ローレンス視点
アレンに俺の気持ちを伝える事が出来た。
だが、困っている姿を見ると、心がザワつく。
きっと俺の気持ちは迷惑なんだろう。
だけど、彼に知っておいて欲しかったんだ。
そして、ここからが本当の始まりなのかもしれない。
俺と同じ気持ちではなくても、傍にいると言ってくれた。
それに、いつか、好きになってくれるかもしれない。
やめて欲しいと言われるまでは、頑張ろうと思ったのである。
それから俺は、アレンと王宮の自室へと戻り、おやすみの挨拶をして、一人で寝支度をする。
出る前に、レノンに湯浴みをしてもらっているが、汗をかいたし、サッパリしたいと思い、湯殿へと入ったのだが・・・。
勝手が分からない。
どうしたら、湯が出るんだ?
これは申し訳ないが、アレンに聞くしかないと思った俺は、バスローブを羽織ろうとしたのだが、何故か見当たらない。
それに今更、脱ぎ散らかした服を着るのも嫌だ。
なので、その辺にあったタオルを腰に巻き、アレンの部屋へと訪ねたのだ。
ノックをして出て来たアレンは、目が点になり、俺を見て『ななな、何事ですか!?』と焦りながらも、ジッと俺の身体を見ている。
そんなに見られると、騎士とは違い、貧弱な自分の身体に恥ずかしさを覚えてしまう。
それなりに、鍛えてはいるが、重騎士と比べると、話にもならないだろう。
そして恥ずかしさから、俯きながら話したのだ。
「湯が出ないんだ」
すると、アレンの視線が、俺の身体から顔へと移動し、何故か、バツが悪そうな顔をしている。
・・・また、何かをしてしまったのだろうか?
そう思っている俺に『失礼しました。では、一緒にバスルームへ行きましょうか』と言ってくれたのだ。
それから、色々と教えてくれて、やっと、湯を溜める事に成功したのである。
アレンは『では、失礼します』と湯殿から出て行ったので、早速、洗う事にした。
だが、なかなか思うようにいかない。
ガタガタとやっていると、外からアレンの声がした。
「ローレンス様、大丈夫ですか?」
俺は再度、タオルを腰に巻き、扉を開ける。
「ああ、大丈夫だ。だが、思うようにいかなくてな」
そう言う俺の後ろを見て絶句している。
「あの、お手伝いしましょうか?」
アレンが、俺の身体を洗ってくれるって事か!?
すごく恥ずかしいのに嬉しい。
俺は思わず『いいのか?』と聞いてしまった。
身の回りの世話は、騎士の仕事ではないからだ。
すると『はい。大丈夫ですよ』と言ってくれたのだった。
俺は早速、腰に巻いているタオルを取ろうとしたら『タオルは取らないでください!』とすごい勢いで言ってくるではないか。
だが、好意で手伝ってくれているのだ。
アレンの言う事を聞かなくてはいけない。
俺はタオルから手を離し、椅子へと座る。
アレンは、背中を優しく洗ってくれた。
前は自分で洗えと言うので、初めて洗ってみたのだ。
そして、湯に浸かり、髪を洗ってくれる。
「アレン、ありがとう。とても助かった」
「お役に立てて良かったです。洗い足りないところはありませんか?」
「ああ。大丈夫だ。
それと、今日伝えた俺の気持ちは、アレンを困らせてしまったのだろうか?」
すると、アレンの手が一瞬止まった。
そして、暫しの沈黙のあと、答えてくれたのだ。
「少し驚いたのは事実ですが、迷惑だとは思っておりません。
ただ、私はローレンス様の気持ちに応える資格がないのです」
「それは、話せない事なのか?」
「・・・はい。
申し訳ありません」
そう謝る彼の手を俺は握った。
「いや、いいんだ。
俺の気持ちが、アレンを困らせていなければ、それでいい」
そう伝えると、彼は息をつき『ありがとうございます』とホッとした顔を見せてくれたのであった。
俺はその様子に、初めて、彼の心に触れられたように感じたのだ。
それから、着替えは自分でしろと言われたのだが、髪を乾かすところまで、やってくれた。
「ローレンス様の髪は、真っ直ぐで、とても綺麗ですね」
俺には、彼のフワフワな髪の方が綺麗に見える。
だから、そのままを伝えたのだ。
すると、一瞬、息を呑む音が聞こえて『はい。出来ました。大丈夫そうですか?』と話題を変えられてしまったのであった。
そして、アレンは『私も湯浴みをして参りますので、失礼します』と、そそくさと下がろうとしている。
俺はアレンの手を掴み『もう夜も遅い。俺の後で申し訳ないが、嫌で無ければ、ここの湯殿を使ってくれ』そう伝えると、眉間に皺を寄せて考えている。
・・・また、余計な事をしてしまったのか?
と、そう思っていたら『お言葉に甘えて、使わせて頂きます』と言うではないか。
ただの湯殿如きだが、少しは受け入れてくれているのだろうと思ってしまった。
・・・今は、それでいい。
少しずつ、彼の心に近付けるのであれば、俺は・・・。
「ああ。ゆっくりと入って来ると良い」
そう言って、アレンを湯殿へと送り出したのであった。




