12
一言で言うと、ヴィンセルとの研修は大変だった。
一応は話しをしてくれるようにはなったのだが、言葉に棘があるのは相変わらずだったのだ。
いつになったら、普通に話せる日が来るのだろうかと考えているのだが、ずっとこのままな気がしてならない。
だからヴィンセルは、そう言う性格だと思う事にしたのだ。
そして、研修も無事に終わり、今日は専属となる為に第二王子の執務室の前へと来ている。
恐怖で戸を叩く手が震えてしまって、なかなか中に入れない。
既に、5分は経っているだろう。
執務室の前で二の足を踏んでいると、ガチャリと扉が開いたのだ。
すると、執務室から第二王子が現れた。
え?
第二王子がコチラを見ている。
私も目を離せない。
赤い瞳に吸い込まれそうだ。
そう思う程にジッと見つめてくる。
・・・き、気まずい。
取り敢えず、挨拶だ。
「本日から配属しました。
アレン・シルバリーです。よろしくお願い致します」
だが、何の返答もない。
目を逸らさずにずっと見てくる。
これは、どうすればいいのか・・・。
続く沈黙を破ったのは、第二王子の侍従だった。
「ローレンス様?何かあったのですか?」
すると、第二王子が『・・・いや。彼が来たんだ。部屋へ案内してくれ』と言うと、また部屋の中へと戻って行ったのだった。
用があって、外出するのでは?
と思った私は、そのまま侍従に案内された。
侍従ことレノンさんは、私の部屋?へ案内してくれたのだが、そこで、驚くべき事を言われたのだった。
なんと、専属だと、この部屋に住まないといけないらしい。
『レノンさんもここに住んでいるんですか?』と聞くと、王子の部屋では無く、別棟にある従者用の部屋にいると言う。
え?なんで、私だけ?
そう思ったのが伝わったようで、レノンさんが説明してくれた。
特殊部隊の専属は王子の影として動く事が主な仕事であり、護衛も兼ねているので、王子の部屋に一室賜る事が通常らしい。
それって、24時間、甚振られるって事!?
冗談じゃない!!
とても堪えられそうにないと思い、レノンさんに抗議しようとしたら、第二王子がやって来たのだ。
「部屋はどうだ?
足りない物はあったか?」
先程と違い、普通に話し掛けてくる王子に目が点になった。
だが、ここで負けたら、地獄の始まりだ。
私は勇気を振り絞り、口を開いたのだ。
「第二王子殿下、差し出がましい事は重々承知しております。ですが、質問をさせて頂きたいのです。
どうして私を専属にしたのでしょうか?
私は新人で、あまり使い道はないように思うのですが」
・・・聞いてしまった。
もう後戻りは出来ない。
すると、王子がジッと私を見つめながら話し始めたのであった。
「君と話してみたかったんだ。
だから、影として使うつもりはない。
私の話し相手になってくれ」
予想外の返答に、一瞬固まってしまった。
・・・うん?
という事は、私を甚振るつもりはないのだろうか・・・。
取り敢えずは、一安心だ。
『ふぅっ』と安堵のため息が漏れてしまう。
それから私は笑顔で『私で宜しければ、よろしくお願い致します』と答えたのだ。
すると、王子から息を呑む音が聞こえたのだが、特に何か言われる事もなく、王子は頷き、自分の部屋へと戻って行ったのであった。
そして、レノンさんに1週間のうちに引っ越してくるように言われたのである。
今の寮は、みんなも居るし、気に入っていたのだが、上からの指示には逆らえない。
だから、家賃がタダになってラッキーと前向きに思う事にしたのであった。




