味極刑じゃね?魔王倒すまで殺戮の限りの人生とか。
「……ところでさ」「あん?」
作業の手は止めないが、俺達の意図は福田にも届いた。
放送システムが『誤作動』して世界中に事実が配信されていく。
なんだか解らんが、色々なシステムを乗っ取ってるらしいが、俺の所為じゃない。たぶん。
「なんか、地下で変なの動いているんだけど」福田が愉しそうに笑っている。
福田について誤解しているヤツは多いが、彼は喜怒哀楽の内、『笑うことしか出来ない』人間なのだ。
「笑ってはいけないナントカ」の某番組にでたら生きて帰れないこと間違いなし。
「どゆこと?」「面白いよ~♪」
「……これはっ??!!!!!!」「ふふっ♪」
次々と現れる地下水や地下建造物、下水、上水のデータ。そして膨大かつわかりやすい註訳。
いつの間にっ??!いつの間にっ???!!
「説明しよう!これが秘密裏に地主にも双葉町にも福島県知事にも許可を受けず勝手に開発、建造された大規模地下水除染浄化システムッ!なのさッ!!!」
福田の声は実に愉しそうだった。
(次回予告)
戦い済んで日は暮れて。地獄の後に希望を燃やして人は立つ。
次回。すぱ☆ろぼ!!
激動編。巨大ロボよ。一番の福を運べ。
明日のために戦うのなら。(『飛べ。八咫烏。』改題)
ご期待ください。




