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すぱ☆ろぼ!!  作者: 鴉野 兄貴
始動編。巨大ロボの背中に投石を。手のひらに命を。

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13/54

不愉快である。

あれから3年たった。

しかし、悲しみは癒えない。

 「被災者であることを抜きにしても不愉快だ。純粋につまらねぇ」

「あれは許せんな」「死ね農田」「話にならねぇ。ゴミクズだ。こんな塵を仕分けしないといけないのか」

「内容がない。何をしたいんだ」「テンションだけで話決めたな」「税金もらってコメディとは。流石国会」


「……ですよねぇ~」俺はそういってPCの電源を落とした。

「豆腐野郎の搭乗者に選ばれたんだがなんか質問ある?」という某掲示板のスレは批判の渦だ。

 いちおう言っておくが俺ではない。どっかの阿呆が立てたんだろう。

 案の定。あっさり矛盾を指摘されてスレ主は逃亡している。


 久しぶりに触ったインターネットは当然ながら俺達に対する批判の渦だった。


「まぁ当然の反応だな」御厨がため息をつく。

「私だってこんなもん作るとは大学卒業の時点では予想していない」


 烏丸カラスマも同意する。

「私はゴキブリを操って偵察するとか、そっちのほうが実用的で安価だと提案したのだが。

 ちなみに、こちらの技術は既に実用化されている。米軍恐るべし。


「それって。発想的には第二次世界大戦の蝙蝠爆弾だろ」「詳しいな」烏丸は苦笑いする。

 蝙蝠爆弾というのは第二次世界大戦末期、木造日本家屋にもぐりこむ訓練を受けた蝙蝠による攻撃計画であるが、

 しょうもない被害を米軍にもたらし、なおかつ原子爆弾が完成したためなかったことにされた技術である。


「所詮、生物は電気信号で動いているからな」ゴキブリをロボット化するのは難しくはないとの事。

 ゴキブリの強靭さを熱く語る烏丸の隣で御厨は嫌悪の表情を浮かべている。

「烏丸よぉ。お前がプロポーズ断られ続ける理由がわかったんだが」「?」

「……ゴキブリの話を御厨の前でするな」「何故だ?!あんなに可愛いのに?」ダメだコイツ。


「なあ。でも烏丸はコイツに乗ってみたいって思ってたんだろ?」

 俺達三人の前にはTHBF(特殊放射能防御服)の現物がある。

 たった5mの小さなロボットだが、足元に立つと相当な威圧感がある。


「当たり前だろう?」烏丸は苦笑いする。

「危険だから烏丸は乗るな」御厨は鋭く忠告。

 俺がため息つきたいわ。お前ら開発者だろ。


 説明する。このポンコツに乗ると毎秒17センチ幅で脳が揺らされる。

 普通の人間ならこの時点で脱落する。

 加えてジャンプ、スキップは極めて危険だ。脳震盪の危険がある。というのは建前だった。


「建前なのか?」「ああ。今から実証する」

 御厨は俺が見ていたノートPCを床にたたきつけた。


「壊れた」「当たり前だっ??!!」俺と烏丸はキレた。


「……どこの阿呆が毎秒17センチ振動しつつ、

 激しくジャンプするロボットに搭載するCPUを開発するのだ」御厨が膨れている。

 ようするに、俺より内部のコンピュータがぶっ壊れる。


 そんな御厨に烏丸は苦笑い。

「エルピーダがまだあればよかったのだがな」

 あの企業は第一理由に過剰品質。第二理由に安い製品を作る技術で韓国企業に負けてつぶれた。

 というか、技術をポンポン阿呆が横流ししていたらしい……。

 そんなわけだから、当然、基本の移動は専用車両を利用する。


 戦車の砲弾を受けてもコクピットは無事だが、中の人間は死にかねない。

 あらゆる放射能被害に対抗するために開発されたTHBFだが、

 コクピット内部は水と大差ない溶液が詰まっていて、内部の温度上昇次第でパイロットは茹蛸になる。夢も希望もかけらもない。これがTHBF。通称豆腐である。


「で。俺と」「事実上、貴様の専用機だな」御厨が呆れている。

「遺伝子的にも体力的にも普通の日本人男性なのだがな」烏丸も不思議そうにしている。


 とにかく、この1ヶ月の適応訓練だか操縦訓練だかわからん虐待の日々を思い出す。

 なんで死なないのか?俺ですら思うが本当に死なない件。


「全身の骨が砕けているのに一週間後には問題なくTHBFを操っている」

「全身大火傷だったはずなのに死なない。皮膚移植もせずに完治している」

「脳震盪どころか、ピンピンしている」「こっそり致死量の放射線当てても死んでいない」

 元々頑丈だったからな。ってちょっとまて。

「子作りできなくなったらどうするっ?!」「要らないと思うが?」御厨はすっとぼけた。

「……頼むから、定年まで働かせてくれ」不祥事どころではないしな。理解できるぞ。烏丸。


「とにもかくにも心身共に恐ろしくタフだ。くじけない」いや、何度もくじけるかと思った。


「ではがんばれ」二人は手をふって俺を送り出した。


 がん がん。

 小石が俺の乗る車に当たる。誰かが投石したんだろう。

 俺は現場に向かう。


「軍人が石を投げられるのは平和の証だ」

 最後に烏丸はそういって送り出してくれた。

 軍人ではないが、平和が続くためには、人が安心して暮らすためには、俺はあそこに向かわなければならない。

(次回予告)

 自らが殺した少女と共に、過去の自分は死んだ。

覚悟せよ。明日を護る為。

次回。すぱ☆ろぼ!!

始動編。巨大ロボの背中に投石を。手のひらに命を。

「見えない怪物」

ご期待ください。

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