見えない怪物。
本来は事故に関係する話題を書くつもりでしたが、
「小説の範疇を超える」と判断し、
主人公には予備知識わずかで行ってもらうことになりました。
興味のある方はウィキペティアなどを閲覧ください。
「……」
「……大丈夫かい?」
防護服を纏った青年が車を操りつつ質問するが、俺は答えることができない。
あれから4年。福島第一原発周辺は復興から取り残されている。
瓦礫除去作業を行うのはヤクザがらみにとどまる。それも規模が小さすぎる。
あえて立ち入り禁止区域にとどまるのは行き場のない人。
そして。盗賊。警察もまず立ち寄ることが出来ず、自警団のようなものがあるらしい。
実際、帰宅できない家に侵入している事例は後を絶たないらしい。「いや、なんとかなるさ」
乗り物に乗れない問題はだいぶ解決したが、流石に自分で車のハンドルは握れなかった。
酷い吐き気がするのだ。おかげで彼につき合わせてしまった。
「すまん。福田」「何故君が謝るのかわからないよ」
御厨たちに替わって俺を連れてきたのはこの青年。好青年だ。
「それより、ホントに君一人で大丈夫?」「指示書や無線で何とかする」
重機群の扱いも習得した。
「……一ヶ月でアレに乗れるようになったことより、
ヤマタノオロチシステムと重機群の扱いを覚えたことのほうが凄いと思うんだけど」
「ははは……俺、現場監督になれるかい?」「ヤマタノオロチシステムの値段を聞いたら驚くよ?」
本来はロボット化された兵器を同時に動かすための技術だったらしい。
「まぁ僕がプログラムしたんだ。見届けないとね」「……陸自は天才だらけかよ」
「いや、海自さんと空自さんに手伝ってもらったよ。主に対ジャミング関連でね。
あと、僕は本来自衛隊員じゃない」「はい?」「東京消防庁からの出向さ」
「……お世話になりました」「……うん」言葉もない。
手元の資料には福島第一原発の建設の経緯から実際の事故状況までがツラツラと並べられている。
御厨の手になるものらしく、あちこちひらがなでルビが振ってある。
「あいつは俺を馬鹿にしているのか」「彼女からみたら?ですか」福田が苦笑い。
政府が用意した資料も見たいですか?と聞いてくるので俺は首を振った。
俺の指導を実際に担当した御厨が俺でも理解できるように書いた苦心の跡が見える。
「なんと言うかアレは」「いやぁ。僕は最初なれませんでしたよ」
「タンクトップとか?」「ぶはっ!!!!!!!!」お前も悩殺されたのか。ご愁傷様。
「とにかくあの格好で男の反応を見て楽しんでいますからねぇ」「ドSだな」「ええ……」
「まずは適応訓練を兼ね、30キロ内の瓦礫の除去作業および除染。馴れたらすぐ『アレ』の封印作業だよ」
多大な犠牲を払って建設された福一の石棺群だが、更なる封印が必要だった。
「ヤマタノオロチが間に合ったらよかったのに」福田はニコニコ顔だが、実は地顔なのかもしれない。
そういえば笑顔以外この青年の表情を見たことがない。
「怖い?」「いんや。一度は死んだ命だ」
自分が殺した少女と同時に、昔の俺は死んだ。そう思うことにしたのだ。
「なんだってやってやら」
本来の使用目的に移っていきます。
(次回予告)
福島第一原発警戒区域内に入ったTHBF。
気の良い人々、無人重機との交流。一時の安らぎはかりそめか。
次回。すぱ☆ろぼ!!
始動編。巨大ロボの背中に投石を。手のひらに命を。
「宜しく先輩!」
ご期待ください。




