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それからは、近くの川に男を放り込み、先程取った宿へと2人で戻って来た。
ヴィンセルに『話があるから、着替えたらオレの部屋へ来て』と言われ、自分の部屋へと入る。
姿見鏡の前でヴィンセルの隊服を脱ぐと、私の隊服は無惨にもスッパリ切れていて、もう着れそうもない。
そして、露わになったサラシにも切り込みが入っていた。
・・・サラシも新しくしなきゃな。
と現実逃避をするように、どうでも良い事を考えてしまう。
私は部屋着に着替え、ヴィンセルの部屋へと向かった。
さっきは誰にも言わないと了承してくれたが、あんな状況だったので、思わず頷いてくれたのだろう。
でも冷静になれば、女が騎士をしている事自体あり得ない事だ。
・・・きっと、報告される。
そして、部屋に着き、ノックをするとヴィンセルが出て来たので、部屋へと入った。
椅子に座るように言われて、腰掛けたのだ。
ヴィンセルは終始、居心地が悪そうな顔をしている。
やはり、女が騎士である事を許せないのだろう。
私は、断頭台に上がったような気持ちで、下を向きながらヴィンセルの言葉を待った。
そして暫くすると、静かに口を開いたのである。
「その、ごめん。君の身体を見てしまった」
そう言って、頭を下げてきた。
そんな事を言われるとは思っても見なかったので、驚いて顔を上げると、ヴィンセルの旋毛が目に入った。
それに、身体と言っても、谷間が少し見えただけである。
「いや、大丈夫だから、顔を上げてくれる?
それに私も、女という事を隠していた。
・・・申し訳ない。
騙すつもりはなかった、とは言えない。
だから、この事を言わないで欲しいと、さっきは言ったが、お願い出来る立場ではない事は、重々承知の上だ」
そう言う私をオレンジ色の瞳でジッと見ている。
ふっと師匠の顔が過った。
「オレ達はバディなんだ。
だから隠さず、全てを教えて欲しい」
その言葉に、私は事情を話す事にしたのだ。
けれど、師匠が私を女と知っている事は伏せる事にしたのである。
「・・・なるほどね。
それで、君は騎士を続けたいの?
続けるのなら、コレから先も今日みたいな危険な事があるかもしれないよ?」
「私は、許されるのであれば、続けたいと思っている。でもヴィンセルは、そんな私と一緒に仕事が出来るのか?」
「うーん。まぁ、君はそれなりに出来るし、バディとしては及第点かな。
だから、安心しなよ。
それとさ、さっき何があったか話してくれない?」
それから私は、ピアスが熱くなり、痛くて動けなかった事。
いきなり男の手が燃えて、すごい勢いで火だるまになった事を伝えた。
「なるほど、人体自然発火って事かな」
「え?何それ?」
「ああ、火気がない場所で、人が燃えてしまう現象のことさ。色々な仮説はあるんだが、未だに確かな事は分かってないんだ」
「そんな事があるんだ・・・」
けど、凄い勢いで燃え上がったのだ。
本当にそうなのだろうか・・・。
私が下を向き考え込んでいるとヴィンセルが気遣わしげに声を掛けてきたのである。
「気分は大丈夫?」
まさかヴィンセルから、そんなに優しい言葉が聞ける日が来るなんて思わなかったので、嬉しくなった。
これなら、自分の半身として思える。
私は、心配そうにするヴィンセルに『ありがとう』と微笑んだ。
すると、何故か顔を赤くしたヴィンセルが『か、勘違いしないでよ!オレはバディとして心配しているんだからね!』とムキになっているので、私は『もちろん、分かっているよ』と返したのである。
それからは解散して自室へと戻った。
そして、テーブルに置いてあるピアスの残骸を手に取ったのだ。
なんで、いきなり熱くなったんだろう・・・。
もちろんだが、今までこんな事はなかった。
それに、このピアスは、産みの親がくれた唯一の物だ。
砕け散ったからといって、早々に捨てられる物ではない。
私は、隊服のポケットに仕舞おうとした時に気付いたのだ。
あ!ヴィンセルに隊服を返しそびれた、と。
取り敢えず、精神的にも、肉体的にも限界に近い為、明日にしようと決め、そのまま横になったのであった。




