宜しく先輩!
『現場』には既に無人ロボット群が集まっている。
主人公はこの国の、世界の未来の為に『戦う』。
「宜しく先輩!今日からお願いします!」「……」福田が防護服を着たまま頭を抱えた。
ちなみに、相手は返事もしない。というか出来ない。
いままで避難区域内部で瓦礫除去作業を担当してきた大手ゼネコン所属の無人重機群と俺は合同で仕事をするのである。
「……ハルカナル。あまり言いたくないが」「偉大な先輩っしょ!?」
そうだな。福田は笑った。防護服を着たまま笑うのはどうなんだ?
「おー!コレが豆腐君か!!」「新人!バリバリ働けよっ?!」
俺は避難区域に入ったら最後、基本的に『トーフ』ことTHBFから降りることはない。
よって、国民は俺の顔や素性を知らない。俺も話したくないし。
俺の周りを囲むのはヤクザみたいな(というかそのもの)人々だが、とっても気さくな方々である。
防護服をつけましょうよ。皆さん。
「おー!!しゃべった!しゃべった!豆腐君がしゃべったぞ?!」
「防護服か?!エダノさんみたいにつけたほうがいいなっ!」「先帝陛下はつけずに励まされたがなっ!」
「先帝陛下!陛下!!あの身体で無茶しすぎだっ!俺は!お前が!好きだっ!!!!!」
「先帝陛下は最高すぎる!」
あまりにも病人を酷使しすぎだと国民の非難を浴びた政府は、皇室典範の是正を行った。
先帝陛下は摂政を得た後、自らご退位された。というかさせられた。
現在は独自の男系遺伝子を持つものの順位で天皇を務めることになっている。
男系遺伝子は存続の方針なので、女性天皇はありだがその子供は天皇になることはないらしい。
だが、病を押して尽力された先帝陛下夫妻の人望はマジ厚い。むしろ熱い。
「おー!俺、娘に写メ送らないと」
「俺も孫に送るぜ!!!!じいちゃんは豆腐君を手下にしてるんだってなっ!」
「あ~。俺も俺も」「俺もっす!」
「え~と。『ボク』は非常に役立たずとは思いますが、偉大な先輩方の足手まといから一刻も早く脱却できるよう、頑張りたいと思います。宜しくお願いします」
頑張ってお辞儀してみる。彼らは当然のように左右に動いた。俺はこけた。あやうくまた人を殺すところだった。
「あははははっ!!!!!!!』皆大笑い。
「やっぱ二足はダメだなっ!」「最後は人間様よっ!」
福田が無線で一言。「瓦礫除去には二足歩行ロボットが殆ど使えないのを彼らは理解している。
君のいく場所は通常の人間が侵入すればタダでは済まん地域になる」
「いってみようか!新人!!」
ノリのいいヤクザな人々だが、俺にとってはこっちのほうが助かる。
俺は重機群を繰り出し、瓦礫を除去し、除染をテキパキとこなしていく。
「おおおおお!!!!!!」「いいぞっ!!いいぞっ!!!!!!」「こりゃらくだっ!!」
「自衛隊さん!東京消防庁さん!警察さん!役所さん!!マジ感謝!!!!」「これでまた人が住めるってもんよっ!!!!!」
テンション高いな。いや、バカにされて石投げられるだけよりはスッゴクうれしいが。
無人重機群もバリバリ頑張っている。ところどころで人型ロボットが作業しているのは人間サイズでしか侵入できず、人間が侵入するには被害が大きすぎるところである。
原発安全神話の所為で殆どのレスキューロボットを廃棄していた問題。
国産ロボットがあまり実用的ではない問題。これらを考慮に政府は年間5億の予算を突っ込み、
ついでに多額の復興支援募金と復興支援予算をこっそり豆腐ことTHBFに突っ込んだ所為で日本のロボット技術は飛躍的に増大した。
さっきのおっさん達の何人かもロボットスーツを着用していたし。
(本当は防護服を着て作業するためのものなんだがなぁ)
大手ゼネコン操る無人重機群、そして俺のヤマタノオロチシステム。
そしておっちゃんたち。
「どうよ?!まだまだロボット程度に負けねぇぜ?!」おっちゃんたちは胸を張る。
豪胆な親父どもだ。俺はこういう人が大好きだ。でも防護服着ろ。
「よーし!豆腐!まだまだ行くぞっ!!!今日中にこの辺、人が住める更地にしちまうからなっ!!」
「はいっ!先輩っ!!!!!」
作中に多少の現実との変更点がありますが、
震災の教訓から組まれたレスキュー用ロボット予算毎年5億はガチです。
(次回予告)
避難区域に住まう老婆との出会い。
手を合わせ。日々の糧となった命に感謝する。
次回。すぱ☆ろぼ!!
始動編。巨大ロボの背中に投石を。手のひらに命を。
「メシ食おうぜ。」
ご期待ください。




