ローレンス視点
俺はこの2日間、ずっと考えている。
どうしても、あの騎士が頭から離れないのだ。
勘違いかもしれない、と何度も自分に言い聞かすのだが、無駄だった。
想像すると、逆にドキドキしてしまう有様だ。
外を見ながら物憂げな、ため息が出てしまう。
その様子を、書類を片付けながら見ていたレノンが話しかけて来たのだ。
「ローレンス様。何か気になる事でもありましたか?」
「うん?
・・・ああ。
どうしても解決出来ない難問があってな」
俺はため息混じりに伝えたのだ。
「それは珍しいですね。
では、確認しに行きましょうか?」
レノンは仕事で不明な点があると思ったようだが、そうではない。
そうではないのだが・・・。
・・・確認か。
もう一度会えば、答えが出るのだろうか・・・。
俺は、この呪縛から解き放たれるかもしれないと思い、すぐに行動へと移したのだった。
執務室を出て速足で中庭へと向かう。
後ろからレノンが『ローレンス様!どちらへ行かれるのですかー?』と追って来るが、構っている場合ではない。
悩み過ぎて、頭がおかしくなりそうなのだ!
そうして、暫くすると訓練場へと着いた。
木の陰からそっと覗いてみるが、見当たらない。
・・・おかしい。
昨日よりも人数が少なく見える。
・・・休みなのか?
そう思った時、『いきなり、どうなさったのですか?』と息を切らせながら、追いかけて来たレノンが聞いてくる。
だが、俺の目は訓練場に釘付けだ。
何も話さない俺に、レノンは言葉を重ねて来たのだった。
「訓練場に何かあるのですか?」
「・・・なぁ。人数が少なくないか?」
すると、何を聞かれたのか、分からない様子だったので、『騎士の数だ』と付け足す。
そうしたらレノンは『今日から新人騎士は、持ち場を決める為の研修で各部に散らばっているのです』と言うではないか。
せっかく意気込んで来たのに、とんだ無駄足だったな。
そう思い、部屋へ帰ろうと振り向いた瞬間、赤い髪が視界に入った。
目を見開き彼をジッと見る。
彼のコバルトブルーの瞳も、俺を見ていた。
・・・どうしよう。
こんなに近くで会えるなんて、思ってもみなかった。鼓動が高鳴り、息の仕方さえ分からなくなる。
これは・・・重症だ。
やっぱり俺は、彼の事が好きなのだ。
そして、彼は何か言いたそうにしている。
もしかしたら、彼も俺と同じ気持ちなのではないか?
そんな期待が頭を過り、どうしようもなくドキドキしてしまう。
それに彼の声も聞いてみたい。
「あの、何か用でしょうか?」
なんて澄み切った声なんだろう。
聞き入っていたら、再度話しかけて来たのだ。
「離してもらえませんか?」
・・・うん?・・・はなす?
そう思い見てみると、俺の手は、彼の腕を掴んでいるではないか。
!!?
全くの無意識だった事に驚き、すぐに手を離した。
すると彼は、怪訝な顔をして、何も話さない俺に『用がないのなら、失礼します』と言い、去って行ったのだった。
そんな様子を見ていたレノンが『大丈夫ですか?もしや、あの者が何かしたのでしょうか』と訝し気な顔をして、頓珍漢な事を言っている。
呆然としていた俺は『違う』とだけ伝えて、歩き出したのだ。
きっと、彼に変な奴だと思われただろう。
彼に関わると、初めての事が多すぎて自分でも驚く。
そして、自分の手を見て『はぁ』とため息が出た。
・・・そう言えば、腕、細かったな。
身長も俺より小さかったし・・・。
女性と言われれば、そう見えなくもない。
確か、新人騎士は17歳だったか?
であれば、これからまだ大きくなるな。
俺は、大きく逞しくなった彼の姿を想像したくなくて、意識を逸らしたのであった。
そうして、部屋へ着きレノンに茶を用意してもらう。
一口飲み心を落ち着かせて、気持ちを整理する事にしたのだ。
まず、彼が女性だったらと考える時点で、俺は男が好きなのではない。
それと、男に欲情した事はないが、彼にだったら・・・いけるかもしれない。
と、考えて自分は変態なのでは?と頭を過ったが、それには蓋をした。
ファーストコンタクトは失敗したから、次は抜かりないようにしなくては。
まずは、彼を知る事が先決だろう。
そうだ!毎日、彼を観察しよう。
そうすれば、何か分かるかもしれない。
ローレンスは初めての恋に、浮かれに浮かれ、浮かれポンチになってしまった為に、正解が分からず、間違った方向へと暴走するのであった。
こうして、アレンのストーカーが爆誕したのである。




