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灰色王子のバラ色観察日記  作者: こさか りね


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15

ローレンス様の専属になって1カ月


最初は気が休まらず、緊張していたのだが、ローレンス様の人柄なのか、私の事をよく気にかけてくれるのだ。

だから今は、わりと普通に生活が出来ている。


強いて言えば、部屋に鍵を付けてもらいたいのだが、何かあった時の対応が遅れる為、それは出来ないとレノンさんに言われてしまったのであった。


今のところ、鍵が無くてもローレンス様が勝手に入って来る事はないので、事なきを得ている。


そしてこの1ヶ月で、他愛ない話をする時間が出来た。


雲の上の存在だと思っていた方と、普通に話せる日が来るとは思いもしなかった。


ただ、話している時に『それの何が悲しいのだろうか』と人が感じる気持ちを聞かれる事が、しばしばある。


不思議に思い、首を(かし)げる私を見たローレンス様は『感情の機微に疎い為、色々と教えて欲しい』と言って来たのだ。


それからは、心情を丁寧に分かりやすく話す事にした。


年下の私の話しにも、否定せずに耳を(かたむ)け、理解しようとしてくれるところに、とても好感を持てた。


ローレンス様は、とても素直で優しい人なのだろう。


自分が仕える(あるじ)が良い人で良かったと、心から思ったのであった。


そして話は変わるが、今日は初めての潜入調査になる。

情報収集とは違い、人の屋敷に入らなくてはならないのだ。


いつもとは違い、自衛の武器を忍ばせなくてはならない。

もちろん、私は師匠から(もら)った短剣なのだが、出来れば、お目見えしない事を願っている。


そして今回、潜入して探す物は、魔石の密造、密売に関する資料だ。


最近、(まが)い物の魔石が出回っており富裕層の間で問題となっているのである。


魔石は貴重で高価な物だ。

おいそれと買える代物(しろもの)ではない。


用途によって、大小様々な魔石があるのだが、小さいの一つで、大体、騎士の給料1年分はくだらないだろう。


そこで、紛い物の魔石が問題となっているのだ。


見た目や使用感は本物と然程(さほど)変わらない。だが、使用期限が圧倒的に違うのだ。


本物は10年くらいもつのだが、紛い物は半年ともたないらしい。


見た目で紛い物と見分ける事が出来ない為、被害者が後を()たないと言う。


その為、特殊部隊に依頼が来たのだと副団長に言われた。

この事が続くと、国の信用問題にも関わるので、早期に解決しなくてはならない。


そうして時間は夜も()け、皆が寝静まった頃に開始する。


私は、ローレンス様を起こさないように、そっと部屋から出て、ヴィンセルと待ち合わせているビンゼフ子爵家の別邸へと早足で向かう。


この事件。

調べていくうちに、明らかになった事があるのだ。


最近、ビンゼフ子爵の羽振が良くなった事を耳にした第一王子が、徹底的に調べるようにとのお達しがあったのである。


確かに、領地経営だけで、何か事業をしている訳でもないのに、何処から金が入って来るのか。


そして先日、ダントン伯爵との繋がりを得てから、羽振りが良くなったのだと先輩が情報を持ち帰って来た。


第一王子が、ダントン伯爵に目を付けていた事もあり、今回の潜入調査に至ったのである。


初めてという事もあり、私達は別邸、先輩達は本邸の調査を割り振られた。


別邸前の茂みにヴィンセルを見つけたので、静かに声を掛けたのだ。


「ごめん、遅くなった」


すると、不機嫌そうに振り向いたかと思うと、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているではないか。


・・・なんだ?

と、首を(かし)げていたら、恐る恐る小声で話し掛けて来たのだ。


「ねぇ、アンタ。正気?

なんで第二王子連れて来てんだよ」


・・・は?


私は驚き振り向くと、本当にローレンス様が居たのだ。


え?何故に?


頭の中は疑問符でいっぱいだったが、頭を振り、ローレンス様に向き直ったのだ。


「何故こちらにいらっしゃるのですか?」


「アレンが出て行くのが見えたから、付いて来たんだ」


なんでもない事のように言っているが、これはマズイ。


王族を危険に(さら)したとあれば、本物の首が飛ぶ。


「ローレンス様?これは、特殊部隊としての任務です。

ですので、今から一緒に帰りましょう」


一人で帰す事も、此処で待たせる事も出来ないので、一度帰るという選択肢しかなかったのである。


横を見ると、ヴィンセルが苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


決行する時間が後ろ倒しになるのだから、気持ちは分かる。

すると、ローレンス様が口を開いたのだ。


「いいや、帰らない。

君達と一緒に行く。

それに、私は強いからな。

アレン、私が付いて来ている事が分からなかったろう?」


確かに、何の気配も無かった。

私は『そうですね』としか答えられなかったのだ。

すると・・・


「気配を消すのも上手いんだ」


と、言って微笑んでいるのだが、私とヴィンセルは、どうして良いのか分からずに、唖然とするのであった。



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