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私は特殊部隊と言う、名前はカッコいいが、実際は王宮警備を主とする雑用係に配属されてしまった。
寮に帰ると『まぁ、なんだ。とにかく頑張れよ』とビルが慰めの言葉をくれたのだが、何の慰めにもならない。
特殊部隊って、他の騎士と同等のお給料が出るのか?
騎士の中で、使えない奴が行く部と聞いていただけに、ダメージがデカい。
そんな半人前に、一人前のお給料は出るのだろうか・・・。
私は名誉よりも、マイケルの学費のが大事なのだ。
それが稼げないようでは、騎士の意味がない。
今日はご飯を作る気にはなれず、ヨロヨロと自室に籠ったのだった。
【次の日】
どんよりとした気分で訓練場へ行くと、既に皆、配属先へ行っている為、私ともう一人の・・・。
名前、何だったかな?
・・・ヴィンス?ヴィルス?が居た。
昨日はショック過ぎて、同僚の名前さえ頭に入ってこなかったのだ。
そして彼も私と同様、小柄な体型で、とても騎士には見えない。
・・・ふぅ。
同じ半人前仲間として、仲良く出来たら良いなと思い、話しかけた。
「おはよう。私はアレン。
同じ特殊部隊だから、これからよろしく」
そう声を掛けると、彼はオレンジ色の瞳を動かし、ギロリとコチラに視線を寄越したのだった。
師匠と同じ色に、懐かしさと親しみを感じたのだが・・・。
「昨日も思ったけど、アンタ、特殊部隊やってけんの?」
雑な口調の上、白けた目で見てくるではないか。
てか、王宮警備がやれないって・・・。
半人前以下だと思われているのか?
ムッとして『それくらい出来る!』と答えた。
すると彼は『ふーん。まぁ、オレに迷惑かけなきゃ、それでいいよ』と言い、それからは目も合わなくなった。
なんか、凄く上から目線だな。
それに結局、名前、分からなかったじゃないか。
そうして、暫し待つ事5分。
特殊部隊の副団長がやって来た。
「私は、特殊部隊副団長のトーマスだ。
本当は団長が来るのだが、とても長いバカンスの為、私が代わりに来たのだ」
・・・え?バカンス取れるの?
しかも、バカンスって、ただでさえ長いのに、とても長いって・・・そんなに暇って事?
私の脳内がバカンス一色に染まっている間に、副団長は続ける。
「そして、特殊部隊の初日は王族、主に王子殿下達への挨拶へ行く事が決まりだ。
では、早速行くから付いて来い!」
そう言って、歩き出したのだ。
王宮に入るのは初めてなので、目線がキョロキョロしてしまう。
そんな私に、ヴィルス?が『余所見をするんじゃない』と叱責して来た。
首を動かした訳でもないのに、よく見ているな。
と、何故か感心してしまう。
そうして、王太子の執務室へと着き、中へ入る。
部屋の窓際に王子二人が並んで座り、私達はその前に立った。
初めて王族に会うのだ。
緊張しない筈がない。
私は直立不動で、この時間が過ぎるのを待った。
金髪の赤眼が王太子で、色々と副団長と話している。
・・・赤眼って、多いのかな?
この間、腕を掴まれた人も赤眼だったな・・・。
今まで見た事はなかったが、王都には多くいるのだろうか。
そして、視線をもう一人に移す。
ずっと下を向いたままの黒髪の男性は第二王子だろう。
心、ここに在らずな状態で、私と同じく、この時間を持て余しているようだ。
そして、ジッと見ているうちに気付いたのだ。
兄が赤眼なら弟も赤眼なのでは?と。
しかも黒髪だ。
これで赤眼だったら、腕を掴んだ人は、この王子の可能性がある。
その瞬間、私の背筋に冷たいものが走った。
そして、ジッと見すぎたのか、第二王子が顔を上げる。
黒い睫毛の隙間から赤眼が覗いのだ。
・・・やっぱり!!あの人だ!
私は目が合う前に下を向いた。
気付かれたら大変だ!
王子からしたら、サボっていた奴が、突然目の前に現れたのだ。
きっと怒り狂うだろう。
でもそれは、王子の勘違いで、私は無実なのだが、そんな事を王族に言っても首を刎ねられるのが落ちだ。
物理的にじゃないよ。社会的にね。
だから目を合わさず、貝の如く喋らずジッとしていれば、いずれ嵐は過ぎ去るだろうと希望を託し、直立不動を貫く。
・・・だが、おかしい。
第二王子が訳の分からない事を言っている。
指名された時は、思わず凝視してしまった。
そして目が合うと、やはりあの時の人だ。
と確信した。
でも、私を指名した意図が分からない。
と言うか、王宮警備に指名などあるのだろうか・・・?
直立不動のままに考える。
・・・・そして、一つの考えに行き着いたのだ。
もしかして、サボっていた事への罰を直々に下す為ではないか、と。
だって、それ以外に接点が無いのだ。
そう思うと、それしか考えられなくなっていた。
第二王子は弑虐的な趣味が、おありなのだろうか・・・。
私の心臓はキュッと締め付けられて、生きた心地がしない。
生殺与奪の権利を握られてしまったのだ。
そう思い、その後の話は続いているようだが、魂が抜け、屍と化した私の耳には、一切、何も入ってこなかったのである。




