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灰色王子のバラ色観察日記  作者: こさか りね


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5

眩しくて目を開けると、カーテンの隙間から光が()れていた。


あー、もう朝か。

なんだか懐かしい夢を見たな・・・。

師匠との出会いは、今思い出しても散々だったよね。


とその時『ぐー』とお腹が鳴った。


そう言えば、昨日は飲んでばっかりで、あんまり食べてなかったな。


・・・何か作りに行くか。


そう思い、ある程度の身なりを整えてから部屋を出た。


1階の共同スペースへ行くと、同期のアルトが本を読んでいたので声をかけたのだ。


「おはよう。他のみんなはいないの?」


アルトは本から顔を上げると『あれ?いつの間にかいなくなってる。みんな何処に行ったんだろ?』と不思議そうな顔をしていた。


アルトは、あまり人に興味がないのか、無関心だ。

詮索されたくない事情がある私には、一緒にいて楽な存在だったりする。


私は『そっか』と返事をし話題を変え、何を読んでいるのかを聞いてみた。


「これは人体構造の本だよ。なかなか面白いからアレンも読む?」


「あー、せっかくだけど遠慮しておくよ」


読んでも意味が分からないに違いないと思ったのだ。

アルトは話に興味をなくしたようで、本へと視線を戻した。


さぁ、何を作ろうかな。

氷室(ひむろ)へ行くのは面倒だし、ここにある物で作るか。


この寮は、食材を自由に使っていいのだ。

毎月、賃料と一緒にみんな定額で引かれている。


食材の補充、入れ替えは家主がしてくれるので、よっぽどの物でなければ、買い物に行かなくても大丈夫なのだ。


だから、使わないと勿体ないと分かってはいるのだが、自分で作らなくてはならないので、利用しない人の方が多かったりする。


まぁ、後片付けもしなきゃいけないし、面倒ではあるよね。

私だって、お金があれば外食したい。


さっそく、野菜(かご)を見てニンニクと鷹の爪を取った。

簡単で食欲をそそる、ペペロンチーノを作ろうと思う。


大きめの鍋でお湯を沸かしている間に、ニンニクをスライスしてフライパンで鷹の爪と一緒にオリーブオイルで炒めていく。


うん、ニンニクのいい香りがしてきたな。


そう思ったのは私だけじゃなかったみたいで、アルトが聞いて来たのだ。


「すごく美味しそうな匂いがする。

ボクも食べたいな」


「うん、いいけど。

じゃあアルトも手伝ってくれない?」


アルトは本に(しおり)を挟み『何する?』と近寄って来た。


アルトは男性にしては小柄で、私とあまり体格が変わらない。

だからちょっと安心する。


ビルもゲイルも私より頭一個分大きいので、一緒にいると小さいのが目立ち、バレるのでは?と()()()()するのだ。


そうして、私達はサラダを一品増やそうと決めた。

アルトには外の地下倉庫にある氷室(ひむろ)へと、材料を取りに行ってもらったのだ。


(しばら)くして戻って来たアルトの手には、レタス、トマト、キュウリ、そしてベーコンがあった。


「ねぇ、アレン。ベーコンもその中に入れようよ」

フライパンを指差している。


アルトにサラダを任せて、私はベーコンを切って温める程度に火を通す。

パスタをフライパンに投入して(から)めたら完成だ。


アルトを見るとキュウリを切っていた。


とても包丁(さば)きが上手なので、普段から料理をしているのだろう。

そうして出来上がった料理を、冷めないうちに二人で食べる。


アルトは黙々と食べているので、世間話を振ってみたのだ。


「明日から適正訓練が始まるけど、アルトは希望とかあるの?」


「ボクは騎馬隊がいいな。馬が好きだし」


騎士にも接近戦が得意な者、弓が得意な者など、個々の特性を最大限に引き出せる部へと配属されるのだ。


全部で3つの部を1週間ずつ研修をしてから、配属が決まる仕組みとなっている。


「アレンの希望は?」


「私は弓がいいかな。

重騎士だと体格が足りないからね」


「確かに。ボク達には(きび)しいかもね」


アルトはもう食べ終わったようで、食器を片付けている。


体格は変わらなくても、こういう所で男女の差が分かるのはマズイ。


もっと早く食べなくては。


私は()()()と言う事を捨てて、ひたすらに口へと運んだのだった。


それに、この1週間はバタバタしていて、外食ばかりだったから気が付かなかったけれど、自炊だと、これが当たり前になるんだよな。


男装する前は、髪を切ればなんとかなる!

なんて楽観的に考えていたけど、いざしてみると、気にしなきゃいけない事が増えて、気が休まらない。


でも、だからと言って、部屋に(こも)るのも悪目立ちして、(かえ)って良くないだろうし・・・。


やっぱり、男らしくなれるように、1つずつ頑張るしかないよね。


さぁ、まずは早食いだ!


最後の一口を掻き込んで、食器を洗いに行く。

アルトはソファへ戻り、本の続きを読むようだ。

私は片付けが終わり、街へと買い物へ行く事にしたのだった。


やっぱり、王都は私の町と違って、色々なお店が並んでいる。

お店も露店や屋台ではなく、しっかりとした店構えの建物ばかりだ。


色々と見ながら歩いていたら、目的の物を売っているお店を見つけたのである。


今日は家族と師匠に出す便箋(びんせん)を買いに来たのだ。

家族には女性らしい便箋でないとダメなので、花柄の物にする。

だが今の見た目だと、これだけ買うのも気が引けるので、シンプルな物も合わせて購入したのだった。



そうこうしている内に、帰る頃には、もう日が(かたむ)いていた。


起きたのが遅かったから仕方がないけど、1日(つぶ)しちゃったな。


そう思い夕飯の献立を考えながら、帰路に就いたのであった。


その後、共用スペースに行くと、ビルやゲイルもいて、みんなで料理を作る事にした。

ビルは家でもやっていたのか、すごく手際良く作っていくのに対して、ゲイルは全くの初心者だったのだ。


塩と砂糖を間違えるのだから、洒落(しゃれ)にならない。


ゲイルには野菜を(むし)らせておき、私とビルで作っていく。


夕飯はビルの自家製シチューとゲイルが(むし)ったサラダにカンパーニュだ。


鶏肉とトマトで煮込んだ物なのだが、肉が()()()()としていて、今まで食べてきた物よりもコクがあって美味しい。


作っている時に、ビルが葉っぱを千切って入れていたので、聞いてみると『これを入れると入れないとでは、コクが全く違うんだよ』と言っていたのだが、なるほど、と納得する一品だった。


その後、みんなで食べていると、アルトがやって来て『食べたい』と言うので、片付けを任せる事で手を打った。


そして、早食いを意識していたら、みんなは(すで)御代(おか)わりをしているではないか。

早食いに大食いも追加だな。

と心に留めた、夕食会となったのである。

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