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灰色王子のバラ色観察日記  作者: こさか りね


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14

1週間が過ぎ、今日から王子の部屋にある一室で暮らす事になる私は、朝から挨拶をしに来た。


実は、荷物の搬入をレノンさんが手配してくれたおかげで、1日で終わったのである。


そして、この1週間は特殊部隊の仕事があり、王子と会うのは先日の挨拶以来だ。


やはり、王族と会うのは緊張する。

それに、今日から四六時中、一緒にいる事になるのだ。


部屋は別だとしても、同じ空間にいる事になるのだから、気が休まらないだろう。


私は深呼吸をして扉をノックした。


すると、レノンさんが扉を開けて、中へと招いてくれたのだ。


そのまま、王子の部屋へと案内されると、椅子に座り、コチラを見ている王子が居た。


「朝早くから失礼致します。

本日から、どうぞ宜しくお願い致します」


そう話してから頭を下げている私に、王子が口を開いたのである。


「こちらこそ宜しく頼む。顔を上げてくれ」


その言葉に顔を上げると、真っ赤な瞳と目が合った。

そして、王子は微笑み『私をローレンスと呼べ』と言った、その時。


ガチャ、バシャン!


と何かが落ちる音がして振り返ると、レノンさんの足元にはティーカップが転がっており、床にシミが出来ていた。


「し、失礼しました。すぐに片付けます」


と、そう言って素早く片付け、雑巾を取りに外へと行ってしまったのだった。


部屋には、私と王子の2人きり。


どうしていいのか分からず、立ったままで居ると、王子が『ここに座ると良い』と言い、目の前の椅子を勧めてくる。


だが、私は護衛も兼ねているのだ。

座ったら、いざ何かあった時に対処が出来ない。


「王子殿下、私は護衛も兼ねております。

ですので、座る事は許されておりません」


「ローレンスだ。

それに、私が許すのだから誰も文句は言うまい」


そう言って、再度勧めてくる。

だから私は、おずおずと腰掛けたのだった。


すると、王子は嬉しそうに笑い『君の事を知りたいのだ』と言ったのである。


その言葉に、私の心臓は跳ねた。

もしや、女だとバレているのではないか?


もしバレていたら、どうなるのだろうか・・・。


良くて辞職。

悪いと・・・・・・処刑?


そう思ったら、冷や汗が止まらない。

ドキドキして言葉に詰まっていると、王子が再び話し始めた。


「アレンにも、私の事を知って欲しいのだ。

だから毎日、こうやって会話の時間を設けよう」


そう言って両手を組み、こちらをジッと見つめている。


・・・これは、私のは早とちりだったのか?


唾をゴクリ飲み込み『あの、私で本当に良いのでしょうか?』と問い掛けてみたのだ。


すると、王子は一度目を閉じてから話し始めたのである。


「アレンだけが、美しく見えるんだ」


・・・ん?

どう言う意味だ?


「あの、美しいとは?」


「ああ、そうか。

話していなかったな。

私は、全てのものが灰色に見えるんだ。

だが、アレン。

君だけが、私の中で色付いて見えるんだよ」


そう言って微笑み『君だけが、特別なんだ』と言う。


どう返していいのか分からず『そうなんですね。答えて頂き、ありがとうございます』としか言えなかった。


そうして、今日の勤務時間が終わり、隣の部屋へと帰る。


まだ荷解きをしていない為、ダンボールが乱雑に置かれていた。

私は早速風呂へ行こうと思い準備をする事にしたのだ。


箱の中をガサゴソと探していたら、師匠へと書いた手紙が手に触れた。


・・・師匠の事が気になる。


そして、騎士になる前、最後に会った日を思い出した。


「アレンシア、お前はもう大丈夫だ。

だから自信を持て!何たって、俺が教えたんだからな!」


私の髪を切りながら自信満々に言う師匠に『師匠のお陰です。本当にありがとうございました』と心から伝えたのだ。


「今日は随分と素直だな。

まぁ、これが別れじゃない。

また、いずれ会えるからな。

だから、そう、泣く事はない」


そう言って、私のサッパリとした頭をグリグリと撫でたのである。


涙が私の膝上にポタポタとシミを作っていた。


そんな風に泣く私に『ほら!さっさと立て!片付けられないだろ?それと、髪の毛で付け毛を作るんだぞ。でないと、実家に帰れないからな』とそう言って、髪の毛を押し付けてきたのだ。


・・・なんだろう。

泣いている自分が、馬鹿みたいではないか。


私は、涙を(ぬぐ)ってから髪の毛を受け取り、袋へと仕舞う。


すると師匠は手紙を一通渡して来たのだ。


「これは、試験官に渡せ。

中は見るんじゃないぞ!分かったな?」


受け取った手紙を懐へとしまい『分かりました』と頷いたのだ。


そして、立ち上がり、笑顔で伝えた。


「では、行ってきます」と。





師匠は引っ越すとは言ってなかったし、また会えるとも言っていたのだ。


それに、師匠は出来ない約束をする人ではない。

それは、私が一番よく知っている。


やっぱり何かあったのかもしれない。


でも、今の状況だと、当分は実家へと帰れそうもない。


そうだ!屋台のおっちゃんに聞いてみるか。


そう思いついた私は、まだ返信がない、おっちゃんへと追加で手紙を書く事を決めたのだった。


そして、風呂の準備が整い部屋を出ると、王子から声を掛けられたのである。


「アレン」


「!?

どうなさいました?」


「湯殿に行くのなら、ここのを使えばいい。

別棟は距離があるからな」


と、何でもない事のように言う。


いやいや、王族と同じ風呂を使う事など考えられない。


「あの、王子殿ーー「ローレンスだ」」


・・・・・・。


「ローレンス様?ご提案頂き、大変有難いのですが、流石にそれは難しい事かと。

なので、遠くても別棟へと行って参ります」


そう言い切り『御前、失礼致します』と部屋を出たのであった。



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