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第八章 調査

「……なるほど」

和弘の話を聞き終え、田所は小さく呟いた。

「先生?」

夏野が顔を向ける。

田所は腕を組んだまま、しばらく黙っていた。

やがて口を開く。

「この件、調査した方がいい」

和弘が目を瞬かせた。

「どういうことです?」

夏野が問いかける。

「何か裏がある」

田所は短く言った。

「い、いや……いいですよ」

和弘は苦笑した。

「もう再婚すると決めましたし。調査なんて……」

田所は静かに言う。

「再婚を考え直すだけの何かが出てこなかったら、調査費用は結構です」

和弘が驚いた顔をする。

「え?」

「何か出てきた場合のみ、相応の調査費用をいただきます」

田所は淡々と続ける。

「これでどうですか?」

和弘は戸惑ったように笑った。

「どうしてそこまで……いや、遠慮しておきますよ」

その時だった。

「待ってください、奥田さん」

夏野が口を挟んだ。

「先生がここまで言うからには、何かあるんだと思います」

和弘は夏野を見る。

「何も無ければ調査費用はいただかないんです。調査……するだけしてみませんか?」

少しの沈黙。

和弘はゆっくり息を吐いた。

「……分かりました。夏野さんがそこまで言うなら」

田所は頷く。

「では一ヶ月ください。それと……」

田所は奥田を見た。

「再婚については、書面で正式に婚約してください」

「え?」

「何もなければ、そのまま結婚すればいい。もし何かあれば、慰謝料を請求できます」

和弘は少し考えたあと、頷いた。

「……分かりました」

「夏野君」

田所が言う。

「申込書と誓約書。それと、調査で問題が見つからなければ費用は請求しないという念書を作ってくれ」

「分かりました」

こうして、正式な依頼となった。

 その日の夕方。

事務所には三人の男が集まっていた。

臨時調査員だった。

平井。

各務。

棚田。

田所はソファに腰掛けたまま三人を見渡した。

「揃ったな」

そして言った。

「まず棚田。丸山由利奈の素行調査」

「平井、聞き込みで川辺美緒の行方を調べてくれ」

「各務は丸山由利奈の金の流れを調べろ」

三人は同時に頷いた。

 調査はすぐに始まった。

 数日後。

事務所の電話が鳴る。

 田所が受話器を取る。

「田所だ」

棚田だった。

『丸山由利奈には交際相手がいるようです』

田所の目がわずかに細くなる。

「名前は?」

『増本俊介』

「分かった」

田所は言う。

「情報を各務に回せ。素性を洗わせろ」

『了解』

 さらに数日後。

今度は平井から電話が入った。

『川辺美緒の行方が分かりました』

田所は椅子に深く座る。

「居場所は?」

『現在、都内に住んでいます』

「分かった」

「各務と連携してくれ。それと、増本俊介の周囲も当たれ」

『了解』

 その数日後。

各務から連絡が入る。

『増本俊介について分かりました』

田所は黙って聞く。

『八年前、依頼人が勤めていた会社にインターンとして入っています』

『依頼人とも面識があります』

田所の視線が鋭くなる。

『それから三年前、丸山由利奈の口座から川辺美緒の口座に五十万円の振り込みがあります』

田所は何も言わない。

『それともう一つ。丸山由利奈ですが、最近三百万円の借金があります』

「……分かった」

田所は言った。

「三人で連携しろ。丸山由利奈の不貞の証拠を掴んでくれ」

『了解』

 

 調査は続いた。

尾行。

張り込み。

聞き込み。

少しずつ証拠が積み上がっていく。

 そして――

調査開始から四週間後。

田所は事務所の机に並べられた報告書を見ていた。

写真。

銀行記録。

通話履歴。

すべての資料をゆっくりとめくる。

夏野が横から覗き込む。

「どうです?」

田所は小さく呟いた。

「面白い結果が出たな」

夏野は少し身震いする。

「やっぱり調査してよかったですね。このまま何も知らずに結婚してたら……奥田さん……」

田所は頷いた。

「ああ」

そして静かに言った。

「かなり不幸なことになっていたな」

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