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今日は久々の休みだ。
と言っても、部屋はローレンス様の一室に住んでいるので、さっきも顔を合わせてきたのである。
そして先日、師匠と会った後に、妙な事を聞かれたのだ。
「ジェラルドをどう思っている?」
・・・どう、とは?
と思った私は『剣術を教えていただいた師と思っておりますが・・・』とそれ以外に思い浮かばず、分かりきっている事を伝えた。
すると『なんだ、そうか。気にし過ぎたみたいだ』と『ははっ』と笑ったのだ。
あの時のローレンス様は一体、何の確認をしたかったのだろうか・・・。
そして私は、外へ出ようと廊下を歩いていると、騎士達が何人か前から歩いて来た。
ガッチリとしたムキムキの体躯から、重騎士だろうと思い、道を譲ると『アレンじゃないか。久しぶりだね』と目の前に壁のようなムキムキな人が立っている。
え?
・・・誰だ?
見ると、茶色い髪と薄茶色の瞳に親近感が湧いた。
「・・・ゲイルか?」
すると、にっこりと笑い『アレンも元気そうで良かったよ。今日これから時間ある?』と聞かれたので、休みだと伝えると『仕事終わりにみんなで飲みに行くんだけど、行かない?』と誘われた。
みんなとは、5ヶ月ぶりになるのだろうか。
私は『もちろん、行くよ』と伝え、一先ず別れたのであった。
そして、昼はぶらぶらと街を巡り、夕方。
待ち合わせの店へと入り見回すと、ゲイルが手を上げて、こっちこっちと振っている。
早く終わったのだろう。
既に三人揃っていた。
「みんな久しぶりだね。元気そうで何よりだ」
するとビルが『アレンも変わらず元気そうだな!
にしても、この5ヶ月、何処にいたんだ?一回も会わないって、ちゃんと城の見回りをしてるのかよ?』と早速、話せない内容をつっこまれた。
「見回りだけじゃ無く、雑用もしているんだ。文官が出来ない力仕事とかもしているんだよ」
そう話すと、文官棟に行く事がない騎士だからだろう。すぐに信じてくれたのである。
「ねぇ、アレン立って?」
・・・うん?
いきなりアルトから言われて立つと、アルトも立ち上がり、私の隣に来た。
すると、ビックリ!
すごく大きくなっている。
ビルやゲイル程ではないが、私と比べると、歴然とした差を感じた。
え!?
まだ5ヶ月だよね?
男子って、こんな短期間で大きくなるのか?
唖然とアルトを見上げると『アレンは相変わらず可愛いね』と言い放ったのである。
!!!
「おい!アルト!!それは言っちゃダメだ。アレンだって、気にしているかもしれないだろ?」
とビルが気遣ってくれたのだが。
今言われるまで、全く気にしていなかった自分にも絶句した。
身近にいる人が、ヴィンセルしかいないからだろう。
そして実は言うと、ヴィンセルは学園を飛級したらしく、私より2歳も年下なのだ。
体格が私と変わらない事に安心感があったのだが、元々、比べる土俵が違ったのである。
それと同時に不安になった。
もしかして、ローレンス様は気付いているのか?
と。けど、すぐに違うと考えが行き着いた。
男の私が好きなローレンス様だ。
女と分かれば、態度が変わるはずである。
と思案していた私を見て、二人は、余程傷付いたと思ったのだろう。
すると、アルトがおずおずと口を開いたのだ。
「アレン?ごめんね。
そんなに傷付くとは思わなかったんだ」
とシュンとしている。
「・・・あ?
いや、ごめん。少し考え事をしていただけだ。
大丈夫だよ」
アルトに悪気が無いのは知っている。
そして、話は変わるが、気付いたのだ。
・・・今まで、一言も話さないゲイルに。
まさか?
・・・また?
と思い隣を見ると、酒は飲んでいないようで、モリモリとご飯を食べていた。
静かに素早い動きで、カトラリーが行ったり来たりを繰り返している。
音を立てずに食べる仕草に、やはり貴族だなと感心して見ていると『やっと落ち着いたよ』とゲイルから聞こえた。
皿に目を遣ると、すごい枚数が積み重なっている。
昔のゲイルでは考えられない程の量に、重騎士のパワーを感じた。
そしてビルもアルトもだが、たった5ヶ月で逞しくなっている。
ビル以外は、希望の部署に配属されていないのに、自分のやるべき事に向き合っているのだ。
・・・みんな、頑張っているんだな。
そう思っていると、ゲイルが手紙の束を渡して来た。
「いつか、会えるかなって思って持ち歩いていたんだ」
受け取った手紙を見ると、おっちゃんから二通、家からは、なんと四通も来ている。
・・・そうだった。
引っ越した事を伝えていなかったのだ。
けど、宛名はシルバリーのみで出してって手紙に書いておいて良かった。不幸中の幸いである。
そして、今後も王宮にいるとは言えない。
「あの、みんな?
手紙なんだけど、特殊部隊とは家族に言えないから、もし、また手紙が来たら渡してくれないかな?」
そう言う私に、三人が気まずそうな目を向けている。
そして沈黙の中、アルトが口火を切った。
「分かった。来たら渡すよ」
「うん、ありがとう」
そうして私は、久々にみんなと楽しく過ごしたのであった。
そして、体格の件は、もう考えたってどうしようもない。
ここが私の限界だろう。
これ以上、劇的に大きくなれるとは思えない。
でも、幸いな事に身近な人がヴィンセルだけなので、最低でも2年はいけそうだ。
予定である4年は難しそうなので、この2年の間にマイケルの学費を稼げるだけ稼ごうと思ったのであった。




