ローレンス視点
今日から彼がやってくる。
どんだけ待ち侘びた事か。
会ったら何を話そうかと、楽しい妄想に明け暮れていると、レノンが『ローレンス様、あの木に可愛らしい小鳥がいますよ?』と話しかけて来たのだ。
・・・またか。
だから、鳥が何だと言うのだ。
この前も、机の上に兄上から貰った図鑑がででんと置いてあった時には、レノンが何をしたいのかが、まるで分からなかった。
それからは、毎日。
鳥鳥鳥鳥と煩く囁いてくる。
そんなに鳥が好きなのであれば、1人で見ていれば良い。
俺を巻き込まないでもらいたい。
それに『鳥はもういい』と伝えても『隠さなくても大丈夫です。私は全てを知っておりますので』と意味不明な返答が返ってくるのだ。
なので、レノンが鳥の話しをする時は、聞き流す事にしたのである。
それにしても、彼がなかなかやって来ない。
道に迷ったのだろうか・・・。
そう思った俺は、迎えに行く事にしたのだった。
レノンに『少し外す』と言い残し、扉を開けると目の前に彼が現れた。
予想外の展開に頭が働かない。
そして、彼の瞳から目が離せなかったのだ。
やはり、いつ見ても美しいと思う。
こんなに、何かに魅入られるなんて、考えられなかった。
そんな事を思っていると、彼が美しい声で挨拶をしてくれたのだ。
アレン・シルバリー。なんて素敵な名前なんだ。
そう思っていたら、頭の中で一つ、引っかかる事があった。
シルバリー家は確か、養女と嫡男が居たはずだ。
そして、嫡男は年端もいかない子供だったはず。
であれば、彼は一体、誰なんだ?
考えられるのは、養女の方だ。
まさか、女、なのか?
そう期待をして、彼の言葉に答える事もせず、穴が開くほどに見てしまった。
・・・・・・。
だが、そんな訳ない。
騎士になるには、それなりの厳しい審査を通過しなくてはならないのだ。
だから、貴族名鑑が間違っていたのだろう。
そう考えが行き着いた時に、レノンがいつまでも出て行かない俺に、話しかけて来た。
それから俺は、彼の部屋へと案内を頼み、自室にて待つ事したのだが、ソワソワしてどうにも落ち着かない。
・・・うん?あれ?そう言えば・・・。
まだ、彼と一言も会話をしていない事に気付いた。
これはいけない!
ファーストコンタクトがボツったのに、セカンドコンタクトも駄目だなんて、目も当てられない。
そうして俺は、早速、彼の部屋へと行く事にしたのだ。
部屋への戸を開けて話しかけると、彼は何かを決心したかのような表情で口を開いた。
俺はそんな彼の姿に(影として使い潰されるのでは?)と言う、不安を感じたのであった。
だから、影としては使わない事を伝えたのだ。
すると、彼は息を吐き、笑顔を俺に向けてくれたのである。
・・・何という破壊力。
ずっと、焦がれていた姿が、そこにはあったのだ。
俺は息も出来ずに、彼の笑顔、仕草、声に魅了された。
心臓がドキドキと高鳴り、頷く事しかできなかったのである。
そして戸を開け、自室へと戻り、椅子へ腰掛けた。
やはり、恋とは凄いものだった。
彼が隣の部屋に居ると思うだけで、心臓が昂る。
落ち着かせようと思っても、どうにもならないのだ。
これまで、自分の思い通りに行かない事なんてなかった。
だが、今はどうだ?
彼に関しては、何一つ、自分の思い通りになっていない。
・・・すごいな。
コレが皆が言う、叶える為の努力、精進、研鑽。
それを、俺がする日が来るとは・・・。
ははっ。
とても考え深い。
彼に出会えて、俺の人生は変わった。
生きるとは、とても素晴らしく、尊いものなのかもしれない。
そう思えた事こそ、俺の転機なのだろう。
それからのローレンスは、生きる事に楽しみを感じるようになるのだが、その原動力はアレンシアの為、彼女も巻き込まれてしまうのは、言うまでもないのであった。




